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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第八章: いやいや対人戦闘!

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008_10_話を一度まとめよう

「あら、リン。お帰りなさい。女子トークどうだったかしら?

 今、話をまとめてるところなの。何か新しいこと聞いてたら、教えてくれるかしら?」


 ナビの案内でたどり着いた部屋に入ると、会議机にいたマドカさんに声を掛けられた。臨時の拠点だという部屋は会議室のようだった。


 会議机の側にこの間カンと書いた、刑事ドラマっぽい人物相関図のホワイトボードがあった。この前より書き込みが増えてる。ええと……?


 初代皇帝の日記の内容――宝物が破壊神の力の源だったこと。それを奪い去ることで、破壊神の力を奪ったこと。一つでもそれを戻すと、破壊神が復活すること。


 三つの国に三つの宝物があったこと。皇帝がその三つを集めていたこと。そしてミライがそれを奪い、ここに来たこと。


 ツバサが持って行った三つ目の宝物に対応する遺跡の場所をミライが知っているかもしれないこと。


「わたしが話を聞いてもらっただけで、特にミライは話してくれなかったんですけど……でも裏切られた、って話に対する感じからすると、やっぱり元・恋人じゃないかなあ。

 それに別れちゃった理由は全く答えてくれなかった……っていうか触れちゃいけない話題みたいでした。でも、だから余計にそんな気がします」


 ミライのそっけない態度を思い出しながら答えた。どこが好きだったのか聞いたとき、好きじゃないとは言わなかったんだよね。嫌いなら、そう言えばいいのに。


「否定せずに答えなかったのは、まだ好きだけどそうは言えないから、ってリンは考えてるのね。なるほど」


 マドカさんがうなずいた。


「別れた理由……戦争じゃないか? それこそ、皇帝が宝物のために他の二つの国を滅ぼした時の。彼らの話とも合うし、負けた方を奴隷にするのがこの辺の風習だし」


 ホワイトボードの前でうろうろしながら、カンがいつも通り淡々と言った。


「宝物のための戦争? その上奴隷? そんなのってヒドイ!! ミライ達は、その犠牲者なんて……」


「いやまあ、俺の推測だから、彼らに確かめてみないと分からないけど。

 彼らがどこの国の出身か、とかそんな話はまだ分かってないし」


 そんなのあんまりだ、と抗議するわたしに、彼はちょっとしどろもどろに言い訳をした。でも、なんかかみ合ってないなあ。事実かどうか、は別に気にしてないんだけど。


「あ、他の二つの国だって、【超越者】を倒した英雄が作ったんだよな。だったらそっちにも話が伝わってないか?

 あー、でも滅びてるから、そんな記録も残ってない可能性が高いか……」


 カンはぱっと嬉しそうに顔を輝かせると、すぐに自分でその閃きを否定して頭を抱えた。あわただしいなあ。でも、他の国に伝わってる可能性、か。


「そういえば、ツバサは封印の仕方は知らないけど、何か他のことを知ってる……何か封印とは別の方法があるような感じだった。

 それに、皇帝の日記に書いてあったっていう、封印は三つ揃ってないと徐々に破壊神が復活するってことも言ってた。

 それって、もしかしたら他の国の英雄が伝えたことなのかも」


 飛竜の背での彼の様子を思い出しながら、わたしは考えをまとめる。


「封印が揃ってないといけないって話、一般に伝わっている伝説には無かったはず。

 将軍閣下も日記を見たって可能性もあるけど、他の英雄が伝えた話を知っている可能性もあるか。だとしたら彼に聞くのも手だけど……」


 カンは腕を組み、眉間にしわを思いっきり寄せて、わたしに言ってるのか独り言なのかよく分からない感じに呟くと、しばらく考え込んでいた。


「何にしても、ツバサにちゃんと話を聞かなくちゃ。

 ミライが破壊神を復活させようとしてるの、ツバサに裏切られたって思ってるのも大きいんじゃないかな。でもそれ、多分誤解だと思うんだ。だからそれを解いたら、破壊神の復活を止められると思う。

 彼女からしたら余計なお世話だと思うけど、世界を滅ぼすなんて、ミライにそんなことしてほしくない。

 それにツバサが彼女をわたしたちに預けたのも、きっと何か……わたし達が彼女を止めることを期待したんじゃないかなって思うし」


 ツバサに話を聞くか迷うカンを説得しようと、わたしは自分の意見を言った。彼の眉間には相変わらず深いしわが寄っている。


 これは別に彼女の望みじゃなくて、わたしの自己満足だ。けど、それでいいと思うんだ。破滅なんて、起こすことない。彼はそうは思わないのかな? それとも、破壊神を復活させたい? でもレイさんはそんなつもりはないって言ってたしなあ。


「リンがそう判断したなら、そうしたらいいわ。誰かに――たとえ運営でも――否定されようと邪魔されようと、貫いたらいいのよ」


 静かに、落ち着いた声で紡がれたマドカさんの言葉は頼もしかった。


「とは言え、早速問題なんですよね。帝国に行くには船がいるし、船を手に入れるには銀騎士団(シルバーナイツ)の許可がいるし」


 せっかく頑張ろうって思ってたところに水を差すように、カンが大きくため息を吐いた。


「銀騎士団ならヴァルキリー様にお願いしたら――」


「難しいだろうね。帝国関連の対応は主に銀騎士団の仕事だ。横槍入れるのもね。

 そもそも一回その関連で銀騎士団の仕事を邪魔しているから心証が良くない上に、わけの分からん目的で帝国に行くなんてことをあのお堅い人が許可するはずがない」


 正義感の強そうな人だし、事情を話せばわかってくれるんじゃないかな、と思って言ったけど、カンははっと短く息を吐いて、ばっさり否定した。う……邪魔しちゃったけどさ。


「あら、そのヴァルキリー様から連絡だわよ。次のイベントに協力してほしい、って。うちと同じく、どっかのギルドに戦いを挑まれたみたいね。

 明日作戦会議をするから来てくれないかって話だわ」


 情報端末を片手にマドカさんが言った。銀騎士団がギルドに戦いを挑まれた……?


「まさかそれって、リスクオンですか?」


 ジョー達がずっと、騎士団を倒してナンバーワンになるって言ってたことを思い出し、わたしは慌てて尋ねた。


「さあ……どこに挑まれたかは書いて無いわね。リスクオンってリンが元いた、アンタ達の友達がやってるギルドだったかしら?

 この時間、二人とも空いてたわよね。アンタ達、行ってきなさいよ。お友達のギルドのことも気になるでしょ? それにこれ、帝国行きの良いチャンスじゃないかしら?」


 チャンス……あ、そっか。協力する見返りに帝国に行けるようにしてもらう、ってことだね。


「そうですね、ガンバ――」


 たしかにいい話だ、って乗り気になっているわたしを遮って、カンが大きくため息をついた。


「どうして俺が。交渉――いやおよそコミュニケーションが必要なもの全部――苦手だってご存じでしょう? マドカさんが行った方が、上手くいくと思うんですが。

 帝国に行くことは必要なんでしょう? だったら尚更」


 と、彼は早口に、思いっきりネガティブに抗議した。そんなに行きたくないの? っていうか、そういうことしれっと言っちゃうあたりがコミュニケーション下手なポイントだと思う。


「アタシはそんなにこの件に関われないわ。だからアンタ達でやってもらわないと。

 それに、アンタだって帝国で知りたいことがあるんでしょう? 自分の目的は自分で達成した方が、楽しいんじゃないかしら」


 マドカさんは落ち着いた声のトーンでややゆっくりと、でもはっきりとカンに言った。


「それにね、何もアンタに全部やらせようって言うんじゃないわ。二人で、よ。

 銀騎士団と話すのはリンが上手くやってくれると思うわ。とは言えリンは他の騎士団のことも良く知らないし、話の裏とか考えるのは苦手そうだもの、いいように丸め込まれても困るのよ。

 その点性格悪いアンタなら、大体わかるでしょ、そういう悪意みたいなの。だから一緒に行って頂戴」


 マドカさんはわたしとカンを交互に見ながらそう続けた。うーん、マドカさんの言う通りかも。わたしだけでもカンだけでも、きっと上手く行かないな。カンはそれを聞いて、少しの間目を閉じて考えていたようだったけれど、やがてふう、と息を吐いた。


「……わかりました。行きますよ」


 ちょっぴり諦めたようにそれだけ口にした。ここで改心するわけでもないのが彼らしいところなのかな。頑固者め。


「リン、ってことで宜しくね」


 マドカさんが笑顔で言うと、さすがになんか悪いと思ったのか、カンも小声で宜しく、とつぶやきつつ、小さく頭を下げた。


「あ、はい。それでどこに行けばいいんですか?」


「スターリングの銀騎士団の本拠地(ホーム)よ。道はカンが知ってるから、一緒に行って頂戴。スターリングまではゲートで行けばいいわ。騎士団員はタダで使えるから」


 タダなんだ! こんなところにも特権が! って、そんな事はいいんだった。


 銀騎士団の本拠地って、どんなところなのかな? うまく話しができるかな? ちょっと不安だけど、あのヴァルキリー様にまた会えるっていうのは楽しみだな。


 がんばろうっと!

いつもお読み頂きありがとうございます。

今回で本章も終了です。次からは帝国を目指して、ヴァルキリー様と交渉です。


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