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Heart〜生まれつき心の声を聞く能力を持った僕は、神様のまねごとで人との絆を紡いでいく〜  作者: くろくまくん


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サヤの片想い

前回、旅行の帰り道、ちょっとしたことから喧嘩をしてしまうシンとサヤ。


今回はサヤの視点で物語を見てみよう。

 私は進藤シンドウ 紗弥サヤ。今日、ていうか最近私はムカついている。


 なぜかというと…


「サヤちゃん、おはよう、元気?」


「ふーん」


 この能天気な男の子のせいだ。人の気を知りもしないで。男の子の名前は松岡マツオカ シン、私はシンくんと呼んでいる。


 実は同じ屋根の下で、このシンくんと私は暮らしているのだ。ちょっと自分で言ってて照れてきちゃったけど…あ、もちろん2人だけじゃないんだけどね。私のパパと、あと年下の可愛いユキちゃんと、シンくんとの4人暮らしなのだ。


 先日、パパとシンくんと私の3人で旅行に行って。そう、旅行はすごーく楽しかったんだよ。でも、その帰りにシンくんてば、私の悪口言うもんだからカチンときちゃって。


 んーとね、実際私も強かったり、勝ち気だったり、ホントのことだから、たぶん図星言われて嫌だったのもあるの。でも、気にしてることをそうやってズケズケと言われてしまうと、私も辛いよ。


 まぁ、一緒に暮らしてるから、まったく無視をするわけにもいかないし、普通には暮らしてるけど、なんかここ数日はなんとなく気まずい。ていうか、シンくんもごめんね、って言ってくれたら私もごめんね、って仲直りしたいのに…あー、これも私も悪いんだけどね…私って昔から意地っ張りだから、自分から謝れないのよ。それに負けず嫌いていう女の子らしくない性格だから、尚更ダメなんだ。


 ユキちゃんなんか可愛いし、賢いし、愛想いいから、シンくんなんかすぐ鼻伸ばしちゃうんだから!あー、またムカついてきちゃった。


 それにサトコちゃんは今は天川に帰ってるけど、胸も大きいから、羨ましいし、シンくんもパパも胸ばっか見てるし!私もおっきくなりたい!まぁ…サトコちゃんもユキちゃんもいい子なんだけどね。


 てか、シンくんが鈍感過ぎるんだよ〜。私、ホントにシンくん一筋なのに、シンくんてば、たまによそ見しちゃうし。嬉しいこと全然言ってくれない…てことはないか、すごくすごく大事にしてくれるんだけど、たまーに失言があったり。


 そういえば、そんなシンくんとも、幼稚園の時が初めての出会いだったな。


 あ、今日はね、仕事も休みだからベッドで転んでるの。たまには朝もゆっくりのんびりしてたいもんね。だからころころしながら今怒ってるの。


 シンくんとの初めての出会いは、幼稚園の年中さんの時だったかな。シンくんが私がかけっこでコケて泣いてる時、シンくんが起こしてなぐさめてくれたの。私、幼稚園の時から、というか小さい時からまぁまぁ勝ち気な性格だったから、そうやって派手にコケて泣いてても、誰も助けてくれなかったんだよ…でも、シンくんは違った。普段仲良しだとか、そういうのじゃなくて、ただ、私が泣いてたのを見て、なぐさめにきてくれたんだ。あの時からシンくんは優しかったな。


 たぶん、一目惚れだったんだと思う。


 それからシンくんのこと、遠くから見てたり、近くにいる時は声をかけたり、まぁまぁアタックしてたの。でもね…なんかシンくんはいつもおとなしくて、周りを見てびくびくしてる時もあったり、何かあらぬ方向を見てたり、私の方を見てくれることがあまりなかったんだよね〜。


 ある日なんか、急に空から


『僕もだいすき!』


 なんて声が降ってくるもんだから、なんか私怖くなっちゃって…結局あのあとも、シンくんと仲良くなることができないまま卒園しちゃったんだよ。


 シンくんに再会したのって、去年の秋くらい、ってシンくんには言ってたんだけど、ホントはね。もう少し前からも何回か再会…ていうか私が一方的にシンくんのこと見てたりはしたんだ。


 小学校の2年くらいの時でしょ。あの時はシンくんみっけ!って思ってたのに、結局シンくんに話しかけられないまま、シンくん転校しちゃったんだよ。


 中学の時は、違う中学だったけど、学校帰りに、シンくんを見つけたんだけど、私、友達と何人かで一緒にいて、声かけれなくて。シンくんはなんかずっと下ばかり向いてた気がするな。


 高校は確か全然違うとこだったから、会うこともなかったと思うんだけど、そうそう、私が専門学校に通い出して、シンくんは就職した時かな、私、シンくんがツナギ姿で通勤してるの見たんだよね。


 でも、なぜかいつもブツブツ言いながら異常なスピードで歩いてるから、全然追いつけなくて。あとは、やっぱりシンくんはなんか演歌歌手が遠くを眺めながら歌うみたいに、いつも遠くを見てたような…


 あ、シンくん一筋って言ってたけども、少しだけ他の男の人と付き合ったことはあった。コウヘイのバンドメンバーのドラムのあいつだ。もうあれは完全に私がどうかしていた。ライブハウスのライブでね。かっこよくドラムを叩いてるのがいいな、って一瞬思ってしまったのよね。でも、すっごい女たらしで複数の女の子といっぱい付き合ってたりして、もうすぐ別れたよ。


「サヤー、起きてるかーい?」


 パパだ。


「うん、起きてるよ〜。今日は休みだからゆっくりしてたいんだけど〜」


「あー、うんうん。それは全然大丈夫。あ、なんかシンくんが渡したいものがあるって、言ってたような言ってないような…」


 なにそれ。もぉ、シンくんも何か用事あるなら直接言ってくれたらいいのに…まぁでも。私最近ツンツンしちゃってたから、話しかけにくいよね。


「わかったよ〜、またあとでシンくんに聞いとく」


 幼稚園の時から、私の一方的な片想いだと思っていた。でも、運命的な再会は、シンくんからだった。


 でも、これがまた変な再会でね。私が仕事のことでへこんでるときに、なんかシンくんが神様になって、私の心に語りかけてきたの。神様だぞよ、とかいって。完全に変な人だよね。でも、それがシンくんだった。私からしたら20年ぶりじゃない再会だったから、もちろんすぐわかったよ。あ、すぐじゃないか。はじめは周りが暗くて見えてなかったから気づいてなかったんだ。でも、話してるうちにわかってたんだよ。


 あの時、一緒にファミレス言って、いっぱいいっぱいお話して、楽しかったなぁ…


 もちろん、今までの人生でも、楽しかったことはあったよ。でも、シンくんと再会できて、大人になったシンくんと直接お話できたことで、


 あぁ、やっぱり私、シンくんのこと好きなんだ、って思った。それからはずっと私、幸せなんだ。だって、大好きなシンくんが近くにいる。直接触れることができる。遠くから見てるだけじゃなくて。


 シンくんが他の女の子に優しくしたり、仲良くしたり、デレデレしてるのを見ると、ものすごくヤキモチを焼いちゃう。でも、それも私がシンくんのことが好きだからなんだ、って思うと、苦しいんだけど、そう思えるのも幸せなのかな、って思ったりもする。


 だって、シンくんは、私のことすごく大事にしてくれるんだもん。特別に想ってくれてるんだもん。

あまり自分勝手ばかり言ってたら、私、嫌われちゃうよね。今回も私が、もう少し寛容だったら、たいして揉めることもなく、収まってたことだもんね。


 シンくんも私に嫌なこと言われてばっかりじゃ、話したくなくなるよね。


 あ、そういえば、何か渡したいものがあるって、パパが言ってたな。直接話すのもあれだし、メール送ってみよかな。


『シンくん、渡したいものってなーに?』


 すぐ返事が帰ってきた。

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