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少女は刀を握り姫となる!剣姫〜いざ行かん  作者: 榊 凪
1章 幼少期 殻を破る時
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48天然の石

昨日に続き連続投稿〜多分明日も!

 48


 祭りも終わり、人々はそれぞれの家へと帰っていった。

 そんな中、私たち二人は小さな焚き火の前で腰を下ろしていた。

 季節は春とこれから暖かくなる季節。だけどまだ冬の寒さが残っている季節でもある。

 流行り少しだけ寒い。ちらりと横目であの子を見れば、全身に鳥肌を立たせガクブルと体を震わせていた。


 一生懸命手を伸ばして焚き火で温まろうとしているが、後ろから吹き付ける風と、ボロボロになってしまっている服のせいでなかなか寒さを防げずにいた。

 この子たちは冬はどの様にして耐え忍んできたのだろうか?

 私はそれを無視し、自身のことだけを考えてその日は眠った。



 一夜明け、目ヤニのついた目をこする。

 すると、黄色の目ヤニがポロポロと目からこぼれ落ち。

 そんな些細なことは気にする事なく、大きく背を伸ばした。

 焚き火の火は消えかけている。

 女の子に手をかざす。

 まだ熱はあるみたいだ。どうやら昨日の寒さはしのげたらしい。死んだとしてもここに置いていくだけだから気にしないが。流石に目の前で死なれるのはどうにも腑に落ちないため、少しだけ安堵している。


 村には住人たちがせかせかと鍬などを使い畑を耕している。

 見たこともない様な植物たちが地面から生えている。


 皆楽しそうに仕事をしていた。


「行くか……」

 女の子を叩き起こした。

 いつまでも寝て入られてはかなわないからだ。

 忌々しそうに私を見るが私はそれを無視して、襟を掴む様にしてその場を後にした。



 村を少しだけ探索することにした。

 この子の服を少しだけでもいいから見繕いたいからだ。

 多少ボロくてもいい。恥部さえ隠れているのならばそのほかはなんの問題もない。

 どうせ、こいつらは鬼の紛いものだから。死んだとしてもわたしはどうとも思わない。

 だけど、あの時刀を振れなかった事だけが悔やまれる。


 少し村を探索すると、呉服店があった。

 粗末な布切れしか売っていなかったが、ないよりはマシだ。

 わたしは下着と子供用の服とズボンを二枚ずつ買い、一枚をその子に着せた。


 もう一枚はこの子の着替えとして持っておく。

 それと、リュックサックだ。

 たびの途中で何か食べられるものとが貴重品などを入れておくものが欲しかったからだ。

 まえ、山賊から貰ってきたあのカバンは少し小さいのでここで大きなものを買っておくのは損ではないだろう。


 早速、そのリュックに着替えフルセット一着とナイフ、カピカピのパン、チーズ、食べられる花、果実などを少し綺麗に並べて詰め込んだ。


 その他にも色々なお店を見つけ周り僅かばかりだが食料も買い揃えておいた。日持ちちの良いものばかりを買い漁るのが基本だ。


 一通り店を見尽くし、近くにあった丸太の上に座り休憩することにした。


 少し重くなってしまったリュックサックをその子に背負わせ、わたしは少し横になることにした。


 大きくため息をつき、財布の中にある残高を見た。

「あと……15万程度か…………」


 これまでの旅で半分ほど使い果たしたのか。

 そこまで使っていないなと自画自賛をした。


 その子を見ると正座し木の棒で地面に何かを書いていた。

 それをちらりと見てみれば、なんとも読みにくい日本語だった。

 なぜかそれを見に来る村の子供たち。

 この子がやっていることに興味を示すそうだ。


「何やってるの」

「……文字書いてる」

「書けるの?」

「少し」


 三十分程度そこで休んでいると昨日のお爺さんが私たちの元にきた。手にはカゴを持ちその中には春に実のなる果物たちがふんだんに詰め込まれていた。

 お爺さんはその果物の一つをその子にあげた。

 不思議そうにお爺さんの顔を覗き込むその子はよそよそしくそのいちごを手に持ち、匂いを嗅いでいた。

 お爺さんはその様子を見て優しげに微笑んでいた。


「美味しいかな? 私の畑で作ったものなんだよ」

 周りにいた子供達も次第に手を付け始め美味しそうにムシャムシャと口一杯にほうばっていた。

 その様子を私は横目でちらりと覗くと、お爺さんが私にビワをくれた。

 黄色の身で匂いは嗅いだことのない匂いだ。

 決して下品な匂いではなく、優しい匂いだった。

 目を細めお爺さんは笑う。

 その様子に私はビワに口をつけた。


「…………美味しいーー」

「それは良かった。本当に良かった」


 嬉しそうに涙を零すお爺さんは幸せそうに見えた。それを見て私も何故か胸が少しだけ暖かくなった気がした。


「良かったらまだあるから食べなさい。果物は逃げていかないからゆっくりな!」


 念を押すようにそういうとお爺さんはどこかに行ってしまった。


 近い昔のことを思い出した。


 こんな気持ちになるのは久しぶりかもしれない。あの時あったあの人たちの顔がまぶたの裏に浮かんだ。


 すっと息を吐き、ゆっくりと目を開けた。


 優しい甘さだ。いつまでも口の中で転がしたくなる。思い出と一緒だ。いつまでも忘れたくない味…………。


「お姉ちゃん、お名前なんていうの?」

 村の子供たちがその子に質問をしていた。何気ない質問だ。

 だけど、その子は口をつぐむ。答えたくないのだろうか?

 目を背けると、みかんを食べ始めた。

 少し酸っぱかったのか、顔をしかめた。


 その様子に村の子供たちはケラケラとその様子を笑った。それに苦笑いで返し、小さな声でその子は自身の名を口にした。


美帆みほ……西片にしかた 美帆みほです」


「へ〜美帆お姉ちゃって言うんだ〜良い名前だね!」

 屈託のない笑顔に美帆はぎこちなく笑顔を返した。それはまるで美穂お姉ちゃんのようだった。あのなんともいえないあの時の笑顔のようだった。

 私はあの時刀を振るわなかった時のことをずっと後悔していた。だけど、その霧が少しだけ晴れた気がする。


「ふ〜ん……美帆ね……」


 私がそんなことを考えていることを知らないのか、美帆は果物にがっついていた。

 やはり年相応の食べっぷりだなと何故か感心している私でもあった。

 ようやく食べ終えたのはそれから三十分後のことだ。あれだけ詰め込まれていた果物たちは無残に食べ散らかされている。地面を見ると小さなアリが群がっている。よほど美味しかったのだろう。

 せかせかと食べかすを巣へと運んでいた。


「行くぞ、美帆」

「…………はいーー」


 また少し荒む美帆の影を見て私は少しだけ落ち込むのだった。


 村の入り口付近まで行くとあのお爺さんがいた。美帆は目を輝かせ、お爺さんの元へ駆け足で向かっていた。私はそんな元気がないので、ゆっくりと向かうことにした。



 お爺さんの元に着くと美帆とそのお爺さんとで何かを楽しそうに話しているのが聞こえた。

 会話の内容から察するに先ほどの果物の件だろう。ぴょんぴょん跳ねながら楽しそうに話していた。そして、私が近づくと目をあからさまそらして、仕方なく私の元へと歩いてくる……。

 それを見たお爺さんが首を傾げていた。


「どうしたんじゃ? 美帆ちゃん……そのお姉ちゃんに何かされたのか?」


「…………ん、んーん。なにも……なにもーーされてない」

(した、私はこの子の家族を全て殺した。恨まれて当然だろう)

「このお姉ちゃんは、多分良い人。だと思う……」

 その言葉を聞きお爺さんは私に鋭い目を向けてきた。悲しそうな鋭い目だ。

 悲しいと言うより、『何故?』と言う気持ちの方が強いのではないか?

 と、夜見は思った。


 聞かれたら答えなくてはならない……。それだけは覚悟している。自身がやったことには落とし前……ケリを付けなければならない。


「…………君の名は何という。刀を持つ少女よ」

「……私の名前は……坂巻 夜見。鬼を殺すものだ」


 お爺さんはあからさま嫌な顔をした。それも、汚らわしい何かを侮蔑するときに見せる顔だ。

 軽蔑という言葉全てをぶつけられたような顔だ。わたしは汚物を見られるような顔をした。


「なんだ……!」

 少しだけ威圧を込めて話す。

「汚らわしい鬼殺しめ。貴様らが鬼を殺すから私たちの村から人が減っていくのだ」

「なぜ、鬼を殺しているのに人が減る!!」


 眉にしわを寄せる。その顔は憤怒そのもの。

 周りの住人たちもこの騒ぎを聞きつけ寄ってくる。まるで、夏の夜に光を照らすと寄ってくる蛾の類のようにだ。


「お前達が鬼を怒らせるからだ!!!」

 とうとうお爺さんはわたしに向かって石を投げた。あまり小さくない石だ。当たれば血が出るほどの石だ。

「いて、何する!!」

「出て行け! この村から出て行け!! そして、そこらへんでのたれ死ね!!」


 ひどい罵声だ。今までに聞いたことのないような罵声だ。


 周りにいる野次馬達も次々と私に石を投げ始めた。けっして小さくないそこそこに大きな石を投げ始めた。まるで、死刑囚に唾を吐きかけるが如く私に石を投げる。


 当たってもそんなに痛いわけではない。今までの戦いからしたらこんなものは豆鉄砲と同じくらいの威力だ。だが、辛いのだ。私は善意で鬼を殺し人々を救ってきたという自覚がある。

 それを根本から覆されあまつさえ石を投げられるのだ。これを辛いと言わずして何と例える。



 私は踵を返し村を後にした。

 美帆はどうやら残るらしい……。


「そうだ……った。私に関わった全ての人にはそれなりの呪いがかかるはずだっけ? そんなに死にたきゃ勝手に死ね」


 あえて少し大きめの声でそう呟くと「汚れた血め!!」

 とキツメの罵声をうけた。


 また明日ここに来よう。その時はどうなっているか少しばかり楽しみだ。


 ニヤリと口を歪ませた……。


よろしくー。って遅れた〜ごめんね

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