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静かな夜

 あぁ、寂しいな…………



 時刻は午前2時。ベッドに入ったはいいものの、中々寝付けず。気がつけばこんな時間になってしまった。


 昨日、一昨日と一緒に寝てしまったせいで……一人で寝るのが難しくなってしまったのだろうか。


 人肌が恋しくて仕方ない……寂しい……。


 抱き枕をいくら強く抱いても、この飢えは満たされない。この3日間で、随分とわがままになってしまったらしい。


 ……これも全部蓮のせいだ。


 そう、恨み言を心の中で呟きながら、じっとスマホを見つめる。手にとって起動してみれば、二人で撮った待ち受け画像が表示される。暗闇の中起動したせいで眩しくて、目の奥が少しだけ痛くなった。


 画像の私は、自分でも見ていて恥ずかしくなるほど幸せそうに笑っている。ふにゃりとした笑みだ。蓮はなんだか照れているのかやや引き攣った顔をしていて面白い。



 その顔を見ているときゅっと胸の奥が締め付けられる。



 寂しい、会いたい、声を聞きたい、他愛もないことを話したい…………ただ一緒にいたい……



 そんな気持ちがどんどん強くなっていく。ほんとに、どこまでも私の心を乱してくる男だ。まぁ、蓮に罪はないんだけど。


 スマホを開いて、LIN○のアイコンをタップする。そこには家に帰ったあとに通話した時の履歴と、ちょっとした雑談、そして『おやすみ』の文字が刻まれている。


 結局あれからも寝付けないでいた。昔ならこの時間でも容赦なくLI○Eメッセージを送りまくり、あわよくば通話を繋いでいたところだったが……付き合い始めた今、逆にそれで迷惑を掛けてしまわないかが不安になっていた。


 少しでも好きでいてもらいたい。そんな気持ちが、今までよりも更に強くなってしまったのだ。



 話したいなぁ……蓮、まだ起きてたりしないかな……。



 ゲームでもしていないかなと、そんな淡い期待を抱いた私はゲーム機を起動する。そしてそのままフレンド一覧を眺める。



「ッ!!」



 オンライン: Ren ○○○をプレイ中



 そこには、緑色で『オンライン』と書かれた蓮が。なんだかデジャブに感じつつ、スマホを手に取ってトーク画面を開く。少しだけ躊躇いつつもメッセージを送った。



『ゲームしてないで早く寝なさい』



 全くもって素直ではない文だ。自分でも呆れるが、素直に、今話したいと送れるほどの勇気はまだなかった。どこまで行っても心はインキャオタクなもので。


 すぐに既読が付き、返信が来る。



『貴様、見ているなッ!?』



 それに対してじーっと見つめるウサギのスタンプを送った。すぐに『寝れない』という返信が来た。ドキドキする胸を押さえつつ、慎重にメッセージを入力していく。


『実は私も寝れない』


『奇遇だな』


『今暇?』


『暇。折角だし通話繋ぐか?』


『繋ぐ』


 よしっ!と軽くガッツポーズをする。そして意気揚々とコールボタンを押した。3秒ほどですぐに繋がる。ゲームのbgmが聞こえてくる中、スピーカーモードをオンにした。



「さっきぶりだね。全然寝れなくて、蓮も起きててよかった」


『僕も寝れなかったから、諦めてゲームしてた』



 スマホから聞こえてくる声に、不思議と頬が緩むのを感じる。ベッドに入る前も普通に通話してたのに…………


 声を聞いて安心した私は、スマホから視線を外して横になる。



「なんか、この時間に通話するの久しぶりだね」


『そうか? あぁ、確かに久しぶりかもな』


「えへへ」



 そうして久しぶりに、他愛もないことを話しながら、寝落ちするまで通話するのだった。

今話は短いので、10月3日にもう1話投稿します。

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