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Heart〜生まれつき心の声を聞く能力を持った僕は、神様のまねごとで人との絆を紡いでいく〜  作者: くろくまくん


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恋愛相談所サトシ

ユキのカミングアウトをモールで詳しく聞いていて、


急に抱きついてきたユキ。


しかもその現場をサヤに見られてしまう。

「あ、あ、サヤちゃん、これは違うんだ」


「サヤちゃんおつかれさまです。あ、たまたまシンくんと仕事の途中で会って、仕事あがりに休憩してたんです」


 ユキちゃんは僕にくっついた姿勢のまま答える。


「仕事あがりに休憩で、イチャイチャってするもんなんだ。へぇー…」


「シンくんにお兄ちゃんごっこしてもらってたんです♪」


 ユキちゃん、それはまずいだろ…


「あ、サヤちゃんこのチラシ。めちゃ助かったよ!作るの大変だったでしょ?」


 会話を変えようとチラシのお礼をする。


「あぁ、全然いいよ。私が勝手にしただけだし。それよりいい加減離れたら?」


「う、うん。僕もそう思う…ユキちゃん、そろそろ」


「えー、ダメです。あと5分はお願いします♪」


 ユキちゃん、なかなかの鬼だ…これはまずい。


「住むところとか、仕事の都合までしてもらって、やることかよ…」


 サヤちゃんの顔が青ざめていく。


「あ、いや…そんなつもりじゃ…」


「勝手にやってろよ!!」


 そう言って、手に持っていたポテナゲと飲み物が乗ったトレイごと、僕のほうにぶつけてきた。

サヤちゃんはそのまま走っていってしまった。


「サヤちゃん!」


「あーあ、びしゃびしゃになっちゃいましたね」


「ユキちゃん!ちょっとふざけるのも度が過ぎるよ!」


 思ってたより強く言ってしまった。ユキちゃんは途端にびくっとなって、顔もこわばる。


「あ…ごめん。強く言うつもりはなかったんだけど…でもサヤちゃんにしたら気分良くないよ。ちゃんと謝ろ?」


「あ、はい…ごめんなさい。私も調子に乗りすぎました…」


 その日、サヤちゃんは1言も口を聞いてくれなかった。そりゃそうだよな…。


 それからのユキちゃんは、今まで通りのユキちゃんに戻った。あの時のユキちゃんはなんだったのかなと思うくらい。もしかしたら、ユキちゃんはすごく感情を制御するのも上手なのかもしれない。


 サヤちゃんは次の日も何も言わずに仕事に行った。ちょっと申し訳ないけども、こんな時のサトシ頼みだ。


「えーと…お父さん。今日ひととおり仕事済ましてからか、遅くなってもいいので2人で話したいんですけど、時間作れますか?」


「おっ、まだまだ寒いしおでんいっとく?俺は今日は外には出ないし、17時くらいからならいつでも大丈夫だよ〜」


「ありがとうございます。じゃあ17時に、いつもの赤ちょうちんのところで。もし遅くなりそうな場合、連絡しますね」


「はいよ〜、今日も頑張っていってらっしゃい」


 今日は火曜日なのでゴミ出しの依頼はないのだが、前に思いついたことがあるので、ゴミ出しのばあちゃん(竹ばあちゃんというみたい)の住んでるあたりに向かう。


 前にも少し思ってた、ゴミ出しの依頼は1件1件の単価は安いんだけども、同じエリアで、複数のゴミ出し依頼を受けれた場合、1回のゴミ出しは単価500円で安いとしても、週2回で1000円、それが1ヶ月になると4000円、さらにゴミ出し依頼がもし増えた場合、10件になると4000×10で、ただ週2回、10件のお家のゴミ出しをするだけで、月40000円になるわけだ。あと、金額の問題だけでなくて、こういうことを通じて、住民の人と繋がりができたり、そういうこともある。


「タケばあちゃんおはよー、元気ー?」


「年寄りに元気かどうかあまり聞くもんじゃないで!こんな干からびた年寄りが元気なわけないさね」


 いや、充分元気だと思うが…


「タケばあちゃん、前にも聞いてたんだけど、ゴミ出し困ってるお家って、ばあちゃんち以外にもいそうかなー?」


「んー、どうやったかいのう…いくつか聞いた気もするけど、忘れてしもたわ。まぁお茶でも飲んできな、ようかんもあるで」


「はいっ、せっかくなんでいただきます」


 たまたま商店街で声をかけてくれたばあちゃん、あ、名前は竹子だからタケばあちゃんと言うんだけどね、ゴミ出しの依頼を受けた縁で、というか商店街でチラシ配りとかしてたらまぁまぁしょっちゅう会うんだ。そんなわけでヒマな時は話し相手をしてたりする。もちろんこれはボランティアだよ。


「ばあちゃん、女の子ってさ、たまに何を考えてるかわからない時あるよねー?」


「ほっほっほー、何を考えてるかわからんのは、おなごだけでなくて、人間みんなだわな。裏表があって当然なんやけども、それがわかりにくいから、争いも起きるし、ややこしいんだわ」


 なんかよくわからんけど、的を射てるようなこともたまには言うよな。


「そういえば、ばあちゃんは旦那さんはいたの?」


「もちろんいたよ〜。もう随分前に死んだけどねぇ。めちゃくちゃ男前だったよ、あー、兄ちゃんに少し似てるかもやなぁ〜」


「へ、へぇ〜、そうだったんだ。あ、じゃあそろそろ仕事してくるよ。お茶ごちそうさま、またなんかあったら教えてね」


 実際ばあちゃんとこで、油売ってるわけにもいかないので、そのあたりで、仕事の営業に回ることにする。さっき言ってたゴミ出し依頼や、他にも掃除、探し物、困ったことがないかなど、仕事にすぐ繋がらなかったとしても、色々話したり聞くだけでも何もないよりはいい。


 結局この日はゴミ出しの依頼を3件、ばあちゃんとこと合わせると4件で月額16000円になる。それと、庭の草むしりの仕事と、家の掃除、を受けた。


 仕事を依頼受けた分は、きちんとスケジュール管理をしとかないと、依頼受けたわ、忘れてしまったでは、信用も何もないもんね。一応なんだけど、朝のゴミ出しに関しては、前の日の晩に、明日の朝に行きますね、っていう確認の電話をいれるようにしている。自分がもし頼むとしたら、そうやって気にしてくれてるほうが、嬉しいんじゃないかなって思って。


 そうやってなんやかんやしてるうちに、17時前になった。集中していると時間って早く過ぎるもんだよね。一応サトシに連絡をいれる。


「シンくんおつかれ〜、もう赤ちょうちんでお先に飲んでるよ〜」


 ホントにこの人、仕事ちゃんとしてるのか…


「おつかれさまです。はーい、そろそろ向かいますね」


 おでんの屋台は、冬以外は何をするんだろうな…そんなことを考えながら、赤ちょうちんの屋台に向かう。


「おーい!17時過ぎてるよ〜、遅刻遅刻!」


「あっ、はい〜、おつかれさまです」


「大将熱燗おかわりと、シンくんにも適当におでんいれたげてね」


 サトシには、僕の父親と、ユキちゃんのお母さんの話は伏せたままで、それ以外の話をした。なんていうか…さすがに不倫の話は話せないと思ったのだ。


「シンくん相変わらずモテるね〜!サヤだけじゃ物足りず、ユキちゃんにまで…やるな〜!」


「いや、そういうのじゃないんですよ。僕も困ってて…なんていうか、ユキちゃんはかわいいし、妹みたいに思ってることは間違いないんですけど、サヤちゃんのことを大事に思ってる、その気持ちとは違うっていうか…」


「うんうん…まぁそうだね〜。あ、シンくん、魔性の女、ってわかるかい?」


「魔性の女…?」


「ウブなシンくんにはあまり聞き慣れない言葉かもしれないけども。まぁ簡単に言うと男をもて遊ぶような、危険な女のことだね〜。簡単に言うと、ユキちゃんは魔性の女だね。あ、これはユキちゃんのことを悪く言ってるわけじゃなくてね。きっとユキちゃんは狙ってそうしてるんじゃないと思うんだけど、知らず知らずで、そういう態度をしてしまってる、という感じだね」


「はい、なんとなくそれはわかるような…」


「サヤの場合、俺が言うのもなんなんだけど、すごいド直球な子なんだよ。色々なテクニックとか、駆け引きみたいなものはできなくて、でも、そのかわりものすごく一途なんだ。どっちがいい、っていう問題でもないんだけど、だいたい平均的なことで言うと、モテるのはユキちゃんタイプなんだ」


 うんうん、それはなんとなくわかる。


「去年の年末の時も一度アドバイスしたかもだけど、女心って難しいようなんだけど、意外と単純なんだよ。それは男もそうなんだけど、思っている気持ちを、素直に、正直にぶつける。結局のところそれだけだよ」


「はい…最近なかなかゆっくり話もできてなかったかもしれないです」


「うんうん、そうだよね。こういう時はとことんまで話す。それが1番だよ。あ、それとついでにいい情報も教えてあげよう」


「いい情報ってなんなんですか」


「まぁまぁ…サヤのね、あれがね、これでね。こうこうこういうわけでね…ゴニョゴニョ」


 そうだったのか…それはいいタイミングな気がする。


「え、それって今週末ですよね?ちょうど。あー、もしいけそうなら、お父さんにもちょっと協力してもらってもいいですか?土曜日にね、こうやってね、そんで、そのあとこうこうで…」


「おー!いいじゃんそれ。実は最近そういうのも全然してなかったから、たまにはいいかも。じゃあまぁそっちの準備はシンくんに任すから、こっちの準備は任せといて」


「ありがとうございます、よろしくお願いします」


 それがあれで、ってなんなんだ、って感じなんだけども、これはちょっと今は秘密なので言えない。


 色々と、ほんとに色々あるけど。できればサヤちゃんと仲直りしたい。そして、また元通り仲良くお話したい。


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