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Heart〜生まれつき心の声を聞く能力を持った僕は、神様のまねごとで人との絆を紡いでいく〜  作者: くろくまくん


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天河神社でこんにちは

サトコちゃんに教えてもらった天河神社に到着し、その直後に何か不思議な感覚になるシン。


これは何かの前ぶれなのか。

 嫌な感じではなく、周りの空気がすっと澄んでいくような、そんな感じ。


 ふと思いついて、タケばあちゃんから預かった、写真を取り出す。触ってみるとほんのり温かい。これって僕のアルバムを見た時もこんな感じだったような…


‐サトコ、ほんますまんかったなぁ〜なんもしてやれんで…


 男の人の声が聞こえる。


‐俺が好き勝手してきたせいで、アイツにも、サトコにも辛い思いばっかりさせてしもた


『トオルさん…ですか?』


‐えっ、俺の声聞こえるんかい?


 もし、アルバムの時と同じく、モノに宿った思念が聞こえているだけなら、僕の返事は関係ないはずだった。これは、もしかして…


『はい、聞こえてますよー。トオルさんって、もしかしてまだ生きてます?』


 会話ができると言うことはそうなんじゃないかと思ったのだ。


‐あっ、ちゃんと死んでるで〜!崖から落ちて


 やっぱり死んでるんかーい!


‐死んでるんやけどな、たまにこの神社に、サトコがどうしてるかなーって見にくるんや


 あら、それは便利だね。


『そうなんですね。てっきり行方不明なだけで生きてるのかと思ってしまいましたよ。あ、昨日サトコちゃんに会いましたよー。というかお世話になってますよ』


‐えっ、そりゃほんまかいな。死んでから何回か来たんやけど、ここのぐるりしか様子わからんで、1回もサトコには会えずじまいやったんや


『まぁ普通は会えないですよね。あ、サトコちゃんは、お父さんのことわかろうと努力しようとしてたみたいで、でもお母さんが出ていってしまったことに関しては、ちょっと責めてるかんじでしたね…』


‐まぁ、俺写真のことばっかりで、なんもしてやれんかったもんな…あ、でも兄ちゃんにだけ言うんやけどな。女房は俺に愛想をつかして出ていったんやないねん

 

『えっ、そうなの?』


‐これはくれぐれもサトコにも誰にも言わんといてほしいんやけどな。女房はこっそり浮気をしてたんよ。もちろんそれは俺のせいでもあるんやけど。で、今はどうしてるかはわからんけど、出ていった時は、その男のとこに行ったんや


『えっ!じゃあサトコちゃんはものすごい勘違いをしてるんじゃないんですか?』


‐まぁそういうことになるなぁ〜、でもなわざとそうしてたんもあるんや。サトコに女房のことを憎んでほしなかったんや。俺はいくらでも憎まれてもいい。その憎しみが生きる活力になるならって思ってな。て、言うてる間に死んでしもたんやけどな〜、あはは


『いや、笑い事じゃないでしょ。まぁ…でもそういう事情なら、言わないでおきますね。またちょくちょくこっちに来ることあると思うんですけど、ここにも来ましょうか?サトコちゃん連れて』


‐いやー、ええわええわ。サトコが元気に暮らしてるんなら、それがわかっただけでええかな。それにどっちにしても、俺もいつまでもここに来れるわけちゃうし


『へー、なんか期限があったりするんですか?』


‐まぁ簡単に言うと、俺のことを、この世の人が綺麗さっぱり忘れてしまった時には、俺はこれんくなる。今割としっかりこれてるのは、サトコのおかげちゃうかな


『へぇ〜、そんな霊界ルールみたいなんがあるんですね〜。あ、それとなくサトコちゃんに伝えといてほしいことってあります?』


‐んー、特にないんやけどな…あっ!ひとつだけ。もし残ってたらなんやけど、家に置いてた俺の荷物の中に、カメラのフィルムがあるんよ、確か。捨ててへんかったらでいいんやけど、それを現像しといてほしいかな。めっちゃよ〜撮れたんよ、すっごい滝なんやけどな!


 サトコちゃんが怒るのもうなずけた、完全に写真バカだ。まぁそのくらいのことは上手く伝えておくか。


『わかりました、でも…たぶんサトコちゃん荷物とかは全部捨ててそうですけどね〜』


‐それやったらそれで全然ええわ。あればってだけやから、あ、あともう一つ


『はじめにひとつだけ、って言ってましたよね…』


‐まぁまぁええやんか。兄ちゃん、サトコのことをよろしゅうな。あいつ気ぃ強いし、なかなか弱いとこ出さんのやけど、ほんまはすっごい弱虫やねん、やからなんかあったら支えたってほしいねん


『あ、えーと、サトコちゃんとお付き合いしてるわけじゃないんですけど…』


‐ええ、そんな照れ隠しせんでも、大丈夫やで。というわけで眠なってきたから帰るわな、ほなさいなら〜


 まぁまぁ勝手なオヤジだ…まぁいいか。サトコちゃんには聞かれていないから2つ目のことはスルーしておこう。


 それにしても、神社は昔からあまり好きじゃなかったんだけど、今回は面白かったな。面白いというとバチが当たりそうだけど。たぶん僕の予想では、僕のこの能力と、神社に宿る神様の力みたいなものが合わさって、トオルさんと会話ができたような気がする。てか、いつでも死んだ人の声聞こえるようになったら、それはそれで嫌だよね。


 今からゆっくり歩いて帰って、少し休憩してから、サトコちゃんと一緒に帰る前に、ジェラート屋さんに行こうかな。



 そして、夕方。



「シンくんおつかれさーん、ウチおらんくて寂しかったやろ?」


「サトコちゃんおつかれさま〜。う、うんうん、そうだね。温泉と、向かいの神社も行ってきたよ、駅まで送ってもらう前に、あのジェラート屋さんでアイス食べない?」


「わぁ〜、ちょうどアイス食べたいと思っとってん。シンくんやっぱりウチと相性合うな〜、運命感じるわ〜」


 そんなことで運命感じられたら、すごい運命って軽そう。でも、かわいらしいから許す。


 ジェラート屋さんで、アイスを食べて、それから荷物を積みこんで、車で駅まで送ってもらう。車だとバスと違ってノンストップだから、30分くらいで着くみたいだ。今が17時だから、大阪の22時発のバスだと時間も余裕がある。

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