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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第九章: どきどき帝国潜入!

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009_03_プロ村人と採集を

「お……研究所からの依頼だ。スターリングに行ったならついでに食料調達してこい、か……。これくらいならまだ時間もあるし、何とかなるかな」


 銀騎士団の拠点から出たところでカンがつぶやいた。


「食料調達? あ、もしかしてミライの?」


「そうそう。じゃあ、俺は食料調達してから帰るから、リンさんは――」


「一緒に行く」


 何かカンは一人で行く気満々だから、ちゃんと主張しておかなくちゃ。わたしだってミライが何を食べるのか興味あるし、彼女の役に立てるなら嬉しいし。


「え? あ、そう。分かった。じゃあ行こう。前に彼女に会った泉の周辺で採れると思うから」


 彼はちょっと戸惑ったようだったけれど、OKしてくれた。置いていこうとしないでほしいけど、連れてってくれるならいいか。


 けどあの泉の周りに食料なんてあったんだ。あ、食料があったからミライ達もあの辺にいたのか。そうかもしれない。


 よし、行ってみよう。



「ところで、今日は他の騎士団の事とかイベントの事とか、色々分かってよかったよ。

 銀騎士団のアマネさんとカレンさんはいい人そうな感じ。何か気高くって、ホントに騎士って感じするよね!」


 道中、会話がないのもな、と思って、凛としたアマネさんと、その隣で睨みを利かせるカレンさんを思い出しながらわたしはカンに話しかけた。


「ああ、そうだね」


「そういえば、カンってアマネさん――ていうか、ヴァルキリー様なのかな――のファンクラブ会員だったよね。その割には大人しかったじゃん。せっかく親衛隊に邪魔されずに話せるいいチャンスだったのに、何で? 逆に緊張しちゃった、とか?」


 そっけない返事だけを返す彼に、ふとソリドゥスでの一幕を思い出し、尋ねてみたのだけど、


「えっと……? ファンクラブ会員? 俺が? 何で?」


 彼はものすごく怪訝な顔で聞き返してきた。あれ? なんで?? その反応にわたしもすっかり混乱してしまった。


「そう言ってたじゃん。ほら、遺跡から帰ってきた後、セイが銀騎士団とちょっとトラブったとき」


 あの時の状況を伝えると、彼はしばらく顎に手を当て、眉根を寄せて考え込んでいたけれど、やがて思い出したらしくポン、と手を打った。


「……ああ、あれ。あれはほら、アマネさんと知り合いとか、騎士団メンバーってバレたりとかするとジョー達から色々聞かれそうで面倒だから、親衛隊の人に追い払ってもらおうとしただけ。

 まあ、アマネさんはいつもマドカさんしか見てないし、俺のことなんぞ覚えてなかったから、問題なかったのかもしれないが」


「何だ、違うんだ。またそうやって秘密にするための行動だったわけね」


 よくよく思い出してみると別にカンがファンクラブ会員だなんて一言も言ってなかった気がする。確かあの時は、ヴァルキリー様って呼んだ瞬間にカレンさんがすごい勢いで止めたんだった。結局、わたしとカレンさんの勘違いってことなのか。


「まあ、そうなるね。大体追いかけたところで、振り向いて貰えるはずもないんだから無駄だよ。

 あんな完璧美人だったら、同世代の普通の男なんてつまらないだけだろうね。その辺、マドカさんは完璧超人だからなあ……」


 わたしの軽い非難に動じるでもなく、彼はあっさり肯定した。振り向いて貰えないならムダ、って考え方は彼らしいかな、と思ってしまった。それに、彼の言うように、マドカさんはリーダーシップもあるし、強いし、アマネさんが好きになるのも納得だ。オネエだけど。


「確かに。けどさ、銀騎士団は仲良くできそうだけど、金騎士団てちょっと、ううん、かなりイヤな感じだったね。

 最強、って言われてるくらいだからあんな感じにもなるのかな。強いし、味方としては頼もしいかもしれないけど……。

 あ、でも金騎士団てリスクオンと仲いいのかと思ってたけど、やっぱりこういうことになったら運営の仕事優先で戦わなきゃなんだね」


 そういえば開拓村づくりの大規模イベントのときも強かったし、ヤな感じだったな、とか、その時のことを思い出していたら、


「リスクオンと仲が良かった?」


 どういうわけだか興味を持ったらしくて、カンが聞き返してきた。


「うん。開拓村の駆除の時、ジョーとよく話してたから。

 あ、でも、そういう仕事で、たまたま同じ区域の割り当てだったから一緒にいただけだったのかも」


 思い返してみると、単にそれだけの理由な気もするな、とわたしはブンブン手を振って答えた。うん、特別仲が良いとかいうわけじゃないのかも。


「そうか……」


 彼は、そう呟いたきりしばらく何か考えこんでいた。何か気になることあるなら、言ってくれたらいいのにな。


 でも、とりあえず気にしない! そろそろ着くし、採集頑張ろう!



「着いたけど、何を探せばいいの?」


「サイケデリックフルーツと、ウィッチマッシュルームと、ドリーミーグラスの三つ」


「え、それ食べ物……?」


 ヘンテコな名前の植物につい突っ込んでしまった。なんか絶対食べちゃいけない名前だけど。


「まあ、名前はあまり気にしない方がいいよ、適当につけられたものだから。【植物図鑑】は持ってる? ……持ってないならDL(ダウンロード)。生物図鑑と同じように、アプリを起動してカメラを向ければ名前が表示されるから、それで探して。

 じゃ、リンさんはそっちを探してくれる? 多分ウィッチマッシュルームがあると思う。木の根元辺りに生えてるから。後、他の二つも見つけたら採取しておいて」


「わかった」


 カンに指さされた方へ向かい、頼まれたものを探す。図鑑によるとウィッチマッシュルームは、白くて太い軸に茶色の傘の、どっしりした感じのキノコだ。


 うーん、これはちょっと細いし何か違うっぽいな。あ、これかな? 大きな木の根元に、それっぽいキノコを見つけた。図鑑を向けてみるけど、中々認識されない。いろいろな方向からカメラを向けていたら、ようやく認識された。


 お、これで合ってるみたい。うわあ、傘の裏側、グロいなあ。普通のキノコみたいなひだじゃなくって、スポンジみたいな感じ。しかも結構不気味な緑がかった色だ。


 食べられるのかなあ? 毒キノコじゃないよね? 図鑑がこれだって言ってるから、これを集めるしかないけどさ。まあ言っても仕方ない、もうちょっと探そう。


「ああ、結構取れたみたいだね。そのくらいで十分だ」


 他の木の根元とかを夢中になって探し回っていたら、後から急に声を掛けられたので驚いた。振り返ると、いっぱいに膨らんだ袋を持ったカンがたたずんでいた。そんなに集めるなんてすごいな。そういえばカンは採集メインだって言ってたっけ。プロ村人とは年季が違ったみたい。


「あ、うん。他の二つはたくさん取れたみたいだね。じゃあ、もう帰る?」


「ああ、戻ろう」


 わたし達はクレーディトを目指し、森を後にした。


---


「くたばれっ!!」


 前はツバサの飛竜に乗って、カン達のドローンを追いかけてたから一瞬で通り過ぎちゃったけど、歩いてみるとまた違った景色だなあ。なんて感慨に浸っていたら、気合いの入った声が聞こえてきた。


 声のする方を見ると、ドラゴンに向かって大きくジャンプし、斧を振り上げる探検家の姿があった。落ちる勢いを使ってドラゴンの首に斧を叩き込むと、真っ赤な血が吹き上げた。恐ろしい叫び声とともに、ドラゴンが倒れた。砂ぼこりが巻き上がる。


「よっしゃあ!! やっと倒せたな!」


「これでノルマ達成だ!」


 探検家達が嬉しそうに叫ぶ声が耳に入ってきた。みんな同じ服だし、ノルマとか言ってるからどこかのギルドかな。わたしもあんな感じで、みんなの役に立ちたくて頑張って魔物、ガンガン倒してたな。


 でも、ヴァーチャルの魔物なんかじゃなくって、本当の生き物で……。


「リンさん!?」


 カンが慌てた顔でこちらを見た。考えてたら何だか気分が悪くなってきちゃって、立っていられなくなったんだけど……。ああ、でも起きなきゃ。そう思うんだけど、どうしてか上手くいかなかった。しばらく動けないでいるわたしに、


「ああ……まあ、もう過ぎたことだよ、難しいだろうけど、気にしない方が良い。

 ……知らなかったんだ、仕方ないさ。考えたって戻ってくるわけじゃない、これからどうするかを考えた方がいいよ、きっと……」


 彼はちらりとどこかのパーティの方を見た後、たどたどしく言った。


 起こしてしまったことは、取り返せないんだ。途中で気づいただけよかったのかもしれない。まあそう簡単には割り切れないけど、でもカンの言うように、これからを大事にしよう。そう考えよう。


「気分は? 立てる?」


「あ……うん。大丈夫」


 屈んでわたしを心配そうに見る彼にそう答えて、わたしは立ち上がる。こんな風に心配してくれるなんて意外だ。もっと冷ややかに何やってんの? とか言われるかと思ったのに。


 彼らしくない、というのは失礼だよね。けどおかげで助かった。わたしもらしくなく、くよくよ悩んでる場合じゃない。


 そうだ、運営の過激派が勝ってしまったら、こっちの世界の侵略なんて、今よりもっとヒドイことをするつもりなんだった。そうならないようにまずはスターリングの防衛だ。セイ達と戦うことになるけど、負けるわけにはいかない。


 で、それが終わったら帝国に行ってツバサに協力してもらって、世界を滅ぼすってミライのことも止めなくちゃ。ミライが世界を滅ぼしたら、それどころじゃないしね。


「迷ってる場合じゃなかったね。とにかく、前向きに、出来ることをしないと!

 まずは帰って、今日のこと報告だね! よし、急ごう!!」


 わたしはそう決意して、クレーディトに向かって駆け出した。


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