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Heart〜生まれつき心の声を聞く能力を持った僕は、神様のまねごとで人との絆を紡いでいく〜  作者: くろくまくん


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プロフェッショナル、サトシの流儀

新年早々、何年もやってきた仕事をクビになったシン。


代わりの仕事を探すが、どれも上手くいかない。


最後の頼みの綱、サトシに相談をしてみることにしたが…

 困った時の神頼み。サトシをいつもの赤ちょうちんに呼ぶ。


「というわけなんですよね〜、色々してみたんですけど、簡単な仕事も続かなくて…」


「うーん、そうだね〜…仕事っていうのは簡単なようで意外と難しいんだよね。それも人生の大半を人は仕事をして費やしている。これはね、もちろんお金を稼ぐっていう目的もあるんだけども、1番はなんだと思う?」


「え、お金を稼ぐ以外に仕事する目的ってあるんですかね…暇つぶしとかですか?」


「あ、大将、熱燗おかわり〜、それと餅巾着ちょうだい。シンくんはまだまだ青いな〜。まぁまだ若いもんね。仕事をする意味とは。これはね、社会というか、誰かの役に立ちたい、必要とされたいという欲求が、人間の根幹にあるからなんだよ。自分がいてもいなくてもどっちでもいい存在だった場合。誰かに頼られていたり、シンくんがいてくれると助かるし、ありがたいな、って思ってくれる人がいる場合。どっちがいいと思う?」


 うーん、僕の場合はあまり人と関わらず生きてきたほうだからなんとも言えないんだけど…でも、サヤちゃんやユキちゃん、サトシとの関わりはとても温かくて、僕にとってかけがえのないものになっているのは間違いない。


「誰かに必要とされてる、っていうのはとても大事だと思います」


「だよね。だからお金を稼ぐという目的もありつつ、実は大事なのはそこだったりするんだよ。いくら給料が良くても、誰にも必要とされてなかったり、役にも立たない仕事は、なかなか続かないし、精神的にやられてしまうんだ」


「なるほど。お父さんは、僕にあってる仕事ってなんだと思います?」


 サトシは少し考える。


「それは俺にはわからない。俺がシンくんに合ってるんじゃないかな、って思ったとしても、それは俺が思うだけで、シンくん自身が思うことは違うかもしれない。まぁ…しばらく考える時間を作るのもいいかもしれないね」


「そうなんですよね…でも、家を借りて、ご飯を食べて、生活をしていくには最低限でもお金はいるんですよね…」


 そうなのだ。考えると言っても、その間生活できるお金がない。


「うん…そこでひとつ提案だ。シンくんは寝るところと、ご飯とがあれば、ひとまずは仕事がなくても大丈夫なんだよね?うちに客間が1つまだ余ってるから、そこに住むかい?」


「えっ、いいんですか?でもホントに何もできないですけど…」


「うん。そのかわり力仕事、家の掃除、雑用、買い物とかはシンくんにしてもらうよ。たまに仕事のことの手伝いもしてもらうかもしれない。それ以外は自分のしたいことを探す時間に使ったらいいよ。ただ…」


「ただ…?」


「この居候には期間を設けることにするよ。今が1月中旬だけども、3月いっぱいまで。それまでにシンくんは自分の仕事、したいことを見つけるんだ。もし期限までに見つけることができなかったら、出ていってもらう」


「3月いっぱいまで…わかりました」


「その間、俺でもいいし、サヤやユキちゃん、他いろんな人に、やりたいことのヒントを聞いてみるといい。今まで仕事についてとか、聞いたことないんじゃない?」


 そういえばそうだ。それぞれ仕事もしてて、普通に生活できてるから、自分がやりたいことを探すための質問とかしたことなかった。サトシだったり、サヤちゃんの仕事の内容を聞いて、楽しそうだな、とか、すごいなぁと思うことはあっても。サトシが、期限付きを提示してきたのもきっと優しさからだと思う。僕は今まで、そこまで必死に仕事をしたり、何かを探す努力をしてこなかったかもしれない。自分の置かれてる状況が、ずっと続くものと、甘えていたんだ。だからそれが急になくなったことで、こんなに動揺してるし、慌てている。


「お父さん、ありがとうございます。僕、自分のしたいこと一生懸命さがしてみます!その期間を、環境を与えてくれてありがとうございます!」


「うんうん、いいんだよ〜。シンくんはなんか息子みたいに思ってるんだ。はじめからいきなり上手くいくわけなんかないんだから。なんでも聞いてくるんだよ」


それから、僕の仕事探し。やりたいこと探しが始まった。

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