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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第八章: いやいや対人戦闘!

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008_03_デッドクロスに死の罰を#2

「片付けご苦労様、だわよっ!」


 リビングでは、ドアの近くに足止めのために置かれた家具を黒いコートの集団が懸命にどけているところだった。そこへ、家具の隙間を縫って、マドカさんが石を投げ込んだ。あれ? マドカさんが狙った、リーダーっぽい男って……。


白騎士団(ホワイトナイツ)! よくもこんな卑怯な罠ばかり仕掛けやがったな! その上不意打ちで投石か! 騎士の風上にも置けないな!

 しかし今更のこのこ出てくるなんて、オレ達が罠でやられたと思って安心したか? よっぽど自信があったらしいが残念だったな!

 ハッ、バカな奴らだ! こっちの方がまだ数の優位もあるし、それに残ってるのは精鋭揃い、普通に戦ってオレ達に勝てると思っているのか? ずっとコソコソ引きこもってりゃ望みもあったかもしれないのにな!

 どうする? 今なら、大人しく降伏して支配者の座を渡せばこの拠点は残してやってもいいが」


 襟と袖口にファーのついた黒いロングコートを着た男は、幅広の剣で器用に投げられた石をはじくと、得意げに、高圧的にニヤリと笑った。彼の傍らで、床に落ちて散らばったシャンデリアの破片が、窓からの光を受けてキラキラ輝いていた。そんな男に、マドカさんは心底、可哀想なものを見るようにため息をついた。


「よくもそんなバカな話を高らかに語れるもんだわよ。もっとよく考えるのね。『来たりて取れ』だわ。

 さてと、じゃあ、こいつら全部畳んじゃいましょ」


 軽く腕を伸ばし、ストレッチしながら平然とマドカさんが言い、わたしの方を振り返った。でも、わたしは答えられない。だって、その男。それに、その隣にぴったりくっついてこっちを見ている女。


「行雄……と、ねね……? 何でここに……!? 何で……?」


 見知った二人にようやくそれだけ尋ねることができた。声が何だか震えている気がする。なんでこんなところにいるんだろう? しかも、どうして二人一緒に? 


「うそ? リン?? リンもFXやってたんだー。

 なんで、って、ネネとユキゎ二人でギルド作ってぇ、クレーディトで一ばんのギルドにしたからぁ、あとゎホワイトナイツをたおすんだけなんだよぉ」


 行雄――ここではユキなのかな――の腕にきゅっと抱きつき、小首をかしげて得意気に、上目使いにネネが言った。たぶん彼女は、わたしとユキのことを知ってるんだと思う。だから聞いてもいないのに、自慢げに得意げに、わたしを見下すようにユキと仲良いことをアピールしてきてるんだ。ユキが誘ったのがわたしではなくてネネなんだ、って。


「ネネには、聞いてない。ユキ、どういう事?」


 それだけ言って、わたしは少し視線を斜め上にあげて何も言わないユキを睨みつけた。ユキは視線をわたしの横に向ける。


「リン……てかお前こそ、こんなとこで何やってんの?

 FXのプレイヤー、しかも弱小とは言え騎士団員?

 は? 誰に誘われたわけ? 男? しかもオレに黙ってたのかよ」


「違う、誘われたのは友達(セイ)にだし、それに――」


 ユキを誘って、一緒にFXをプレイしたかったのに、という言葉は続けられなかった。


「ネネ、みんな、行くぞ! 自分達だけ特別なつもりの騎士様を倒してやろうぜ!」


 ユキをはじめ、デッドクロスのメンバーが一斉に襲い掛かってくる。


「ちょっと待ちなさいよ。せっかちだわね」


 言いながら突っ込んできたデッドクロスのメンバーを、香港映画のスターのようにひょいひょいとその辺にあった椅子で片付けると、マドカさんがこちらを振り返った。


「まあ、大体事情は分かったわ。で、アンタこの浮気男と泥棒猫、どうしたいのかしら?」


「あ……ごめんなさい。個人的な事で……。

 今は対戦中、でしたよね。デッドクロスは敵ですから、そういうの抜きで倒さなきゃ」


 つい動揺しちゃったけど、そんなこと言ってる場合じゃなかった。ちゃんと白騎士団の仕事しなきゃ。そう思って答えると、マドカさんは困った顔をした。その隙をついて向かってきた奴がいたけど、


「全く、話があるんだから邪魔するんじゃないわよ。空気読めない奴らね」


 マドカさんがあっさり椅子で撃退した。そして再びわたしを見て、ゆっくりと落ち着いた声で、


「リン、謝らなくていいのよ。そう言う事じゃないの。アタシはどうしたいか聞いただけ。咎めているわけじゃないのよ。だから正直にそれに答えてくれればいいだけよ。

 別にあいつらが許せないのも、仕返ししてやりたいって思うのも当然だわよ。それはそれでいいわ。

 ただ周りの事を気にして、自分を抑え込んで、納得したふりして戦うのはやめて頂戴。そういうのがあると、いざって時にずれが生じたりするのよね」


 優しく、でもきっぱりと言った。そうなのかもしれない。何か言われたら、イラっとして二人に気を取られちゃうかも。そしたらマドカさんやカンと合わない動きになるかも、だよね。それで結局、みんなをピンチにおとしいれちゃうかもしれない……。それは嫌だ。


「えっと……個人的な事で申し訳ないですけど、あの二人はわたしが自分で倒したいです。どうしても、許せなくて」


「そう、解ったわ。いいわよ。じゃ、倒しましょ。でも一人じゃダメよ。カンと二人であの二人を倒しなさい。残りはアタシがやるわ」


 マドカさんはあっさりと、こともなげに言った。


「カン、聞いてたわね。頼むわよ」


「Aye, Ma'am」


 イヤホンから聞こえてきたカンの声も、あっさりと了解するものだった。嫌だって言いそうなものなのに、すごく意外だ。マドカさんに脅されたのかなあ?


 けど、何にしても、こうやってしっかり話を聴いてくれるのは嬉しいし、分かった上で協力してくれるのも凄くありがたい。


「はぁ!? リンがオレとネネを倒す? 冗談だろ? どれだけ認識が甘いんだ!」


 それを聞いたユキは怒りを露わにした。そのユキのコートの袖を、ネネがつかんで揺すり、


「ねー、ユキ。あいつらがそれがいいってゆってんだからいいじゃん。ネネとユキ、二人でたおそ?

 かんちがい女にちゃんと、げんじつをわからせなきゃだよぉ」


 小首をかしげ上目遣いに彼を見て、ねだるように言った。


「ね、さっさとリンをやっつけてぇ、それからあのゴリ――」


「ネネ、危ない!!」


 ユキがネネをさっと突き飛ばすと同時に銃声がした。デッドクロスのメンバー達も一斉に窓の外を見た。


 また卑怯って言われそう。でも、そんなの関係ない! 絶対、倒してやるんだから!!

いつもお読み頂きありがとうございます。

デッドクロスの二人って誰だっけ? という方は002_006及び004_007をご確認頂けますと幸いです。

なお、ネネの台詞が色々間違っているのは仕様です。


もし宜しければ、感想・評価・ブックマーク等頂けますと励みになります。

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