みんなで天川村を満喫
天川村の手前まで辿り着き、シュウジを駅で降ろす。
御礼の多額の電子マネーに加えて、シュウジはシンにしかわからない方法で、
自分も同じ力があることを、伝えてきた。
シュウジはものすごい金額のポケットマネーと、
謎を置いて帰っていった。
シュウジと別れた駅を出てから、約1時間くらい、山道をゆっくりと走っていると、天川村の入り口が見えてきた。前に僕が1人できた時は、バスの停留所があって、ちょうどそこの近くに、サトコちゃんの働いている旅館があったのだ。
着く手前にサトコちゃんに電話すると、先ほど仕事が終わったところみたいだった。旅館の入り口のあたりで手を振っているサトコちゃんが見えた。
「やっほ〜♪よう来たね〜!」
「サトコちゃんおつかれさま。元気にしてたかな?」
「まぁぼちぼちやな〜。相変わらずこっちの水は綺麗やし、ウチも可愛いよ♪」
「サトコちゃん久しぶり♪前はシンくんだけで堪能したみたいだから、今度はパパと私もきちゃった」
そうそう、今晩はサトコちゃんの働いている旅館に泊まることにしているのである。前に僕だけで来た時は、素泊まりの1万円も出せないケチケチ旅行だったので、従業員用の部屋におかみさんの親切で寝かせてもらったのだ。あの時はありがたかった。
「めちゃくちゃいいとこだな〜。こりゃ1週間くらいゆっくりしていたい気分になりそうだ」
と、サトシ。サトシはお酒があればいいのかもだけどね。
「あ、ウチ仕事さっき終わったとこやから、今から温泉先に入ってこーと思うんやけど、一緒にいく?一応ここも温泉なんやけど、やっぱあっちの温泉のほうがお湯いいんよね〜」
「うんうん、温泉みんなでいこう♪あ、そのあとにアイス食べようね♪」
ここに来たら、温泉、ジェラート、ごはん。それは外せない。
「わーい!温泉にアイス、旅行に来たって感じだね〜。それになんかすっごく空気が綺麗というか、なんかさっきと周りが違う感じがするー」
「そやろ〜?このあたりは水も空気も澄んどるし、自然の癒やし効果もあるんやで。いっぺん来たら忘れられへん、って観光客の人も言うてるわ」
大きい荷物を旅館に置かせてもらって、さっそくみんなで温泉に行くことになった。天の川温泉に着き、サトシと僕で先に露天風呂にはいった。
「結構長い距離の移動だったから、温泉はよみがえるなぁ〜。あ、そういえば明日はシンくんどうするの?伯父さんとこに行ってみるかい?」
「あ、はい、大阪の本町ってとこみたいなので、お父さんとサヤちゃんと別行動で、僕1人で行ってこようと思います。その間、大阪の観光がてら撮影に行ってきますか?」
「あっ、それでもいいかもな。大阪のうまいもんと酒をいただきながら撮影にしようかな。車で市内の方は移動大変そうだし、どこかのコインパーキングに停めておいてもいいかも知れない」
「わかりました。たぶんそんなに伯父さんのとこには長居はしないと思うんで、終わり次第連絡しますね」
話してるうちに、サヤちゃんとサトコちゃんも入ってきた。前の時もかなり刺激的だったが、今度はダブルである。
「はいはい、パパは向こうむいて浸かっててね〜。シンくんは見てていいよ」
「シンくんはいいんかい!てか、娘の裸に欲情はしないだろうに…おっ、サトコちゃんって思ってたよりなかなかだねぇ〜」
サトシがサトコちゃんの体、特に胸あたりをじろじろ見ている。まぁ気持ちはわからないでもない。
「サトシやっぱ変態やなぁ〜。まぁでもあとでアイスおごってもらわなあかんし、今日は許したるわ〜。ほらほらサヤちゃんもせっかくやから、みんなでゆっくり浸かろ♪」
温泉サイコーだ…色んな意味でサイコー…
「あ、温泉あがったら、アイス食べに行って。そのあと俺はちょい撮影に行ってくるよー。せっかく星空も綺麗だし。ご飯食べて、酒飲んでしまうと、撮影どころじゃなくなりそうだもんね」
「おっ、パパ珍しく真面目に仕事するんだね〜。まぁそれが今回の旅行のメインだから当然か。じゃあ私とシンくんとサトコちゃんで、先に晩ご飯いただいとくよ」
言いながら、サヤちゃんの視線がサトコちゃんの胸をずっと見ている。
「サヤちゃんどーしたん?そんなウチの胸が気になるん〜?」
「え〜、だって男はおっぱい大きいほうがいいんでしょ〜。私ももう少し大きくなりたいもん」
男はそうなのかな…まぁ大は小を兼ねるというもんな。でもサヤちゃんのスレンダーな感じも、僕は悪くないと思うんだ。
「ふっふっふ…サヤちゃん、天川に住んだら勝手に大きくなっていくで〜!というわけで明日から一緒に住もうや」
「えっ、そうなの!?サトコちゃんめちゃ適当に言ってない?でも…この温泉と綺麗な景色の時点で、もうすごく気に入っちゃったかも」
温泉にゆっくり浸かったあと、旅館のそばの例のジェラート屋さんに行く。
「じゃあうちはトリプルで、洋梨とオレンジとミルクね。サヤちゃんも遠慮せず頼み〜な」
「え〜、私はどうしよっかなー。じゃあ私もトリプルで…黒ごまと、チョコと、マカダミアにしよかな〜」
サトシは甘いものはいらないらしく、僕はキャラメルときなこのダブルにした。アイスの支払いをしたあと、サトシは星空を撮りに出発した。
「じゃあまぁ1時間くらいしたら旅館に戻るから、アイス食べたら先に帰って、ご飯食べときな〜」
「はーい、パパありがとう」
アイスを食べたあと、旅館に戻って、晩ご飯をいただくことにした。着いた時はすぐ温泉に出たのでおかみさんに挨拶できてなかったが、あらためて挨拶をした。
「ありがとうなぁ、さっそく泊まりにきてくれて。サトコちゃんからシンくん達が来ること聞いとったから、今日の晩ご飯は特別メニューにしたで〜!」
「ありがとうございます!先日は色々とお世話になりました。あっ、あの写真って…」
旅館のロビーの柱にシンプルな額縁に入れられた1枚の写真が目についた。
「あはは。それウケるやろ?前に撮ってもらった写真、サトシがL判のんと、あとデータも送ってくれたから、せっかくやし引き伸ばして、飾ってみてん」
写真は、タケばあちゃんと、サトコちゃんの、とびっきりの笑顔だった。
「ばあちゃんしわくちゃやから、ウチのかわいすぎる写真とやとバランス悪いやろ?やから、おんなじようなしわくちゃの顔してるやつにしてん。これがまた、来てくれるお客さんによーうけとるわ。ええ写真やなあ言うて」
すごくいい写真だった。サトコちゃんは照れ隠しでそんな言い方をしてたけど、少しは、ほんの少しはタケばあちゃんのことも考えてくれてるのかも。
トオルさんが見たら喜ぶだろうな…あ、そういえば神社行くの忘れてた。
旅館の食事も美味しかった。お刺身、和え物、吸い物、煮物、焼き物、すき焼きの小鍋、お豆腐、漬物、少しずつの量だったが、それがまたちょうどいい感じで、前に来た時も思ったことだけど、ひとつひとつの料理がすごく美味しかった。素材の味を生かしている、ってこういうことなのかな、って思った。
「ご飯すごく美味しいね〜!サトコちゃんこんな美味しい料理、毎日食べれるなんてもう天国じゃん」
「あ、もちろん毎日こんなご馳走とちゃうで〜。普段は普通のご飯やよ。でも、それでも美味しいのは全部美味しい。それに身体にも優しいし、なんせ美容にも良いんやで〜、ええやろ〜?」
サヤちゃんが喜んでくれてよかった。食べている途中で、サトシも帰ってきた。
「おかえりなさーい!ご飯めちゃくちゃ美味しいよ〜」
「見るからに美味しそうだな〜。はじめはビールで、途中から冷酒をいただこうかな〜」
自ら飲む宣言をするサトシ。きっと今晩はだいぶ飲む気だな。
「あっ、明日は午前中には出るんやんね?ウチ10時からの勤務にしてもらってるから、朝ごはんと、朝風呂も入りに行ってから、出発したらええんちゃう?」
「うんうん、そうしようかな。ごめんねサトコちゃん、あまりゆっくりできなくて」
「ほんまやで〜!まぁでも、これからもちょくちょく遊びに来てや。ウチもそっち行くし」
長旅の疲れと、温泉で体あったまったのと、お腹いっぱいになったのもあって、布団に寝転んだらすぐ寝てしまっていた。部屋はサトシと僕、サヤちゃんとサトコちゃんの、2人ずつの部屋にしてもらった。




