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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第八章: いやいや対人戦闘!

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008_04_デッドクロスに死の罰を#3

「ああ、気づかれるなんて。

 それにしても見事な白馬の騎士(ホワイトナイト)っぷりじゃないか。いや、感心するよ。その辺がモテる秘訣かねぇ……」


 窓の外で、カンがジャキンと銃を鳴らしながら、小馬鹿にしたように笑った。それを睨みつけるユキのところに、小さなユニコーンが現れ傷を回復させていく。自動回復用のペット? そんなのあるんだ!


「あら、いきなり撃つなんて。何か面白い展開になったかもしれないから、もうちょっと聞きたかったのに」


 マドカさんが少しつまらなそうに、いつの間にか庭にいたカンに言った。


「バルバロイの戯言なんぞに耳を貸す必要が?

 片付けるのなら、早く攻撃した方が良いかと」


「……うーん、まあ、ちょっと引っかかるけどそうだわね。そうね、どうしたのか知らないけどアンタ珍しくやる気じゃない。良い事だわ。

 じゃあ二人でちゃっちゃと向こうの二人、片付けて頂戴。

 リンもいいわね? 流石に一対二は厳しいから、ちゃんと協力するのよ」


 ネネとユキを倒したいって言っても、確かに二人いっしょに相手にするのは無理がある。カンもやる気みたいだし、いいのかも。


「はい! でもカン、トドメはわたしに刺させて」


「Aye, Ma'am」


 カンはうなずきながら、もう一度ネネに銃を向けて撃った。ユキがネネの前に立ち、銃弾から彼女をかばう。


「へぇ、頑張るもんだ。いつまで保つかな? 自動回復のペットがいるにしても、ホーラの続く限り、だろ? 無限じゃない」


 銃弾を込めながら口の端を吊り上げるカン。うわぁ……それ完全に余裕ぶっこいてやられる感じの悪役(こもの)のセリフじゃないか。今に始まったことじゃないけど。


「ところでリンさん、どちらかしか倒せないとしたら?」


 彼の態度にドン引きしていたら、ふいにそんな事を聞かれた。聞きながら、またネネを撃つけど、やっぱりユキがかばった。ええと……どっちかより倒したい方……より許せない方か。


「ユキ……浮気男の方」


 二人とも許せないけど、ずっと嘘をついて、本当の事は何一つわたしには言わず、謝りもしないユキの方が許せない。わたしは一言そう答えて、事の成り行きに呆然としていたデッドクロスの一団の脇をすり抜け、ユキ達の方に向かう。


「ユキ、ネネゎたすけてもらわなくてもだいじょーぶだよ! ネネにもスウィスウィいるもん!

 てかあいつ、ぜったいゆるさないから!」


「そうだな。銃なんぞ手にしてイキってるクズに、そんなものが無力だって教えてやろう。ネネ、本気で――」


「させない!」


 わたしはユキに向けて剣を振り下ろす。


「リン! ったく、いつもいつもウザイんだよ! 突っかかってくるなよ!!」


 わたしの攻撃を剣で受け止めると、忌々しげにユキが吐き捨てた。


「おい、お前ら、何ボーっとしてるんだ! お望みどおりそのオカマを倒してやれ! こいつら全員倒して、パーフェクトで勝つぞ!」


 敵意に満ちた目で、ユキは残りのメンバーにそう命令した。


「おう!」


 残りのメンバーが一斉にマドカさんに向かっていく。こっちは任せよう。


 わたしは一旦剣を引き、もう一度ユキに打ち掛かる。一合、二合と剣をぶつけるけれど、中々ダメージを与えられない。


「いたっ! うー、もぉ! うざい! ぶっころ――あぅ」


 剣のぶつかり合う金属音の合間に、ネネのイライラした声と銃声が耳に飛び込んできた。ユキは気になるらしく、ちらちらとネネの方を見る。


「ちっ……! リンにオレの足止めさせて、自分は安全なところから弱いネネを狙い撃ちか! ガチでクズすぎだろ!

 リン、よくあんなやつといるな! 今降伏するなら、悪い様にはしない。考え直せ!」


 ユキはわたしの剣を受け、その反動で攻撃してきた。


「ああいう感じなのはいつものことだからもう気にしないことにしたよ!

 大体一緒にいるのは白騎士団の仲間だからってだけ!

 後、絶対降伏なんてしない! だってわたし達が勝つから!」


 ネネが気になっているのか、いまいちキレのないユキの攻撃を盾で受け、反撃に剣を振り下ろす。集中力の欠けたユキの肩に赤い筋が走る。


「くそっ……! リンごときにダメージ喰らうなんて!」


 ユキは悔しそうに舌打ちした。


「こっちをちゃんと見てないからだっ!!」


 わたしは手を緩めず、攻撃を続ける。やっぱりネネが気になるらしいユキは、防ぎきれずにいる。けれどそれでも大きなダメージにはならず、すぐにユニコーンに回復されてしまう。


 FXは何からでもお金をむしり取るシステムだから、カンの言うように自動回復も無限じゃないんだろうけど。でもいつ尽きるか分からない中で削り続けるのも、わたしの方が先に力尽きちゃうかも。


 現に少しずつ、剣を振るのが辛くなってきてる。ザクっと一気に、回復が間に合わないくらいダメージ与えられたらいいんだけど。


「ネネ! そのクズの銃、攻撃力は大したことない! しかも三発で弾切れだ! 回復をスウィスウィに任せて、多少食らうのは気にせず距離を詰めろ!

 近づいてしまえば銃など無用の長物、為す術無しだ! オレもすぐに行くから!」


 ユキはわたしに攻撃しつつ、ネネにそう指示をした。なんかあっさり対策が出来ちゃってる! こういうところ、くやしいけどユキはさすがだ。


「うん! わかったよ! あのクズゎネネにまかせて!!」


 ネネは庭の方に走っていった。


 ん……? 庭……? あ、そうだ。あれならすぐ回復しちゃう面倒な敵も片付けられるんじゃないかな。それならネネはいいとして、ユキも庭に向かわせた方がいいな。上手く誘導したいけど……打ち合いながら移動するのは、足元に色々落ちてたりしてつまづきそうだしちょっと自信ない。……そうだ!


 いいアイデアが浮かんだところに、ユキがぶん、と思いっきり剣を振ってきた。


 よし、早速のチャンス! わたしはユキの大振りな攻撃に合わせて自分から飛んで、吹っ飛ばされたように装う。これで心置きなくユキは庭に行くはず。カンには悪いけど、しばらく囮になってもらおう。


「カン、ちょっとの間負担掛けてごめんだけど、頑張って二人を庭に引きつけて、出来れば庭の真ん中辺に誘導しておいて。わたしもすぐ行くから」


 わたしの予想通り、倒れたわたしに止めを刺すことなく、カンを倒しにネネのいる方へと走っていくユキの背中を見送りながら、わたしはカンに頼む。


「Aye, Ma'am」


 一時的に、とはいえ二対一って負担に耐えてくれ、という理不尽なわたしの頼みにも関わらず、彼はそんな淡々とした返事だけを返してきた。


 ホントに分かってるのかなあ、ちょっと心配。でも信じるしかない!

読了ありがとうございます。楽しんで頂けたのならば幸いです。

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