表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悲劇の公爵令嬢に転生したはずなのですが…なぜかヒーローでもある王太子殿下に溺愛されています  作者: Karamimi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/55

第51話:私の出る幕はありません

「一体何が始まるのだ?」


「よくわからないが、モニターが出ているという事は、映像が流れるのではないのか?」


 固唾をのんで見守っていた貴族たちが、騒ぎ出した。


「リリアナ、君にとっては辛い映像かもしれないから、一旦席をはずそう。さあ、こっちにおいで」


 私を連れて、その場を去ろうとするクリス様。


「私は大丈夫ですわ。ですから、私にも見せて下さい。真実を知りたいのです」


 多分彼らの悪事を映像としておさめられているのだろう。まさかクリス様が、事前にそこまで動いていただなんて。漫画でのクリス様は、マーデン様の言う事を鵜呑みにし、自分から調査する事はなかった。


 漫画でのクリス様と今のクリス様、あまりにも違いすぎる。一体どうなっているのだろう。


「わかったよ、それじゃあ、こっちにおいで」


 困惑する私を他所に、クリス様がイスに座らせてくれた。そして後ろからギュッと抱きしめてくれる。その温もりが、私に安心感を与えた。


「それでは皆様、こちらの映像をご覧ください」


 カシス様の合図とともに、映像が流れだす。そこには、イザベルがメイドに指示を出している映像が。隣にはマーデン様の姿もある。


 “この毒をリリアナ様のカバンに仕込むのよ。そして私のお茶に毒を入れるの。私が飲む直前に、大きな声で騒ぎなさい。分かったわね、失敗は許さないわよ”


 “承知いたしました。あの…私の家族は無事なのでしょうか?家族に一目会わせてください”


 “あなたの家族は、無事だと言っているでしょう?うまくいったら、どさくさに紛れてあなたと家族は、国外に逃がしてあげる。いい?失敗したら、あなたの家族の命はないわよ”


 “承知いたしました”


 メイドが涙を流しながら、毒の入った瓶を受け取っている。そうそう、イザベルはこういう子なのよね。メイドの家族を人質に取って、あんな恐ろしい事をメイドにさせた。そして約束通り、国外に逃がしたのだけれど、確か無一文で放り投げたのよね。


 その後私は命を落としたから、メイドがどうなったかは知らないけれど、きっと苦労したのだろう。イザベルにさえ目を付けられなかったら、彼女もその家族も、普通に暮らせたはずなのに…


 そしてメイドが、私のカバンに毒の瓶を入れる映像が流れる。


 さらにイザベルがさっきの男たちから毒を買うシーンや、マーデン様に指示を出すシーンなども流れる。


 極めつけは、マーデン様とイザベルのラブシーンだ。うまく加工されているが、これは間違いなく、結ばれているわね…


 その上イザベルは、私を失脚させた後、自分がクリス様と結婚して王妃になると宣言していた。結婚後もマーデン様と関係を続け、マーデン様の子供をクリス様の子として育てるという、恐ろしい計画まで立てていたのだ。


 漫画ではそこまで描かれていなかったわ。いくらなんでも、恐ろしすぎる…まさかこんな裏事情があっただなんて。


 ちょっと待って、イザベルは漫画通りの性格だったのよね。という事は、漫画ではあの後どうなったの?どう考えても、イザベルと結婚したクリス様は不幸じゃない。


 ここにきて、最終話がどうだったのか、物凄く気になりだした。でも、私には知る由もない。せめて最終話を読んでから、死にたかったわ。


 そんな事を考えているうちに、全ての映像が流れ終わった。


 ただ、あまりにも衝撃的な映像だった様で、皆固まっている。貴族令嬢に至っては、加工されているとはいえ、イザベルとマーデン様の行為を見てしまったのだ。温室育ちの令嬢たちには、非常に刺激が強すぎる。


 今にも吐きそうな顔で、その場に座り込む令嬢が何人もいる。中には、フラフラとその場を立ち去る令嬢の姿も。あの子たち、大丈夫かしら?


「イザベル嬢、マーデン、これでもまだ、自分たちは被害者で、リリアナがイザベル嬢に毒を盛ったと言い張るのかい?」


 すっと私から離れたクリス様が、2人に向かって問いかけた。


「これは、その…」


「イザベル嬢とマーデン、それからメイドを公爵令嬢のリリアナを陥れた罪で、連行してくれ」


「承知いたしました」


 クリス様の指示で、3人が連行されていく。


「待ってくれ、クリス、俺はこの女に騙されていただけなんだ。俺たちは、親友だよな。頼む、俺の話を聞いてくれ」


「クリス殿下、どうかご慈悲を」


 連行されている2人が、必死にクリス様に訴えている。唇を噛み、拳を強く握りしめるクリス様は、2人に背を向けた。マーデン様とクリス様は、子供頃からずっと一緒に育ってきた仲だ。クリス様の弟君とは随分と歳が離れている事もあり、兄弟の様に育ってきた2人。


 そんなマーデン様を断罪しなければいけなかったクリス様は、どれほどお辛かったか…


 そっとクリス様の手を握った。


「クリス様、私の為に動いて下さり、ありがとうございました。そのせいで、マーデン様が…」


「君のせいじゃない。マーデンは僕を裏切り、君に無実の罪を着せようとした。彼は罪を犯したんだ。だから、しっかり償わなければいけないのだよ」


 悲しそうに笑ったクリス様の顔を見た瞬間、胸が締め付けられた。マーデン様に裏切られていると知った時、クリス様はどれほど辛かっただろう。


 そうとも知らずに、私は呑気に生活をしていたのだ。裏でクリス様が、必死に動いているとも知らずに…


 結局私の出る幕はなかったという訳だ。


 ただ、クリス様やカーラ、カシス様のお陰で私は、断罪されずに済んだという事は確かだ。結局私は、何もしないまま断罪劇は幕を下ろしたのだった。

※次回、クリス視点です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ