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月はかなりかけていて新月からそう日にちが経っていないのだろう少ししか身をつけていない。
フクロウやコウモリの類が一切も鳴かず、空を縦横無尽にかけている。
捕らえられた弱者は抵抗の術もなく殺されて喰われるだけだった。
夜というのは恐ろしくも、奇襲にも役に立つ時間帯である。それは野生動物すら知っている事柄である。ならば、鬼が知らぬはずもなかろう……。
音もなく、気配もなく、殺気も出さないとなればその存在に気がつくものはそうはいないだろう。
そう、人並みならばだ。
「起きなさい。四隅に張った短剣が反応したわ。敵よ」
すでに臨戦態勢の夜見は大きく欠伸をして舌を少し噛んだ。
「なに? 眠気覚ましの代わりか何か?」
「きにしないで」
「zzz」
寝ているデブば放置でいいとして、敵は小さく素早く、そして牙を持っている鬼だ。
奇襲にさえ気をつけていればなんて事のない相手だ。
1人では気がつけなかっただろうがいまは全力が倍である。それならばやれるだろう。
否、やらなければ''死''あるのみである。
「先方十一時の方角。接敵三体と言ったところね。大きさは子供程度。速さはそこそこと言ったところね」
美命が短剣を口に咥え、印を組む。
「なにをしてる」
「ううさはい(うるさい)」
組まれた印は四つの型を作っていた。
口に咥えていた短剣を地面に突き刺すと緑色の雷撃がその短剣を中心に半径十メートルに円状に広がった。
「これはね、雷撃結界よ」
そういうと美命はデブを引きずってその円の中に入れた。一仕事終えたようで額の汗を拭っている。
「見かけ通り重いわね」
「……否定はしない」
「とりあえずここに入れとけば死ぬことはないでしょう。雑魚程度なら入っては来れないはずよ」
「よいしょ」
それに加え四方に短剣を飛ばす。
真四角に飛ばされた短剣から青白い紐が伸び紐同士が結び付き幕が降りた。
青白い線から伸びる幕は少し赤みがかっており、触れたら状態異常になりそうた。
「なにこれ」
「はぁ、あなたなにも知らないわけ?」
「うん」
「これは、不可視の幕よ。敵から視認されにくくするの。さっきの戦いでは間に合わなかったけど、これをしている間は敵から視認されないしましてや入ってこようとするとほのおやられになるわ。ここはねこれくらいしないとすぐに死ぬから」
「え、ならなんで休憩しはじめの時からやらなかったの?」
美命は少し考える素振りをした後に素っ気なく答えた。
「力がやっと戻ってきたから?」
「なぜに疑問形?」
そうこうしているうちに敵が、三体攻めてきた。
どれも餓鬼で弱そうだ。それほど人を喰らっていない証拠だろう。こういう夜分に人を襲い食べて成長しなくてはならないのだろう。
「なんだ、餓鬼か。これなら」
夜見は刀を下段に落とし相手を挑発した。
「……やれるものならやってみろ」
接敵するにはまだ三秒ほど長いが、その恐るべき殺気はその三秒を通り越えその餓鬼たちにひしひしと伝わる。きっと常人ならば恐れ慄き尻餅をついついガタガタと肩を震わせながら神に祈るだろう。だが、相手は理性を失った餓鬼である。
そんな雑魚が、そんな理性のない化け物がこの程度の威圧で怯んでもらっていては困るのだ。
「あなた、中々やるわね。私まで気圧されそうだったわ」
足腰を少し震わせる美命は薄ら笑いで夜見を見る。その顔は引きつっておりよほど怖かったのだろう。素股からタラタラと透明な尿が垂れてきていた。
「漏らすなんて、Mなの?」
「……後で……処す」
何故か殺気を感じた夜見は首を傾げて会敵した雑魚どもを一瞥した。餓鬼は私たちを見るや否や奇声を上げ一目散し襲いかかってくる。なんの連携も、なんの作戦も、なんのアドバンテージもないその戦法はまるで原始人が野ウサギを狩ろうとしているかのようだったが、狙っている獲物はクマがライオンという中々に手強い生物と同様舐めてかかると一瞬で首をイかれる化け物であることを餓鬼たちは失念していた。
「シャシャァァァァァ!!!」
声と言うにはおこがましいその奇声は寝ているデブチンを起こすほどの声であることは間違いなさそうである。
ひょこっと顔を上げ辺りを重そうなまぶたを無理やり起こして一言。
「え? おれ寝てないよ」
ブチッ
夜見と、美命の堪忍袋のおが切れた音がした。
不幸というか、なんというかデブはその音がなんとなく聞こえた気がした。顔は笑っているのに目がやばい。とにかくやばいと感じたデブは急ぎハンマーを担ぎ直し小走りで夜見と美命のもとに駆けつけた。
「ふぅ、中々きっぱくした状態だな」
スッ……と夜見と美命はその場からはけた。
「え?」
正面を見ると餓鬼が三体真横に飛んできた。
「え?!! ええーーーーーーー!!!!」
寝起きとは思えないスピードでハンマーを振り回し餓鬼三体を一斉に吹き飛ばした。
「あ''ぁぁぁ!!!!」
断末魔を上げ餓鬼が絶命したが、デフの顔色はまったくもって悪かった。それはもう〜悪かった。
「な、なんとかなるもんだな」
「……なぁ、寝てたよな」
「……え、あ。はい」
夜見は刀を仕舞うが塚頭をなぜか撫でている。
「なぁ、太ったな」
「……えーと、はい」
死んだ魚のような目で夜見は続ける。
「んで? 後始末もしずに飯だけ食らって寝るなんていう馬鹿はいないと思うんだよ。な?」
「はい」
「だからな、後の数時間……お前見張な」
「はい、全力で務めさせていただきます」
ピシッと敬礼したデブはハンマーの重い方を地面に落とし塚を胸辺りに当てていた。
「よし、寝よう」
「そ、そうね」
めんどくさそうな夜見に気圧され美命は若干引いていたが、寝れる聞き体を横にしたのであった。




