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Heart〜生まれつき心の声を聞く能力を持った僕は、神様のまねごとで人との絆を紡いでいく〜  作者: くろくまくん


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祖母と孫と1枚の写真

前の日にサトコが東京まで来てくれて、その歓迎会をみんなでした。盛り上がる中、コウヘイのバンドメンバーが現れ水をさされる。


その翌日。

 次の日の朝。


 前の日がまぁまぁ夜ふかししたので、眠い。でもゴミ出しの仕事の依頼を受けている以上、仕事はちゃんとやらねば。コウヘイくんと待ち合わせて、計20件のお宅のゴミ回収と、それぞれの指定場所へのごみ置きをする。


 今のところは、2人でなんとかやれてるけども、これ以上依頼が増えた場合、前日夜に回収して、どこかに保管して、朝に置きに行く、というほうがいいのかな…そもそもゴミ収集の仕事にしたほうがいいんだろうか。


 8時前にゴミ出しは完了した。ふと、コウヘイくんがこちらを見る。


「ん?どうしたの?」


「あ…シンさん、このあと少し時間ありますか?」


「うん、今日は特にサトシにも何も頼まれてないし、あとでサトコちゃんをお昼くらいに見送るくらいだから大丈夫だよ」


「あ、じゃあマックで朝飯がてらよかったら」


「わかったよ、2人のほうがいいんだよね?」


「あ、はい…できればそのほうがありがたいっす」


 いつものモールのマックに向かう。モバイルオーダーで2人分の注文をした。


「昨日から出してもらってばっかりですんません!ありがとうございます」


「全然いいよ〜このくらい、いつも助けてもらってるし。で、どうしたの?」


「あ、昨日はすんませんでした…ライブハウスの3人組」


「まぁ大事にならなかったからよかったよね。あのうちの1人がサヤちゃんの元カレって話は聞いたよ。コウヘイくんも知ってる人達なのかな?」


「あぁ、知ってるっていうか…あいつらがバンドメンバーなんす…」


「えっ!そうだったんだ。なんか全然メンバーらしくないっていうか、仲良しでもなさそうだったよね」


 コウヘイくんが教えてくれたんだけど、1番背の高いサヤちゃんの元彼がドラム、あとの2人がリードギターと、ベースらしい。ただ、バンドを組んではいるものの、そもそも女にモテたいだけでしてるようなヤツラらしく、スタジオ練習もちゃんとこなかったり、練習にきても酒飲みながらとか、真面目にしないようだ。


「俺も全然上手くないんで、そんな言えないんですけどね、そもそもベースのやつなんか音痴で全く音感なかったり、そこから努力しようともしないんですよね…」


「そういえば、サヤちゃんとドラムの彼はどうやって知り合ったの?」


「あ、サヤさんが俺がバンドしてること知ってたんで、ある日ライブを見に来てくれたんす。その時にドラムのあいつを見て好きになったみたいで。サヤさんから声をかけてそのうち付き合うようになったんすよ」


「へぇー、そうなんだ。でももう今は別れてる?」


「そうです。あいつエイイチって言うんですけど、まぁまぁ女癖悪くて。サヤちゃんと付き合いながらも、ライブ見に来てくれた女の子とかによくちょっかい出してたんす」


「そんなやつだったんだね」


「俺…音楽は続けていきたいんですけど、あいつらみたいなやつとはもうバンドしたくないんす」


「うん、うん。それならコウヘイくん1人で続けていったらいいんじゃない?バンドじゃないとダメってことはないんでしょ?」


「1人で…ですか」


「コウヘイくん、めちゃ歌上手かったじゃん。なんかテレビでもよくある、1人でギター弾きながら歌うやつ、弾き語り?そんな感じでしていけばいいんじゃないかな。そのうち気が合う仲間ができたらまたバンドでしたらいいと思う」


「そう…ですよね。俺、音楽するならバンドで、って変にこだわりすぎてたのかもっす。ちょっと考えてみるっす!」


「うんっ、コウヘイくん頑張ってね!応援してるよ、今度ライブする時、みんなで見に行くから教えてね」


 コウヘイくんと別れて、いったん自宅に戻る。


 サヤちゃんの元カレ、エイイチって言ってたっけ、背も高くてがっしりしてて、強そうだったな。ドラムをしてるくらいだからスタミナもあるんだろうな。僕はケンカどころか、貧弱だし、ひょろひょろだし、楽器も何もできないし、サヤちゃんは僕に好きって言ってくれるけど、ホントはああいうガッチリ系のほうが、好きなのかな。


 僕は、頼りがいがある男になれるんだろうか。


 何かあった時に、大事な人を守れる男になれるんだろうか。


 考えれば考えるほど、みじめになってきた。


 家につくと、もうサヤちゃんは仕事に出ていた。リビングでサトシと、ユキちゃんと、サトコちゃんが、眠そうな顔でパンをかじっている。


「シンくんおかえり〜、どしたの?浮かない顔して」


 サトシはいつもするどい。


「えっ、あぁ、別に何もないですよ~。今日はお父さんのほうは、なにか仕事あるんですか?」


「うんうん、今日は午前中に1件、久しぶりに撮影の仕事が入ってね、お昼からは特に何もないから赤ちょうちんでも行こうかなーと思ってたとこ」


 昼から赤ちょうちんはダメだろ。それにしても、写真の仕事をしてるのを聞くのははじめてかも。普段はウェブ注文で受けたプリントとか、フォトアルバムだとかを作ったり、発送の手続きをしたり、そういうのをユキちゃんとしてる姿がほとんどだった気がする。


「写真撮影の仕事ってなんか珍しいですね〜、なんかお見合い写真とかですか?」


「んーん、ばあちゃんと孫のツーショット写真だよ」


 ん?ばあちゃんと孫、って…


「サトシにも言うたんやけど、ウチ別にばあちゃんとのツーショットなんかいらんのやけどな〜」


 おい、完全に呼び捨て。


「まぁまぁそんなこと言わずに。そういえばサトコちゃん、なんか渡すものあるんじゃないの、ばあちゃんに」


「これはシンくんに見せるために持ってきただけなんやけど」


 ん、なんだろう、持ってきたものって。


「そうそう、昨日来た時にも見せよと思たんやけど、あまりみんなに見せびらかすもんでもないしと思って。これ」


 !!!


「これって、まさか…」


 A4サイズくらいの額に入れられて、写真が入っていた。それはとても見事な滝の写真だった。


「なんかシンくんが神様のお告げやなんや言うてたやん。父ちゃんの荷物とか全然触ってもなかったからあれやったんやけど、1個だけフィルム転がっとったんよ」


「そんで、その写真も見せたくて、こっちにわざわざ来てくれたんだとさ」


「すごい綺麗だ…やっぱあのお父さんすごいんだ…」


「あのお父さんって。ウチの父ちゃんとシンくん前から知り合いやっけ?」


「えっ?あ…いや、サトコちゃんに聞いたからね、お父さんのこと。すごいカメラマンだったんだなー、って」


 天河神社で直接話したとは、さすがに言えない。


「きっと、タケばあちゃんに見せてあげたら喜ぶと思うよ。あ、それじゃこれから撮影をするのかな?僕、その間少し営業に出てこようかな。ユキちゃんも一緒に行かない?」


「え、あっ、そうですね。私も行ってきます」


「えー、シンくんも付き添いしてくれへんの?」


「あー、まだちょっと始めたばかりの仕事だから、安定してなくてね。あ、そうだ、撮影終わったら、お昼ご飯一緒に食べようね」


 なかばユキちゃんを強引に急かしながら、出ていく。


 昨日のご飯の時もそうだったけど、やっぱみんながいる中だとしゃべりにくいこともあるだろう。サトシはともかく。たぶん、ばあちゃんとサトシが2人で話してたのは、今からの撮影のことだったに違いない。


「シンくん、ユキちゃんいってらっしゃーい♪」


 外に出てから、ユキちゃんが口を開く。


「シンくん、シンくん、営業活動ってそんなに大変なんですか?」


「んーん、全然。あ、撮影待ってる間、コーヒーでも飲みにいこう」


「やっぱり、タケばあちゃんと、サトコちゃんを2人にしてあげたかっただけなんですね」


「うんうん、たぶんタケばあちゃんもそんなに長くないし、初めてって言っても、やっぱ孫との時間って、あるほうがいいのかなーと思って」


 今10時くらいだから、1時間か1時間半くらいかな、モールまで出向くにはちょっと時間足りないので、近所の喫茶店に入った。僕はホットコーヒーを、ユキちゃんはアイスレモンティーを頼んだ。


 コウヘイくんと別れたあとに少し考えていたことをユキちゃんに聞いてみた。


「サヤちゃんって、ガッチリ系が好きなのかな〜?」


「えっ、シンくんなんでいきなり?あっ、もしかして…昨日の元カレですか?」


 ユキちゃんはやはり飲み込みが早い。


「うん…性格が最悪だったとしても、顔もカッコよくて、ガッチリしてて、頼りがいのある感じっていうか、男らしいのって、やっぱり女の子はいいのかなって」


「シンくん珍しく後ろ向きですね〜、元カレ登場で少しモヤモヤしてるんですか?」


 いちいちユキちゃんの指摘はするどい。


「こういうのって、サヤちゃん本人には聞けないんだよね〜、もし図星だったら怖いし」


「見た目とか、体格とか、強いとか、弱いとか、そういうのじゃないと思うんだ。これは私がそう思うってだけなんだけどね」


「うん、うん」


「シンくんが、私のこと助けてくれた時、すごく。すごくカッコよかったよ。私、シンくんのことヒーローに見えたもん」


「ヒーローって言いすぎでしょ」


「サヤちゃんのこと、シンくんがとても大事に思ってる気持ちを、もっともっとサヤちゃんにぶつけてみたらいいよ。あ、今の状況で言うと、サヤちゃんがもっと安心できるようにしてあげないと」


「安心…?」


「これ、サヤちゃんからも言われたんじゃない?シンくんは優しいから色んな女の子にモテるの。サトコちゃんとも仲良くなれたからいいけど、それでもシンくんがサトコちゃんとイチャイチャしてたら、やっぱりサヤちゃんは嫌だと思うんだ」


「うん、うん。そうだね」


 年下のユキちゃんに励まされて情けないなー、僕。


「しっかりしてよ!おにーいちゃん♪」


 油断すると、ユキちゃんはツッコんでくる。


「あはは。そろそろ行きましょうか。たぶん撮影も終わってるんじゃないですか?」


「そ、そうだね」


 支払いを済ませて、喫茶店を出る。自宅のマンションの近くに、サトシの会社事務所がある。そこの一室が写真を撮る時のスタジオになっている。着いた頃には、撮影は終わって、3人でお茶を飲んでいた。


 サトコちゃんはパソコンの画面に向かって何か言っている。


「なんなんこの顔!めちゃウケるんやけど〜♪ばあちゃん目ぇないやんか」


 撮影した写真のデータをパソコンに入れて、見ていたようだ。お茶を飲んでるばあちゃんのそばには、サトコちゃんが持ってきていた、トオルさんの撮影した写真が置かれていた。


「おぉ、シンくんユキちゃんおかえり〜、ちょうどさっき終わったとこだよ〜」


「シンくん見てぇな、このひどい顔。なんかな、サトシが笑かそうとしておもんないダジャレ言うんやけど、逆に笑えへんてやつやで、ほんま」


 言いたい放題である。後ろから少し見させてもらった、ばあちゃんとサトコちゃんの顔は、心なしかとてもよく似ていた。


「あっ、サトコちゃん、また写真プリントしたら送るから、天川の住所教えといてよ」


「うんっ、わかった〜。あ、今日お昼に帰るって言うとったんやけど、サヤ姉と会ってからで夜行バスで帰ることにしたわ」


「うんうん、わかったよ。じゃあみんなでお昼食べにいく?」


「あっ、なんかばあちゃんがさっき言うとったんやけど、美味しい蕎麦屋さんがあるねんて。ウチ蕎麦好きやからそこ行きたいな〜」


 結構しゃべってるじゃん。まぁ無理に仲良くする必要はない。でも少しでも繋がっていれば、何かあった時でも、その人のことを考えれるよね。


 というわけで、タケばあちゃん、サトシ、ユキちゃん、サトコちゃんと僕の5人でお蕎麦を食べた。

チェーンじゃない個人でやってるとこだったんだけど、店構えはお世辞にも綺麗とは言えなかったんだけど、蕎麦は美味しかった。僕はすだち蕎麦というすだちの輪切りがいっぱい乗ってある、冷たいお蕎麦を食べた。


 そのあと、ばあちゃんは家に、サトシは会社に戻って、ユキちゃんとサトコちゃんと僕の3人でモールの方にぶらぶらしに行った。

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