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だめや……
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三年ほど前……。
精神統一……これはすべての事柄を成すために必要不可欠なものである。私はそう考えている。
何故か? それはお爺様がそう言ったからだ。
「夜見、今日は滝に打たれて来なさい」
「え、こんなクソ寒いのに滝に打たれるのですか? 死んでしまいます」
「……死ぬわけ……ない」
「お爺様? 今の間は?」
お爺様は軽く咳払いをした。
私は白い浴衣に着替え水の落ちる滝へと向かった。
◇
頭上十五メートル。一時間に流れる水の量は一トン前後……。
そこそこ大きな滝である。
滝壺のところには人一人ほどが乗れそうな岩が置いてある。
どうやらお爺様に聞くと、わしが置いた……そうだ。
なんともと、言ったところだろうか。
クソ寒い冬の真っ盛り、私は滝に打たれた。
その時の記憶はあまりなく、ただ、静かだった。気がするのだ。
静寂か…………。
まどろむ世界にはこれくらいの静寂が無ければならない……。
考えさせられるものがあるのではないだろうか?
心の中に丸い球体を思い浮かべなおも瞑想に耽る。
あれからどれほどが立ったのだろうか?
お爺様が声をかけてくれた。
「夜見、晩御飯にしよう。疲れただろう」
「……はい……お爺様」
◇
目を開けるとそこには純白の太刀を持つ鬼がいた。
隆起した筋肉。鋭い眼光、すべてのものを飲み込むほどの殺意。
これは、ダメだ……。
夜見は呟いた。今までのやつとは比べものにならない。
殺意に夜見は押されていた。
鬼の殺意で刀を握る手の力を緩めてしまう。
目からは涙が、体は小刻みに震えだす。
先ほどまでの瞑想は何処へやら。
今まで戦ってきた鬼とは別格、まさしく桁違いと言ったところだろうか。
その鬼は夜見を一瞥すると、興味なさそうにその場を去ろうとした。
まるで、羽虫を見るかのようだ……。
見逃してもらえた……。
夜見はそれだけを思った……。
足には力が入らず、腰は抜ける。
あらゆる恐怖を濃縮して放たれたような感覚。
あの鬼の口からは血が出ていなかった。
きっと良いものを食べているに違いない。人の肉は低カロリーであまり栄養にはならない。
豚や鳥、イノシシなどの高エネルギー物質を口にしているのだろう。それにあの武器、今までの鬼は良くても錆びた剣や木の棒、武器を持たぬものすらもいた。
なのに、あの鬼は美しい純白の太刀を手にしていた。あれは相当手入れされている一品に違いない。
歩き方一つとって見てもあの歩き方は達人のそれだ。
あの鬼は余程の手練れという事だ。
夜見はそれを一瞬で見抜いた。
だからこそ、戦意を喪失させたのだ。あれは人が争ってはいけない存在だという事、決して手を出してはいけないもの。だという事。
夜見は絶望した。
自身がこれ程までに弱いということに。
クソ。
これが私なのだろうか……。
否だ!!!
剣を握る。
抜けた腰は怒りによって無理矢理奮い立たせ、死んだ目は頬をビンタし喝を入れる。
「くそが!!!!!!!」
さぁ、狩りの始まりだ。
書けない……ペンが進まない。
つかれてるのかな?




