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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第三章: とつぜん遺跡探検!

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003_02_不思議ルールは保護のため

「ようこそ、ソリドゥス南の遺跡へ。

 遺跡の入場料は1ホーラです。ご入場されますか?」


 ポスターに描かれていたのと同じ遺跡らしき建物の前に作られた門からNPCと思しき受付嬢が呼びかけてきた。何となくそんな気がしてたけど、やっぱり入場料取るんだ。


 入るのに免許と入場料がいるなんて。セイが探検なんてしないって言ってた理由が分かった気がする。でも、ここで引き返すわけにはいかない。仕方なく、はいと答え1ホーラを支払う。


「では持ち物のチェックをしますから、持ち込み禁止の武器はこちらにおいてください」


 受付嬢が笑顔で言った。え? 武器は持ち込めないの?


「キミの剣とか、そっちの銃とかは持ち込み禁止だから~、ここで預ける必要があるんだ~。遺跡を壊さないためだよ~。他にも色々ルールがあってさ――」


 ドッポがその他のルールを説明してくれた。


 遺跡内部のものを破壊することは禁止。遺跡内部のものには極力手を触れない。

 遺跡の中のものの持ち出し禁止。何か発見があった場合は画像キャプチャしてレポート送付。


 色々あったけどとりあえず気をつけなきゃいけなそうなのはそれくらいかな。厳しいっていうか、なんか普通の観光地のルールみたい。ダンジョン探検して宝箱開けて中のボスを倒して……みたいなRPG的世界感とは全く合ってないと思う。


「っていうか、武器なしで魔物に襲われたらどうするの?」


「素手で戦うか、逃げるかだよ~」


 え……素手で護衛なんてできるかなあ? でもまあ、滅多に魔物に会わないって話だし、大丈夫だよね?


 でも心配したところで仕方ない。わたしは剣を腰から外し、受付嬢に渡す。さようなら専用武器。


「お預かりします。他は……大丈夫です」


 剣を受け取ると、受付嬢は空港の職員さんのようにボディチェックをした。特に問題はないみたい。よかった。


「あなた、遺跡は初めてですね? 先ほどそちらの方が言っていましたが、探検に当たっていくつか注意点があります。

 本当は注意事項の説明をするのですが、今回の場合は非常に経験豊富な有資格者と一緒ですから、まあしなくても大丈夫でしょう。初心者の方は必ずしっかり有資格者の言う事を守って下さい。

 安全に、また遺跡を破損したりすることの無いよう、気を付けて遺跡探検を楽しんで下さいね」


「はい」


 何かあってペナルティとか受けるのはいやだし、ちゃんとドッポのいう事は聞かなくちゃ。けどドッポ、こんなふうに言われるくらい経験豊富なんてすごいなー。色々発見してたりするのかな?


「キミ達、くれぐれもルールは守ってね。そうしないと監督不行き届きってことで、ボクまでかな~り重いペナルティくらっちゃうから~」


 ドッポがわたし達に釘を刺した。連帯責任てことになるのかな。それはそれで大変そう。


「了解!」


 元気よく答える。迷惑かけないように気を付けようっと。


「それでは、いってらっしゃいませ」


 受付嬢に見送られながら門を抜け、遺跡へと向かう。



 すっかり草木に侵食されているものの、所々、人工的に切り出されたっぽい四角い石が地面に埋まっている。きっと昔はきっちり石で舗装されていた道路だったんじゃないかな。道の脇には折れた柱や朽ちた像のようなものが見える。


 正面には、一部は崩れているものの割ときれいに原型を留めている、ブロック状の石を積み上げて作られたような、大きな四角い建物が見えた。壁面には幾何学模様の彫刻が施されている。ソリドゥスの建物みたいな中世ヨーロッパ風ではなくて、何だか変な感じがする。


「じゃ、中に入ろ。暗いから足元に気を付けて~」


 朽ちてしまったのか最初から無いのか、扉の無い建物の入り口をくぐる。中には明かりなどは無いらしく薄暗かった。


 今いる場所は玄関ホールみたい。正面に階段が、左右に部屋がある。階段の左右には頭がなかったり片側が崩れていたりするから実際は分からないけど、天使のような、翼のある像が置かれていた。ううん……天使とはちょっと違うか。背中に羽根が生えてるんじゃなくて、腕に羽根が生えている。なんだろう? 調べてみようと近寄ると、ドッポから止められた。


「その像は別に何にもないから。ま、中は結構広くていろんな部屋があるし、来たことない人なら何かあるかもって調べたくなる気持ちは分かるんだけど~。でも実際はな~んもないからさ~。

 今回はそこは無視して秘密のエリアに向かお。……まずはこの部屋」


 ドッポは部屋同士のつながりや階段の位置などを記した建物の平面図を表示すると、2階の右上を指さした。そこに行くみたいだけど、何があるんだろう?


 中央にある階段を上って、そこから右の部屋に入り反時計回りに進んでいく。やはり薄暗い室内は窓のところだけ外から太陽光が差し込み、明るい光の筋を作っている。時折、カサカサと虫のようなものが走っていくのがぞわぞわする。うう……踏まないように気をつけないと。


 部屋の中に宝箱なんかはなくて、もう持ち去られたのか壊れてしまったのか、何も乗っていない台座のようなものだけがぽつぽつと残っていた。


 崩れていてよくは分からないけれど、壁には地図っぽい絵とそこに添えられた文字らしきものが描かれていた。他にはさっきの天使もどきみたいな絵もある。何だろう? この世界の神話とか、そんなのかな?


「ハイハイそんなの気にしない、気にしない。破壊神を封じ繁栄を築いたって神話の図だってさ~。必要なのは新発見だよ~? 早く行くよ」


 お、神話の図で当たってた。この世界のことを知る手がかりになるかな? だったら調べてみたいなって思うけど、何回も見てる人がスルーなら、きっとそれ以上の情報はないんだろうな。どうせならまだ誰も見たことないもの、っていう方が面白いか。そう考えなおし、どんどん先へ進むドッポの後を追う。


「さ、この部屋だよ~」


 ドッポが立ち止まったのは小さな部屋だった。部屋の隅の辺に絨毯の残骸だろうか、ボロボロの布が一枚落ちているくらいで何もないし、さらっと通り過ぎてしまいそうなところだけど。


「そんな顔するのも無理はないよね~。でも、ホラ!」


 怪訝な顔をするわたしの方を得意げな笑みを浮かべてちらりと見ると、ドッポは床に敷かれていたボロ布を剥がした。そこにはぽっかり、穴が開いていた。


「……! こんなところに穴!? 最近崩れ落ちた……?」


 床がひび割れてできたような穴をのぞき込みながらカンが驚いていた。彼はしばらく、じっと穴を見ていた。


「そ、見つけたのは最近だよ!

 ちょっと前に結構大きな地震が発生したでしょ……って始めたばっかだったら知らないか。まあとにかく地震の後に出来てたんだ~。

 あれやっぱり、新しいイベントの合図だったんだよ~」


 ドッポが胸を張って答えた。へえ、地震なんて発生してたんだ。天変地異とか魔王復活とか、そんなイベントの予兆だったりするのかなあ?


「さ、とにかくこっから一階に降りるよ。って飛び降りると最悪死ぬから、このロープを使うよ」


 そういってドッポは鉤のついたロープを取り出すと、床のわずかな突起に引っ掛け、二、三回引っ張り固定されているか確認し、ロープを伝って下に降りて行った。


「さ、はやくおいで~」


 ロープの上り下りなんて子供のころのアスレチック以来だなあ。あの頃は結構得意だった。きっと体は覚えているはずだ……と言い聞かせながらロープを降りる。ゲームだというのにちょっと怖いかも。


「お疲れ! 大丈夫?」


「うん、何とか」


 下でドッポが迎えてくれた。落ちることなく無事に下に降りることができてよかった。その後少しして、カンがするりと降りてきた。彼はきょろきょろと辺りを見回して、そして少し安心したように小さく息を吐いた。


「ほら、ここは一階なんだけど、これ、マップにはないだろ? ふつうに一階から行ったんじゃたどり着けない場所なんだよ~!」


 ドッポが満面の笑みで再びマップを見せた。わたし達がいる場所を示す青い丸印が、マップから浮いた場所に表示されていた。すごい、地図に表示されていない場所に来ちゃった。


 一階は二階よりも暗かった。ちょっと不安だな、と思っていたらドッポがランタンを取り出し、照らしてくれた。ここは二階の部屋よりもさらに何もなかった。壁には何も描かれておらず、剥き出しの石の壁がとにかく無機質な感じだ。


「何にもないけど……こんな場所に新発見なんてあるの?」


 見回してみても何も見つからない回廊を進みながらわたしが尋ねると、


「あはは。誰も行ったことの無い場所っていうのはそれだけで新発見だよ~?

 この回廊を超えた先はボクもまだ行ったことのないエリアなんだよね~。

 あ、だから最初に次の部屋に入るのはボクだよ」


 ドッポは笑ってそんな答えを返した。なるほど、確かに最初に到達したってことは新しい発見だよね。


 あ、何かそういえば初踏破ボーナスとかなんとか言ってたっけ。でもだからって、そんなちょっと小走りしてまで先に行かなくてもいいのに。別に抜け駆けしたりとかする気はないんだけどな。なんてのんびり歩いていたところに、


「リンさん、後ろ!」


 不意にカンの慌てた声が響いた。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

リンの後ろにいたのは何なのか、次話もチェックして頂けると嬉しいです。

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