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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第七章: ここから探検再開!

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007_01_復讐よりも話し合い

「あ、リンー! ひさしぶりー! こっちこっち」


 一階に降りると、セイが立ち上がり手を振っているのが見えた。彼女のいる机に向かう。


「意外と早く戻ってきたじゃん? けっきょく強制労働やめてお金払ったんだ?」


 ほらみたことか、とセイがちょっぴり意地悪く笑って聞いてきた。色々黙ってないといけないから、そういうことにするしかない。


「あー、うん、えっと、そう……なんだ。そのー、ほら何かやっぱりみんなにおいてかれるのイヤだし。

 っていうかギルドもずいぶん大きくなって、知らない人もいっぱいだからちょっとあせってる、かも」


 しどろもどろになってしまったけど、後半はホントのことだし、まあ大丈夫だよね。セイもなんだか得意気にうなずいていたし、何も疑われてはいないみたいだ。むしろホントのこと説明した方が信じてもらえないかも。


「いい心がけじゃん! みてのとーり、ギルド、おっきくしたんだよぉ! めっちゃりっぱになったっしょ? すごくね? 入りたいって人が多かったのもあるけどぉ、ほかのギルドを吸収してぇ、ついでに拠点も奪い取ったし!」


「吸収? 拠点を奪う? どういうこと?」


「対戦だよ! 最近は他のギルドとの対戦ばっかだからまぢ楽しかった! リンも参加したらよかったのに! ウチら今んとこ負けナシだぜぃ! すごくね? 負かしたギルド吸収してドンドン強くなってるし。

 銀騎士団(シルバーナイツ)倒してスターリングの支配者になるのも時間の問題じゃね!」


 セイは大きく胸を張った。他のギルドとの対戦? そんなの始まったんだ。


「銀騎士団とも対戦するの?」


「そそそ。今、ジョーが話を進めてるトコ! やばくね?」


 前に言ってた連絡会議とかで解禁になった、っていうのはこれだったんだ。銀騎士団って言えばあの、美しすぎる女騎士、ヴァルキリー様のところだよね。強そうだったけど、大丈夫なのかなあ? セイは「ウチらのが強い」って顔してるけど。


「対戦は勝ちまくってるし、イベントに向けて仕事こなしておカネも稼いでるし、ってカンジですっごいうまくいってるんだ。でも……」


 セイはギルドの発展を喜びながらも、顔を曇らせた。


「どうしたの? なんかあった?」


「ジョーがギルド運営とかで忙しくて、ぜーんぜん一緒に戦ってないんだよね……。

 狩りとかフツーの仕事はジョー、さいきんぜんぜんやらんし。対人戦の時も、パーティ別だし……」


「一緒にいられないんだ……。残念だね。

 けど他の人とかにも手伝ってもらったりして、何とか時間つくれないの?」


「うーん……なんていうかぁ、どっちかっつーととギルドの仕事のが楽しそうなんだよねー。

 誘いづらい……てか行こうよ、って言ったら断られたしぃ……。ウチに秘密でなんかやってるみたいだしぃ……。

 ジョーと一緒に狩りするの、楽しかったのになぁ……」


 ぐったり机に突っ伏してため息をつくセイ。誘っても断られるとか辛いだろうな。でも、なんて声かけたらいいのかなあ……。


「とにかくさ、今日のクエストをばっちり成功させてマスターに褒めてもらおうよ!

 なんか、セイがどうしてもやりたいクエストだって聞いたけど?」


「そそ。謎の竜騎士を倒せ!!!」


 彼女はぎゅっと拳を握りしめ、高らかに宣言した。謎の竜騎士、という単語と彼女の様子からして、多分、あの人のことなんじゃないかな。


「それってまさか、あの、タイラントドラゴンにとどめを刺した、あの青い髪の……竜人?」


 わたしが聞くと、彼女は大きくうなずいた。


「そそそ! リンだってリベンジしたいっしょ?

 何か銀騎士団(シルバーナイツ)が必死で探してるってウワサだから、絶対あいつらより先に倒そうぜぃ!

 リンが戻って来たら二人でってジョーに止められてたんだけど、これでやっとできる!」


 セイは笑顔で、本当に嬉しそうだった。まあ、わたしも予想よりずっと早く戻って来られてよかったな。そうじゃなかったら仕事、できなかったかもしれないもんね。


 でも、レイさんの話だとまだしばらくかかりそうな感じだったけど、ずいぶん早く正式にイベントになったんだなあ。やっぱり、何か変だ。バグなんかじゃないんじゃないかな?


 何としても、もう一回会って話してみなくちゃ。せっかく翻訳アプリを手にいれたんだし、話してみたら彼らの手がかりも、もっとつかめそうな気がする。それと、この世界の謎のヒントも。


 だからセイには悪いけど、わたしはリベンジなんてしない。話しに行くんだ。


「そっか。でも、何にしても、どうやって探すの?

 あの人飛竜に乗ってたよね、ってことはわたし達より全然速く移動できるわけだよね? それじゃどこに出てくるか分からないし、襲われるのを待つってわけにもいかないでしょ?」


 出会えなきゃ無駄になっちゃうもんね。そしてこのゲームの事だから、二時間探したけど会えなかった、なんて普通にありそうだ。


「うーん、クレーディトとスターリングの間でそいつにやられたって話が多いから、そっち行ってみよーぜぃ!」


 セイはあの男が見つからないなんてことはあり得ないと思っているみたい。まあ、セイは何だかんだ言ってトライホーンとか、スパイニードラゴンとか、狙った獲物は見つけて倒してるのか。護衛の時だってちゃんと魔物に襲われたし。


「分かった。絶対見つけようね!」


「お、やる気じゃん! あいつのせいでひっどい目に会ったし、まぢゆるせんよね!!  あんときはタイラント戦でダメージあったし、突然だったから油断したのもあるけど、今度はウチも対戦とかで鍛えて強くなってるし、武器も更にカスタマイズで強化したし。ぜってー倒すし!!」


 セイは負けた時の悔しさを思い出したのか、ぎゅっとこぶしを握り締めた。そして決意を新たにしていた。


 わたしは負けたことはあんまり気にしてない。っていうかむしろ、ゲームオーバーして強制労働に行ったからあの子に会えて、それで今彼ら竜人に興味を持つことができた。だから逆に良かったと思ってるんだ。


 でも……セイはやり返す気満々なんだよね。実際戦うことになったらどうしよう。セイを止められるかな? いや、止められるかじゃない。それでも止めなくちゃ。


「じゃ、いこーぜぃ! あ、そういやリンって武器あんの?」


「あ、うん。無いと仕事にならないもんね。セイは? 新しく買ったの?」


 貰ったことはひみつ、なのでそこは黙っておく。


「ウチは武器保険かけてたからぶじだし。

 カスタマイズで武器育ててるから、とちゅーで無くさんよーに保険はマストだし!」


 セイはパチンとウィンクした。そうだったんだ。保険なんてあるんなら、せっかく手に入れた高級武器だから掛けといた方がいいのかな? 戻ってきたら考えよう。


 準備を整えたわたし達はクレーディト方面に向かって出発する。あの人にまた会えるといいな。


 とにかく話ができるように、セイが戦闘モードに入る前に止めなくちゃ。でもって、何とか一撃で倒されないようにしなきゃ。


 っていうか、どっちも難易度高い!!


いつもお読み頂きありがとうございます。

今回から新章です。ようやく復帰です。竜人の男にはもう一度出会えるでしょうか。お楽しみに。


皆様の忌憚のないご意見、お待ちしております。


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