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Heart〜生まれつき心の声を聞く能力を持った僕は、神様のまねごとで人との絆を紡いでいく〜  作者: くろくまくん


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22/54

その日を共に祝う

ユキとサヤとの修羅場の中、


またもやサトシにアドバイスを乞うシン。


シンはサヤと仲直りできるのか。


そして、秘密の会話の内容は…?

 そんなわけで土曜日の夕方。僕は早めに仕事を切り上げ、自宅でサヤちゃんの帰りを待っている。


「ただいま〜!あれ、シンくんだけ?」


「サヤちゃんおかえり。あ、うんうん、お父さんとユキちゃんはなんかまだ仕事が残ってるみたいだよ、今日1日おつかれさま」


「あ、そうなんだね〜、シンくんもおつかれさま」


 サヤちゃんは、あれからまだ少しぎこちない感じだ。そりゃ仕方ないよね。全部僕のせいだ。


「サヤちゃん、少しだけ2人で話したいんだけどいい?ごめんね、仕事帰ってきて疲れてるのに」


「え、ううん、いいよ〜。話ってなーに?」


「この前のこと、きちんと謝りたくて…」


 サヤちゃんの顔が曇る。


「うん。もう…それはいいよ…」


「ううん、きちんと僕の気持ちというか、お互い思ってることを話さないままだと、ダメだと思うんだ」


「シンくんはずるいよね…私そんな話聞きたくないよ。余計に私がみじめになっちゃう…」


「サヤちゃん、たぶん…というかきっと。あの時のことサヤちゃん誤解してると思うんだよ。あの時マックで休憩してたのは、仕事中にたまたまユキちゃんと会って、仕事終わりに少し休憩しよっか、ってなった流れでモールに行ってただけなんだよ」


 サヤちゃんは疑わしげな顔をして言う。


「ふーん…たまたま会って、たまたま行ったモールのマックで、たまたまイチャついてたの?」


「いや、そのことなんだけどね、ユキちゃんにもあのあとちゃんと話したんだけども、妹みたいってサヤちゃんにも言ってたことあったでしょ?それをユキちゃんも、僕とかサヤちゃんのこと、お兄ちゃんお姉ちゃんて感じで思ってくれてるみたいで。その延長の悪ふざけみたいな感じだったみたいなんだ」


「そうなんだ…これからもその悪ふざけは続くの?」


 サヤちゃんの返事は厳しい。


「ううん、そんなことはないよ。正直に言うと、ユキちゃんのことかわいいと思ってるし、妹みたいな感じには思う。でも、女の人として恋愛感情というのはないし、これからもそれはないよ。サヤちゃんに嫌な思いさせてごめんね」


「信じれないよ…去年も同じようなこと言ってたのに。シンくんはね、めちゃくちゃ優しいんだ。その優しさが私は好きなんだけど、その優しさが辛くもあるんだよ」


 そうだよな…サヤちゃんの言うことももっともだ。


「うん。そうだよね。サヤちゃんにしたら、誰にでも優しく接したり、親しくしたりしたら、嫌な気持ちになるよね」


 いや、これは素直な言葉じゃないな。もっと自分に素直にならないと。


「サヤちゃん、少しだけこっちに来てもらってもいい?」


「えっ…」


 少し強引にだけど、サヤちゃんを自分のほうに引き寄せて、両手で抱きしめた。


「僕は、サヤちゃんのことを、1番大事に思ってる。ごめんね、嫌な思いさせてしまって。ほんとに悪かったと思ってる」


「うん…」


「頼りない僕だけど、まだまだダメなことばかりの僕だけど、すごく尊敬してるサヤちゃんみたいに、僕もちゃんと頑張れたらって思うよ。サヤちゃんに心配かけてばかりにならないように頑張るよ」


「がんばらなくても、いい」


「えっ?」


サヤちゃんの体が震えてる気がした。


「頼りなくても、ダメダメでも、心配かけてばかりでもいい。私のことずっと見てくれるシンくんなら。どんなシンくんでも私は好き」


「うん、うん。ずっと見てる」


「ユキちゃんの方を見ちゃだめ!ほかの女の人も見ちゃダメ!私だけを見ててほしい!私だけを抱きしめてほしい!」


「うん。そうするよ。不安にさせてごめんね。ほんとにごめんね」


 サヤちゃんを抱きしめる腕に少し力をこめた。


「私、めちゃくちゃヤキモチ焼きで、すごく嫌な女なの。そのくせ素直になれなくて、シンくんのこと大好きなのに、嫌な言葉を出してしまうの。4日前のあの時も、マック投げつけるだけじゃなくて、ほんとはぶっ飛ばしてやりたかった!」


「うん、うん。ほんとごめんね。嫌だったよね。ぶっ飛ばされても仕方ないよね」


「もう!もっと言い訳してよ!シンくんも怒ってよ!そんな優しくするから、みんなシンくんのこと好きになっちゃうんだよ」


「大丈夫だよ。これからはサヤちゃんのことだけずっと見てるよ。もう誰にも目に入らない。サヤちゃんのことだけ、ずっと大事にするよ」


 サヤちゃんが体を震わせて泣いた。サトシが教えてくれた通り、サヤちゃんはとても不器用で、そして、とても一途なんだ。


「サヤちゃん。愛してる」


「シンくん!シンくんシンくんシンくん!」


「なぁに?サヤちゃん」


「私もずっとずっと前からあいしてる」


 ずっとずっと前…?再会したのは最近のような。でも、今はそんなことはいい。


「うん、ありがとうねサヤちゃん。大好きだよ。これからも仲良しでいようね」


「うん。ずっと仲良くする」


 よし、今だ。携帯でサトシに合図を送る。


「サヤちゃん、あのね、実はサヤちゃんに見せたいものがあって」


「ん…なに?見せたいものって」


 部屋の電気を消す。


「えっ、え、どうしたの?急に電気消して」


「ぱぱぱぱーーん!ぱぱぱぱーーん!ぱぱぱぱ、ぱぱぱぱ、ぱぱぱぱ、ぱぱぱぱ」


 え、なんか嫌な予感。この歌声はサトシである。


「あーいらーーびゅう〜、ふぉーえーばー♪」


「おいっ!それ結婚式のやつ!」

「まさか、結婚式!!」


 僕とサヤちゃんが同時につっこむ。


「あれ、間違えた。じゃあ仕切り直して…はっぴばーすでーい、つ〜ゆ〜♪」


 ユキちゃんも出てきた。


「はっぴばーすで〜、とぅー、ゆぅ〜♪」


「えっ!」


 僕も加えて、3人で歌う。


「はっぴ、ばーすで〜〜い、でぃあ、サヤちゃ〜〜ん♪はっぴ、ばーすで〜い、つ〜〜ゆ〜〜♪」


 暗闇の中、サトシとユキちゃんが、ロウソクの火が灯るバースデーケーキを運んできた。


「パパ!ユキちゃん!」


「はいっ、ロウソクふーして、ふぅ〜して!」


 びっくりしながらも、サヤちゃんがロウソクの火に息を吹きかける。


「サヤちゃん、誕生日おめでと〜!!」


「えっ、えっ、これってはじめからみんなで計画してたの??めちゃびっくりしたよ〜」


「うん、そうだよサヤちゃん。あ、でもお父さんの歌は、完全にアドリブだと思う。結婚式はちょっと早まりすぎだよね」


「いやぁ、なんかサヤが結婚して、シンくんと一緒になる夢をみてしまってね〜、自然に歌がそれになってしまったみたいなんだよ」


「お父さん、完全にワザとでしたよね」


「あはは。でも、嬉しいよ、なんか誕生日のお祝いなんて久しぶりな気がする。てか、シンくんずるーい!こんなサプライズあるなら先に言ってくれたらよかったのに〜」


「いやいや、先に言っちゃうとサプライズにならないでしょ。それにね。サヤちゃんと2人でしっかり話してからにしたかったんだ。2人できっちり話して、ちゃんと仲直りしてから、お祝いしたいです、ってお父さんにお願いしてたんだよ」


「シンくん…大好き!」


「あ、えーと、これ大したもんじゃないんだけどね、サヤちゃんにプレゼントだよ」


 小さな包みを渡す。


「えっ!プレゼント!?ありがとう…わぁっ、かわいいピアス♪」


小さなハートの形に、石がはめ込まれたピアスだった。


「うんうん、サヤちゃんに似合うかなと思って、一生懸命選んだよ」


「ありがとう!ありがとう、シンくん」


 ユキちゃんがもじもじしながら言う。


「サヤちゃん今回はごめんね、私、ただ妹みたいに甘えたかっただけなの。サヤちゃんのこと傷つけちゃって、私最低だよね…ごめんなさい!」


「ううん、ユキちゃん大丈夫だよ。私もユキちゃんの立場なら同じことしてたかもだもん…あっ、でもね」


「うん」


「私、ユキちゃんより年上だし、賢くないし、要領も良くないし、ワガママだし、可愛げないし、ダメダメなんだけど…」


「ううん、ううん…」


「それでもね、シンくんはユキちゃんには渡しませーん!私専用のシンくんなので、そこんとこよろしくね!」


ユキちゃんが笑顔になる。


「うんっ、ありがとう。うんっ、大丈夫。あっ!でも…私も負けません!」


「なぬっ!」


ユキちゃん、それは今はダメだね〜。


「あー!サヤちゃんもユキちゃんも、さぁみんなでお祝いしようね!ほらほらお父さんも」


「サヤ、ごめんなぁ〜、ほんとはシンくんと2人でお祝いでもいいのかなと思ったんだけど、やっぱりお祝いはみんなで賑やかなほうがいいかなぁと思ってな」


「ううん、パパもありがとうね♪」


 よかった。サヤちゃんが喜んでくれてよかった。それにきちんと話せてよかった。みんなで、お祝いできてよかった。


「これからもずっと一緒に暮らせたらいいね」


「うんっ、暮らしたい」


「はいっ、私も暮らしたいです♪」


「えぇ〜、ユキちゃんはどうしよっかな〜!ストーカーされないくらいの年齢になったら、卒業かなぁ〜」


「え〜、サヤちゃん冷たい!私も一緒にいたい〜」


 みんなでなるべく長く一緒にいれるように、そうあれるようにがんばろう。僕にできることは少ないけども、できるだけがんばろう。それがみんなへの僕からの恩返しだから。



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― 新着の感想 ―
妹なの隠す方向なんですね。 隠さなくてもいいのに。 ( ・∇・) しかし、物理系の仕事に違和感が残るエスパー主人公ですね。
ふぅ~、どうにか修羅場回避てすね。 ヒヤヒヤしました。 (^~^;)ゞ サヤちゃんは妬きもち焼きですよね〜。 お義父さんがややフライングしてましたけど、さっさと結婚してしまうべきかとw (*´ω`*…
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