シュウジのアドバイス
シュウジから心の声を聞く能力についての色々な話を聞いた。もし自分の周りに悪い人間がいたとしたら。そんな考えがよぎるが、すぐにシンはそれを打ち消した。
シュウジと2人で外にご飯を食べに行く。
伯父のシュウジから、心の声を聞く能力についての色々なことを聞いた。そのあと近くの蕎麦屋さんに2人で行く。
「ここは、天ざるが1番美味いと思う、俺はそれにするけどシンはどうする?」
「あ、じゃあ僕も同じ天ざるで、蕎麦大盛りにします」
こんな時は、蕎麦を大盛りにでもしないとやってられない。あ、普段も大盛りなんだけどね。
「てかさー、シンってその力はどんな感じで今まで使ったことあるんだ?」
日頃聞こえてくる種々雑多な声を聞く以外の、具体的に活用したことと言えば…今までを思い出してみる。
美味しいごはん屋さん、スイーツのお店の情報収集。
公衆トイレの情報。
サトシとサヤちゃんをなんちゃって神様で救った。
ユキちゃんを追っていたストーカーを追い払った。
アルバムから親の声を聞いた。
鉄塔からユキちゃんのお母さんの声を聞いた。
天河神社で、たまたま来ていたトオルさんと話した。
シュウジにそれを話す。
「しょ、しょーもな!なんか俺、心配して損したかもだわ。あ、でもモノに宿る声を聞けたり、死んだ人とも会話できたのは初耳だなー。まぁそれも今までのそういう祈祷師だったり、霊能者みたいな人達がしてきたことを考えると、同じようなことができてもおかしくはないのか」
天ざる蕎麦が来たので、食べる。天ぷらは揚げたてでサクサクだ。それに蕎麦も程よくコシがあって、僕はそんなに蕎麦の味にうるさいってわけじゃないんだけど、これは結構おいしい蕎麦だと思う。
「美味しい!」
「だろ〜?俺ここの蕎麦なら毎日でも食べれるもん。カレー蕎麦もなかなか美味いぞ」
うわ、ほんとにカレー蕎麦も今度食べたくなってきたな。なんだか美味しい蕎麦を食べたら少し気が晴れた。自分でも単純だと思う。
「あ、さっき聞きそびれたんだけど、伯父さんはこの力で痛い目にあったっていうのは、具体的になんなんですか?」
「あー、まぁあれだわ。博打でな。対面の博打って、もう心の声がわかったら楽勝なのよ。そんで調子に乗って、色んなところで稼ぎまくってたら…怖~い人達に目ぇつけられて、危うく殺されるとこだった、っていうわけ」
普通にやばいやつだ。
「まぁなんでもやり過ぎはダメっていうことだな。俺も仕事の商談とかでやっぱ金のこととかの話になると、しょっちゅうじゃないんだけど、たまに力を使う。でもな、たとえばこのくらいの金額で頼みたいな、っていう金額をピタリと当てられたら、普通の人なら気持ち悪いと思うよな。なんか騙されるんじゃないかって」
そういう交渉はしたことないからわかんないけど、そんなもんなのかな。
「だから、相手が思い浮かべている予算は読むんだけども、あえて外すんだよ。それはその企業の規模だとか、経営状況とかによってもどっちに外すかは変えるんだけど、相手の予算より多めにわざとふっかけてみて、あとで値引くとかな。逆に予算より少なめに提案して、付帯サービスをつけて、ちょうどくらいにするとか。そんな感じでセコセコと俺は稼いでいる」
セコセコ稼いでるやつが50万の小遣いをポンと出せるか。
「まぁなんにせよ、さっき話したことは、極端なことかもしれないけど。お前がどうしてもその力を使う時は、たとえば誰かを助けたい、っていう時は、それなりの覚悟を持って使え。あとは、自分の周りの信用できる人だけにしとけ。それに関わる人数が多ければ多いほど、バレるリスクは上がる」
それはなんとなくわかった。大勢の前でそれを使った場合、不思議に思う人もたくさん出てくるもんね。
「あ、俺からも質問なんだけど、力について知ってるのは今のところ誰だ?」
「えーと、一緒にいたサヤちゃん。たぶんサトシは知らない。あと今は東京で留守番をしてるユキちゃん。あとは…たぶんサトコちゃんが知ってるかなという感じ」
「なんだ、女ばっかりか。シンも好きだねぇ〜」
「いや、そういうわけじゃないよ!」
「まぁまぁ。まぁこれに関してはどうしようもないというか、勝手に聞こえてくることもあると思うんだけど、女関係にはこの声は向いてるようで向いていない」
どういうことだろう?
「女の本音のところを聞いていると、こっちが冷めてくるんだ。意外と女はシビアなところがある。まぁ…もちろん人によると思うけどな」
そうなのかな…僕にはまだわからない。
「まぁ、なんか困ったことあったら連絡してきな。俺も答えれることと、わかんないことあると思うが。よしっ、腹もいっぱいになったし、俺は仕事をしてくるわ」
シュウジが支払いをしてくれた。
「ごちそうさまでした。色々教えてくれてありがとうございます」
「うんうん、聞かなくてよかったこともあるかもしれないけど。でも知っておいたほうがいいと思ったから話した。シン、元気でな。今、お前の周りにいる人達はまず、いい人達だ。見てたらわかる」
「シュウジさん、ありがとう」
シュウジと別れ際に、足代とかで10万円を送ってくれた。神様〜!!こういうものはありがたくいただいておく。そして、みんなに還元するのだ。
色々聞いてしまって、考えてしまうけども、今までもそうだったように、あまり深く考え過ぎないほうがいいかもしれない。それに自分自身の欲得のためには絶対使わない。誰かのために使う場合でも、状況をよく判断して使うようにしよう。




