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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第四章: きっちり組織設立!

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004_03_襲撃続きの護衛旅#2

 タッタッタッと、一定のリズムで軽快に地を蹴る音が少しずつ大きくなってくる。どこから来るの? 音を頼りに探すと、草の間から、尾の長い、小さな飛べなそうな鳥が姿を現した。うそ、思ったより近い!! いつの間に! 倒さなきゃ!


 わたしは剣を振りかぶりスイフトフェザーに走り寄る。剣を振り下ろしたけれど、相手は急に加速し剣の間を掻い潜って躱すと、そのまま荷馬車に向かって大きくジャンプした。


「しまった!」


 荷馬車に被害が出たら弁償だっけ……。嫌な汗が流れる。


 その直後、パァン、と銃声がし、赤い鮮血と緑の羽根が飛び散った。撃ち落されたスイフトフェザーが地面に叩きつけられてピクピクと震えていた。


「まだ来る! 油断しないで」


 映画で見るように、銃をジャキンと鳴らしながらカンが警告する。スイフトフェザーは素早いから、こっちもなるべくコンパクトに、素早く剣を振らなきゃ。


 また姿を現したので、今度こそ、とわたしはそれに向かって小さなモーションで剣を振り下ろす。当たった、でも何だか手ごたえが軽い。どうも直前でかわされたみたいで、スイフトフェザーは小さな翼の脇にうっすらと血を滲ませていただけだった。


 もう一度、と踏み込もうとしたところでスイフトフェザーが急に向きを変えた。わたしは踏みとどまって方向転換し、それを追いかける。ヒュン、という風切り音がして、元々それがいた場所――わたしが行こうとしていた場所――を何かが凄い勢いで横切った。


「もう、ちょこまかと鬱陶しい! これだからフェザー系って大嫌い! スイフトフェザーとか的小さいし最っ悪!!」


 忌々しげに叫ぶリカの声が聞こえた。さっきのは彼女の矢だったんだ。当たらなくてよかった。っと、それより早く止めを刺さなくちゃ。


 わたしは態勢を素早く建て直すと、スイフトフェザーに向き直り、剣を降り下ろす。今度は重い手ごたえがあり、それは血を吹き上げて地面に倒れた。よし、倒した!


 さて、次はどうしたらいいかな、と辺りを見回す。街道沿いを逃げていくスイフトフェザーと、それを追うエルスドラゴン、エルスドラゴンに向かっていくジョーと、いつの間にか合流したセイ、その後ろに弓を引き絞りエルスドラゴンに狙いを定めるリカがいた。まだ倒せてないなら、加勢した方がいいよね。わたしが走り出そうとしたところで、


「ちょっと待って」


 と、カンが声を掛けてきた。最近、彼には止められてばっかりだ。


「リンさん、スイフトフェザーも残りは逃げてったし、エルスドラゴンは彼らに任せて下がろう。

 リカさんの射線に入っても何だし、多分、加勢に行っても邪魔になるだろうし」


「え? でも、エルスドラゴンて強いんでしょ? 手伝わなきゃ」


 ジョー達だけに戦ってもらうっていうのも悪いよね。だって、ダメージ受けたらその分ホーラが減るんでしょ? 自分達だけ安全なところにいるなんて気が引ける。


「元々、俺達の担当はスイフトフェザーだろ? ジョーはエルスドラゴンと戦わせたくない感じだった。

 恐らくこっちの装備だと大してダメージは与えられないし、下手に手を出されると予想外の反撃されたりとか面倒な面もあるからだろうね。それに慣れた仲間同士の方が連携もしやすいだろうし」


 確かにジョーはわたし達には戦わせないつもりっぽかった。そういう理由だって言われれば、そんな気もする。


「じゃあ、逃げたスイフトフェザーを追う?」


 わたしが聞くと、彼は首を横に振った。


「荷馬車を襲う恐れがないならわざわざ追いかけることはないし、第一追いかけたところできっともう追い付けないさ。あいつら足が早いから。

 それより他のが来ないか見張っておいた方がいい。また襲われないとも限らないからね。えーっと……そう、今、俺達ができることをしよう!」


 最後の方は拳を握りしめ、わざとらしい力強さで彼は言った。うーん、言ってることはもっともらしいんだけど、やっぱり何かこうサボろうって気があるような気がしてもやもやする。


 とはいっても、荷物に被害が出たらその分弁償しなきゃいけないんだし、ジョーは弁償っていうのは絶対避けたがってたから、それがベストかもしれないな。別にカンの働かない言い訳に言いくるめられたわけじゃないよ。


 今できることをしなくちゃと、わたしは荷馬車の横についた。なんか荷馬車のスピードが上がってる気がする。この場から早く逃げよう、ってカウフマンさんの判断なのかな。


「お前ら荷馬車の見張り頼む! おれはリカさんに加勢してくるから! 盾がないとリカさん危ないかもしれないし! ってもこっちが襲われてもまずいから、二人は残れ!」


 そういって、リカのパーティメンバーで盾を持った二人の内の一人が、わたし達が戻って来たのをこれ幸いと駆け出していった。見張りに残るのはわたしとカンと、リカのパーティの残り二人――盾の人Bと槍を持った人――の四人になった。


「盾の人A、何としてもリカは自分が守るんだって感じだったけど……。

 リカのパーティは盾二人が敵を止めて、槍の人とリカが攻撃な感じなのかな?」


 使命に燃え、嬉しそうに走り去る盾の人Aの後ろ姿と、残されて舌打ちする盾の人B、それから仕方ない、という表情をしている槍の人を順繰りに見ながらわたしはつぶやいた。


「だろうね。まあよく見かけるパターンかな、大抵のパーティが少なくとも盾は入れてるみたいだね。弓のリカさんが主力ってのは珍しいかもしれないけど」


 敵の位置に合わせて動きながら矢を放つリカをちらりと横目で見ながらカンが言った。そういえばトライホーンドラゴンと戦ってたパーティも盾の人いたっけ。凄い勢いで吹っ飛ばされてたけど。


「弓とかって不遇なのかと思ってたけど、リカ見てるとそうでもない感じだよね。当たれば強かったのかな」


「当たらないと話にならないけど、当てるのが難しいのは確かだね。威力はまあ、物による」


「ふうん……」


 当然と言えば当然の答えが返ってきた。リカはペットのキウイを使って、当てられるように工夫しているんだっけ。


「おっと、無駄口叩いてる場合じゃなかったか。向こうは向こうで片付けてくれるだろうから、見張りに集中しないと」


 リカのパーティからの刺すような視線にカンが肩を竦めた。そうだった。気になるけど、わたし達はわたし達の役割を果たさなきゃ。スイフトフェザーがまた襲ってくるかもしれないしね。


 周囲を警戒しながら暫く進む。わたしのいる方には今のところ襲ってきそうなのはいない。早くセイ達、戻ってこないかな。今襲われると、知らない人と組んで戦うことになるし。


 ……なんて祈りが通じるはずもなく。


「おい! あれ……テラーフェザーだ! さっき逃げた奴が戻ってきたのか!?」


 槍の人の焦った声が響いた。テラーフェザーも全部倒したわけじゃなかったんだ!


「とりあえず僕が止める! テルは攻撃頼むよ。そっちの二人も手伝って!」


 盾の人Bがそう言うと、荷馬車に向かって真っすぐに走ってくるテラーフェザーを睨んだ。


 今までの感じからすると一人が攻撃を受けてる間に、回り込んで攻撃、とかそんな感じだよね。よし、行くぞ!


 わたしはテラーフェザーの方へ走った。


読了ありがとうございます。

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