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08 顔合わせ

若干ギャグ入れたけど、笑わないであげてください。

デブたんがかわいそうです……

 α08



 教室に入りあたりを見渡す。


 木造建築のオンボロ教室だがそこまで悪くはない……といったところだろうか?


 椅子や机も木でできていてなかなか良い味を出している。作られて何百年も経っているのに微かにヒノキの匂いがした。


 だが、それを覆い隠すように血の匂いがした。


 中にいる生徒たちはどれも曲者揃い。見た目から分かるほどに血の匂いを漂わせていた。


 両手剣を机の上に置いて丁寧に拭いているもの


 祈りを捧げているもの


 寝ているもの


 なんかノートを開いて書いてるもの



 様々だ。



 だが、異質なこの空間にも一つの特異点があるようで刀を背に背負った女の子がいた。


 その女の子はふわふわしていて私とは似ても似つかないような可愛い子だった。


 血の匂いはしなく、むしろ太陽のような匂いがした。


 傷や怪我、汚れた憎しみなど感じずただの少女のようだった。

 少し羨ましかった。


 あんな風に生きてみたかったと。



「お前ら得物を机の上に置くな。それと、試験に合格した最後の生徒だ。歓迎してやれ」


 ちらりと私を睨む生徒たち。

 眉を潜めにやりと笑う一人の生徒が質問を私に投げかける。


「なぁ、あんた……逆巻家の者だろ? 空気が違うーー漂わせてるオーラがここにいるやつと段違いだ。あんた、強いな」


 そう話しかけてきたの双剣を背に担ぐ若い少年だった。


「……答える義理はない」


「あはは、そりゃそうだ。知らねー男に訳の分からねー質問された普通は無視するよな、なかなかいい親御さんをもったじゃねーか.。気に入ったよ……女」


 ケラケラと笑いその男はニタニタと笑い席についた。

「他質問ないなーー。よし、お前たちの席はあそこだ。わかったなら早く着け」


 軽く会釈し指定された席に腰を落ち着けた。どうらやデブは一番前の席に着いたようだ。どれだけ積極的なのだろうか?


 私はというと、一番後ろの窓際。


 どこの主人公だと突っ込みたくなるがそんなことはどうでも良い。



 刀を机に立てかける。少し湿っている机に師匠に持たされた小道具を仕舞い込み一息つく。


「さて、これで全員だな。とりあえず試験合格おめでとう。試験に挑んだ無謀な奴らは百八十人。合格したのはここにいる十三名……大抵のやつは死んだか食われた。それか、逃げた臆病者といったところだろう。死んだ奴らには申し訳ないが、この世界は弱肉強食の世界だ。弱い奴らが死ぬのはこの世の定めだ。まぁ、一部想定外の奴がいたようだがそれはどうでもいい」



 バンと教卓を叩き先生は続ける。


「よし、とりあえず合格発表は終わりを迎えた。

 これから三日間は休校とする。その間に君たちに行って欲しいのは自身の住うところを確保するということだ。食糧など食べ物は心配するな。鬼を殺せばゴロゴロと手に入る。だから、身の保身をいの一番に確保することを第一目標としろ」


 そういうと、教師は不敵な笑みを浮かべ教室から出て行ってしまった。


 ザワザワと騒ぎ出すクラスメイトたちを尻目に後からのっそりとやってきたガリガリたちがデブの目の前にやってきて土下座をしていた。



「ご主人様、我々使いの者たちは帰らせていただきます。ここまで送り届けることが我々の任務です。無事卒業できることを我々三人心より願い申し奉ります。失礼いたします」



「あぁ、ありがとうな。短い間だったが世話になった。大儀でな」


「ありがたき幸せ。さらば」


 そういうと、三人は自身の獲物に手を掛け立ち、軽く会釈をして教室を出て行った。


 少し考え深そうにデブは俯き大きくため息を吐いた。

 そんなデブの様子を遠目から眺めていると先程私に無礼な質問を投げかけてきた男が私の元にやってきた。


「なあなあ、あんたの獲物見せてくれよ。お前たち呪われた一族の武具はどれも国宝級と聞く。そんな刀を俺に見せてくれよ。なぁ、いいだろ?」



 媚び諂う様にその男は私の目の前を右に左にウロウロと彷徨くのだ。


 イラつく心を沈め少しだけ刀を抜いてやる。


 ここで下手に騒ぎを起こしても後々面倒なことになる。それだけは避けておきたい……。


「お、おぉー! これが噂の呪刀か……みているだけで肌がピリピリする。まさかこれほどまでとは思わなかった。少し抜いただけでこの力ーー。

 さぞかし鬼や人を切った刀なのだろう」



 満足げに男は後ろ足を引かれる思いで私から離れてゆく。


「あぁ、名前まだ言ってなかった。俺の名前は、

 八百坂やおさか かずらっていうんだ。この先長いと思うがよろしくな。逆巻の女」



「……ふっ、」


 足音が全くしないその男は双剣を抜き、ズカズカと教室を出て行ってしまった。


 残されたのは私とデブ、そして太陽の匂いがする女だけとなった。


 デブはまだ下を俯いている。

 泣いているのだろうか? いや、そんなことは気にしてはいけない。あいつの今の涙は触れてはいけない。


「ねぇ、貴方。すごい臭いわよ?」


 太陽みたいな女が私に話しかけてきた。

 その顔は全く崩れることない笑顔で、弱者を眺めるような口元で慈しむような眼光で、嘲笑うかのような頬で私を見てくるのだ。


「貴方、名前は何?」


「……逆巻、夜見」


「あら? 顔の割には可愛らしい名前をしているのね?」


「あなたこそ、綺麗な匂いや顔なのに随分と汚らしい言葉を使うんですね。それに、名前を聞くなら自身から名乗るのが筋ではないですか? あ、ごめんない。まともな教育受けてこなかったんですね」



 ピキッ


 太陽みたいな女の額に青筋が走る。


「そ、そうね、名前言ってなかったわね。私の名前は、美命びれい 炎華えんかよ。以後お見知り置きを」



 わざとらしく、扇子を広げて口元を隠しアワアワとバカを演じるように教室を出て行ってしまった。残されたのは半泣きのデブと棒立ちの私だけだ。


 住まいを作れと言われても私にはその経験がない。寧ろ、旅ばかりをしてきたようなものだ。旅……と言えるのか少し疑問だが。それも些細な問題だろう。


 どうやら、皆はもうすでに家を作り始めているものもいる。


 コンコンと景気の良い音が聞こえてくるからだ。ついでに武具の使われる音もだ。


 窓辺から外を見上げるとまだ正午。時間は無限ではない。私もそろそろ外に出て何かしなくては……。


「まて、逆巻の」


 デブが泣き止んだのか、頬を赤くし涙袋を痩せさせ鼻水を垂らしながらゆっくりのしのしと私のもとに来た。

 今日なにぶんと忙しい。次から次へと変なのばかりくる。というはその筆頭だが、まだ人として話せるだけの知識はあるようで多少は助かっている。



「なぁ、逆巻さんよ。お前そんな名前だったんだな。聞かなかった俺も悪いが。まぁ、それはいい。強いてはお願いがある。俺と共に行動してくれないか。俺の技は少し溜めに時間がかかるし何より隙も大きい。前はあいつら。本家の人間がいたからできたが、今の俺にはそれがない。だから、逆巻の女。俺に手を貸してくれ。見返りは俺たち二人の身の安全ってところでどうだろうか?」



 捲し立てるように、恥ずかしがるように、己の武を曲げるかのようにその男は頭を私に下げた。


 深々と、丁寧に下げられた頭は何一つ汚れてなどいない綺麗なものだった。武を貫き負けを知らぬ武人が初めて頭を下げた時と同じような感覚なのだろうか?


 一瞬たじろき、半歩ほど後ろに下がってしまった。唇を噛み、鈍い痛いと共にたらりと血が流れる。

「なぁ、一ついいか?」

「あぁ、なんでも行ってくれ。無茶な願いというのは百も承知だ。それを無理を通すのだ。多少の犠牲は致し方あるまい」


「なんで、頭を下げるんだ?」


 その質問にデブは固まった。まるで観点を入れすぎたゼリーのように固まった。


「……そうか、お前はそういう奴だったな。俺たちは友だ。願うのではなく。頼めばいいのだ。

 ありがとう。すまない……。一緒に戦ってはくれないだろうか? 俺にはお前が必要だ!」


 まるで愛する人に語りかけるようにデブは呟く。


 頭は上げ、微笑みかけるように手を差し伸ばす。


 やれやれと肩を落とし、私はその申し入れを受け入れた。むやみやたらに敵を作るのはよしとしないが、仲間を作るのは大いに結構だと夜見は考えること。だが、私と仲良くなった人物はことごとく死んでいった。


 そんな辛い思い出が脳裏にちらりと顔を覗かせ眉に力が入ってしまう。小さく息を落とし、出された手を握り、地震にいい気かけるように二.三度うなずく



「ありがとう。感謝する。俺の名前は覚えてるか?」



「……ごめん、言ったかどうかすら覚えてない」


 デブはジト目を習得したようだ。



「おい、女よ……それは酷いんじゃないか?」


 そっと目線を外し机の横に置いてある刀を腰につけ、颯爽と教室を出ようとした。


 その時、そっと肩に手が置かれた。


「ちょっと待てよ。今の俺の話を聞いていたであろ。協力しようと。いったばかりではないか。それをなーにげない顔で出ていこうとしているんだ。馬鹿だろう。お前馬鹿だろ」


 チラッとデフの顔を見てみると呆れているような顔をしていた。


「……そんな日もあるさ」



「……そうだな、そんな日もあるよなーー。じゃねーよ。なに、澄まし顔で決めてんだよ。全くこの女はやること全てが無茶苦茶だ。まだ、このハンマーの方が可愛げがある。それに比べてお前の獲物ときたら、化物以外のなんでもないではないか」


 なぜか、怒っているデブに一言……。



「そんなに怒らない方がいい。それと、血糖値を気にした方がいいと思う。その、何というか……頑張れよ。じゃあな」



「ーーはぁ、お前のその太々しさはなかなかに筋金入りだと思うが、なぜにそこまで俺を信用しない。男だからか? やはり男は信用できぬのか?」



(チゲーヨデブ……これ以上死人を増やしたくないだけだ)



 踵を返し、扉に向かった。


 一刻も早くこんな血生臭いところから出たい。

 なくても汗臭いのにこんなところにいたら生ゴミと同じ匂いが移ってしまう。それだけは勘弁してほしい。



 デフをやや置き去りにして、教室を後にした。


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