Happy Chain〜幸せ連鎖〜
サトコの歓迎会の翌日、サトシの機転でタケばあちゃんとサトコの写真撮影をし、少し距離が縮まるサトコとタケばあちゃん。
美味しいお蕎麦を食べ、シンとユキとサトコでモールに出かけて遊びに行った。
その日の夕方。
仕事あがりのサヤちゃんに電話をかける。
「サヤちゃんおつかれさま〜」
「シンくん、おつかれさま。昨日あまり寝てないから疲れたよ〜」
「そうだよね〜、あ、サトコちゃんがお昼に帰る予定だったけど、サヤちゃんと会いたいから夜行バスで帰ることにしたって」
「わぁ、そうなんだ。どうしよ、どこかに晩御飯たべにいく?」
「んー、昨日も外に行ったし、今日は家で食べよ?あっ、サヤちゃんお寿司好きだったよね?今モールだから、持ち帰りでお寿司買って帰ってあげよっか?」
「わーい!お寿司大好き!うん、うん。じゃあ家に帰って先にお風呂とか入っとくね。うん、ありがと〜」
というわけで、お寿司を持ち帰りで買って、自宅でみんなで食べることにした。最近贅沢しすぎじゃないかって思ってるでしょ?そう、ばあちゃんに貰ったボーナスがあるから、今だけは贅沢をするのだ。お金は普段そんなにはないんだけど、心だけは貧しくなりたくない。だから、普段は倹約して、こういう時にみんなで楽しめる時に、使うんだ。
帰ったらサトシはすでに飲んでいた。やっぱこいつ仕事してないな…。
サヤちゃんはお風呂上がりで、リビングでくつろいでいた。
「あ、サヤちゃん。新宿のバス乗り場までは僕が運転して送るから、サヤちゃんも飲むんだったら飲みなよ」
「ほんと?じゃあお言葉に甘えてビールのーもっと!パパ〜、私にもビール取って〜」
「ウチも1本だけ飲もっかな〜、あまり飲みすぎるとたぶん帰りたくなくなっちゃいそやし」
僕とユキちゃん以外はまぁまぁイケる口というのがわかった。
楽しい時間はあっという間に過ぎる。完全に出来上がっているサトシは放置して、サトコちゃんを車で送る。
「ほんま楽しかったわぁ〜、みんなおぉきにな」
「私も楽しかったよ、なんかまた妹が1人増えたみたいな気分♪」
「今度みんなで天川きてなぁ、あまりなんもないとこやけど、ええとこやで〜」
「んー、ゴールデンウイークあたりならまとめて休み取れるかも。そのためにそれまで仕事がんばろっかな!」
「ウチな、なんかこんな同じくらいの歳の友達、いっぱいできたことないねん…なんか、なんか。ええなぁって思ったわ」
僕もそうだ。小さい頃からだいたい孤立していたと思う。サトコちゃんの場合と状況は違うかもしれないけどね。
ふとしたきっかけで、サトシを救って
その何年もあとに、サヤちゃんと再会できて
それからユキちゃんに出会い
天川村でサトコちゃんに出会えた。
「僕も、みんなのおかげで、毎日がすごく、すごく楽しいよ」
バス乗り場に着いた。
「ウチ…あんましんみりするの苦手やから、サクッと元気に帰るわな。シンくん、サヤ姉、ユキちゃん、ほんまありがとうな〜!」
「サトコちゃん、気をつけて帰ってね♪また連絡してね、私も連絡するから」
サトコちゃんを乗せたバスが発車した。サトコちゃんが帰ったあとは、なんか周りが急に静かになった気がした。助手席のサヤちゃんが、
「サトコちゃん、いい子だったね〜」
「うん、そうだね」
「私ももう少し胸大きくなりたいな〜」
サヤちゃん、それを気にしてたんだ。
「え、いやサヤちゃんは、今のままで充分かわいいし、綺麗だよ」
「またまたぁ〜!シンくんったら!」
サヤちゃんの携帯が鳴る。
「んー、なにコウヘイ。うんうん…あっ、そうなんだ?ちょっと待ってね」
スマホを離してからサヤちゃんがこっちを向く。
「コウヘイが、土曜日の晩のライブに急きょ出ることになったんだって。なんかバンド演奏じゃなくて、弾き語りとか、割と静かな演奏のミュージシャンが出るみたいなんだけど、見に行く?」
僕とユキちゃんが声をそろえて
「「行くー!」」
サヤちゃんが笑う。
「だってさ、3枚チケット取っといてよ。あー、それ以外はちょっとわかんないな。私そんな友達いないし。はーい、じゃあねー」
「コウヘイくん、1人でライブに出るって?」
「うんうん、今まで何回か行ったことあるけど、1人で出たこと、確かなかったと思うんだけど、なんかあったのかな〜?」
「わぁ〜、楽しみだね〜、土曜日ってあさってだね」
「うんっ、それまで仕事がんばるぞ〜!」
そして、土曜日。
土曜日だからか、ライブハウスは割と人が多かった。演奏を聴きにというより、飲みにきてる人も多いようだ。聞くと、バンド演奏の時とかは音が大きめなので逆に飲み客は少なく、演奏を聴きに来るという感じになるみたい。
4組出演するうちの、1組が急きょ出演できなくなったらしく、チケットは元々買い取りなので店的には問題ないが、穴が空くところを、コウヘイくんにマスターから声がかかったようだ。
コウヘイくんに声をかけると、少し緊張してるようだった。
「ライブで1人で弾き語りって初めてなんす…ちょっと緊張してるっす…」
コウヘイくんの出番は最後だった。
ギターの弾き語りだったり、ギターと、カホンていう四角い木の箱みたいなのを太鼓みたいに叩いて演奏する楽器と合わせての演奏だったり、普段生演奏を聞くことがないので、すごく新鮮だし、心地よい時間だった。
ついにコウヘイくんの出番。3曲を演奏するみたいだ。1曲目と2曲目はカバー演奏のようだ。今流行ってるポピュラーソングの弾き語りアレンジみたいな感じみたい。緊張している様子は伝わってきたけど、どちらも上手だった。3曲目の前に、コウヘイくんが話す。
「えー、普段バンドで演奏をしていて、こうやって1人で弾き語りをして歌わせていただくのは初めてなんですけど、今回急きょというのもあったんですけど、ある人に背中を押されて、ちょっと勇気出して、歌ってみようかなって、そう思いました」
ん、ある人…
「最後の曲は、俺のオリジナルの曲なんですけど、まだまだ下手くそなんですけど。えー、幸せ連鎖という意味の曲です。俺は、色んな人の優しさでこうやって今頑張れてます。そんな気持ちを歌にしました。聞いてください…Happy Chain」
Happy chain
ほんの少しの優しさで C G
人は幸せになれるんだって Am Em
こんな簡単なこと F G
みんな知ってるよね? F G
電車は端っこが好き C
バスは前のほうが好き Em
そんなワガママ FM7
言ったりしてないかい? G
待つのは嫌い C
ヒトゴミは大嫌い Em
まぁしょうがないよね FM7
でも少し考えてみよう G
自分に起こる嫌なことばかり F G
数えるより Am Em
嬉しかったことを F G
ひとつひとつ数えていけば Am Em
きっと楽しいはず F G
今日は何があるだろうって Am Em F G
ほんの少しの優しさで C G
人は幸せになれるんだって Am Em
ほんとはみんな知ってる F G
ただ少し忘れてただけ F G
今日はひとついいことしよう C G
そして、明日はまたひとつ Am Em
ほんの少しの優しさは F G
いつか大きな幸せになるだろう F G
車の渋滞にイライラして C
雨が降った日は憂鬱 Em
僕にできることといえば FM7
ずっと笑顔でいることぐらい G
普段は恥ずかしくてできないけど F G Am Em
笑顔で挨拶してみよう F G Am Em
それだけで今日一日は F G
びっくりするくらい変わるはず Am Em F G
優しさを示す勇気を C G
みんなが持っていれば Am Em
悲しみの涙はきっと C G
喜びの涙に変わるだろう Am Em
ほんの少しの優しさで C G
人は幸せになれるんだって Am Em
きっかけはちょっとしたこと C G
そう 次は君の番だよ Am Em
1曲目も2曲目も、とても良かったんだけど。3曲目のコウヘイくんのオリジナル曲が、すごくシンプルな曲で、シンプルな歌詞なんだけども、かえってそれが、僕の中にすっと入ってきたんだ。




