天川村観光
サトコちゃんの働く旅館でお昼をいただくシン。
天川村の自然の綺麗さや、食べ物の美味しさ、雰囲気に感動する。
サトコちゃんの働いている旅館を出て、はじめバスを降りたとこに見えた、テラス席のあるオシャレなカフェに行って、コーヒーを飲むことにした。
「ウチはコーヒー苦手やから、ミックスジュースにするわ」
ホットコーヒーとミックスジュースを頼む。飲み物の他にもおにぎりとか、軽食も出しているみたいだ。
さっき少し気になったことをサトコちゃんに聞いてみた。
「サトコちゃん。ごめんね、こんなによくしてもらってて嫌なことを聞くかもしれないんだけど、トオルさんって、もしかしてサトコちゃんのお父さんなのかな?」
ミックスジュースを飲んで嬉しい顔をしていたサトコちゃんの顔が苦い顔になった。
「な、なんで急にそんなこと言うん。そんなやつ知らんって言うたやろ。探すのに協力せっかくしたってるのに、あまりしつこいともう知らんで!」
「そっか…わかったよ。あ、そういえばここに、お酒とかお菓子とかお土産を買えるお店ってあるかな?明日になってバタバタしてしまったらあれだから、買えそうなら今日のうちにお土産買っとこうかなーと思って」
サトコちゃんの顔がいつもの可愛い顔に戻った。
「あっ、うんうん、さっきのジェラート屋さんあるやろ?あっこの川向かいに、コンビニっていうか、食品とか生活品とか、ちょこっとお土産も売ってるとこがあるでー、お土産やったらそこで買ったらいいんちゃうかな」
「ありがとうね、少しゆっくりしたら見に行こうかな」
「あ、あのな。今日の夜、もしいい天気やったらなんやけど、ええもん見したるから、晩ごはん食べて、そのあとくらいに出かけるで」
なんだろう?でもなんか楽しみにしとこう。
サトコちゃんの教えてくれた商店で、おいしい水と米で作った日本酒と、お菓子をいくつか買った。旅行じゃないっつうの。まぁでもなんかお土産があったほうがみんな喜ぶよね。
晩ごはんも、サトコちゃんの旅館でいただくことにした。旅館はおかみさんと、その旦那さんが料理長で、合計10人くらいで運営をしているみたい。小さい民泊とか旅館はほとんど、1人とか2人でやってることが多いそうだ、大変だな。
晩ごはんは炊き込みご飯と、焼き魚と、漬物とお味噌汁。すごくシンプルなんだけど、これもまたいちいち全部が美味しかった。
「こんなおいしいもの食べたら、もう他のもの食べれなくなっちゃいますね〜」
「そやろ〜、もういっそのこと、村に住んだらいいねん。毎日おいしいもの食べれるで♪」
それもいいのかもと、一瞬思ってしまった。でも、そのくらいこの村は素晴らしい。ご飯代は僕とサトコちゃんの分を支払ったんだけど、きっと従業員価格にしてくれたと思う、すごく安かった。こういう心遣いがありがたい。
晩ごはんを食べてから、少しの間、旅館の従業員用のあてがってくれた部屋で休憩をすることになった。サトコちゃんも出かける前に身支度するみたいで30分後に旅館の入り口で待ち合わせることになった。休憩してる間に、そろそろ仕事終わってると思って、サヤちゃんに電話をかける。
「サヤちゃん、おつかれさま〜、今帰りかな?」
「シンくんおつかれさま、うんうん今帰りだよ、依頼の方はどんな感じ?」
「うーん、タケばあちゃんの息子さん本人はいないんだけど、もう少しで情報を掴めそうかな、っていう感じかなー。あ、小さい村なんだけど、すごく景色が綺麗で、水も料理もおいしくて、今度サヤちゃんと一緒に行ってみたいなって思ってたよ」
「わぁ〜、そうなんだ。なかなか遠いから大変そうだけど、いつか行ってみたいな〜。あっ、シンくん可愛い女の子とかに誘惑されたりとかしてないでしょーね!」
「えっ、あぁ…うん。もちろん全然大丈夫だよ〜、今晩は泊まらせてもらって、明日の夜の夜行バスでそっちに帰れたらいいなと思ってるよ」
「わかったよ、またどうなるかわかったら連絡してね。シンくんおつかれさま」
そろそろ時間なので、旅館の入り口のほうに向かう。サトコちゃんは早めにきて待ってたみたいだ。
「ごめんごめん、遅くなって」
「んーん、かまへんよ〜、部屋におったら眠くなりそうやから出てきただけやねん。そろそろ日も暮れてきたし、いこっか〜」
車で走りながらサトコちゃんと話す。
「山のほうやからまだ夜はちょっと寒いんやけどな、でも寒いほうが綺麗に見えるんよ」
「そうなんだね〜、何が見えるか楽しみだなー」
「ほんまはこの村どこにおっても見えるんやけど、やっぱお店の明かりとかね、家のあかりとかないほうが、さらにすごいから、ちょこっとだけ走った、みたらい渓谷っていうとこがあるんやけど、そのあたりの上の方に向かってるで」
10分くらいして、車が停まった。
「さぁ、ついたで」
サトコちゃんがおりて、まだ車のエンジンは切らずに、指を差しながら言う。
「シンくん、あのあたり、ウチが差してるとこらへんに寝ころんで。寝ころんだほうがいいから」
へ。普通に地面なんだけど、大丈夫なのか。
しかも寝転ぶって。まぁでもサトコちゃんの指示に従って、寝転ぶ。
「おっけー?んでね、10秒くらい目を閉じて、ウチがええで、って言うまでそのままおってな」
いよいよ、よくわからなくなってきたぞ。もうでもここまで来たら従うしかないか。
「はーい、目閉じたよー」
「おっけー、じゃあウチもそっちに行くから、待ってな〜」
車のエンジンが止まった。
「いーち。にーい。さーん」
サトコちゃんが近づいてくる足音と数を数える声が聞こえる。
「よーん。ごーお。ろーく」
サトコちゃんが寝転ぶような気配がした。
「なーな。もうええか、シンくん目ぇ開けていいよ〜♪」
ゆっくり目を開ける。
「!!!」
わぁ、とか、おぉっ、とか。そういう声も出ない。
というか、出せないくらいのすごい映像が目の前に広がっていた。
数え切れないくらいの星…ていう表現もできないくらいの星々が目の前に。天の川っていうのか、なんか星が川みたいに流れている。ホントに天の川ってあったんだ…
すごく綺麗だ…




