表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は刀を握り姫となる!剣姫〜いざ行かん  作者: 榊 凪
1章 幼少期 殻を破る時
27/96

25

遅れました……

 25


 鬼達とわたしの距離は凡そ五十メートルほど……遠くも近くもない。

 正直、殺せるか心配だった。

 あの時は力が暴走したって言うか、ハイテンションになってたって言うか……今の感覚とは違う。例えるなら、かなりガードの固いフィルタリングを携帯につけた様な感じた。

 思うように剣が振れないみたいな事ではないのだが、いつもと何かが違うように見えるのだ。それもこれもこの腕輪のせいなのだろうか? 取ったら怒られそうなので、止めておこうと言うのが、今の感覚だ。


 怒られるのは嫌いだからな〜〜。


 それよりも眼前にいる鬼達をどうにかせねばならない。困ったものだ……今の私ではせいぜい殺せても一体、二体が限界だろう。

 何故なら私には体力が無いからだ。あまり遠くまで走れない……走ると心臓が締め付けられると言うか、体が硬直してしまうのだ。


 私は剣を握り、鬼に対峙した。


 先程あれほど吠えたと言うのに、鬼達は一向にその距離を縮めようとしなかった。

 眉をひそめ、ニタッと歯茎をむき出しにし三日月のように口を裂き笑う。裂けた唇からは赤黒い血が歯に付着する。

 小刻みにケラケラと笑うたび、血が辺りに飛び散るのを見た。

 棍棒を地面に叩きつける者もいる。

 破壊、か……。

 夜見は、口にすることなく心にとどめた。



 耳に聞こえてくるのは、風が吹き荒れる音、破壊された岩や瓦礫が崩れる音。

 それに付け加えて、鬼の笑い声だ。


 一匹の鬼が、剣を抜き鞘を捨てた。


 軽い足取りで、夜見へと飛来する。

 瓦礫や、岩あらゆるものをつたい登り、駆け巡る。


 そして、夜見の眼前へと姿をあらわにしたのだ。

「ガルルルルル」

 呂律の回らぬサラリーマンが戯言を口走るか如く、鬼は叫ぶ。口からは血が舞う。夜見の顔には吐き捨てられた痰のように付着する赤黒い血。

 歯を食いしばりるそして剣を握る手に力が入り思うように体が動かせない。

 まさかこの私が恐怖に慄いているとでも言うのか!

 鬼を惨殺し、快楽を得たあの戦場。

 皮を剥ぎ、内臓だけをえぐり出し、首を取り、致命傷を与えずジリジリと殺した私が恐怖し、生まれたての子鹿のように足を震わせているとでも言うのか!!


 たが、体は正直だ……。


 膝は笑い、腰は力が抜けた餅のように粘りを失い倒れてしまう。

 恐怖だけか私を支配する。


 ………………………………否ーーーーーーーー。



 違う……私は此奴らを憎んでいる。

 母を父を、祖父を殺した鬼達を私は憎んでいるんじゃないのか? ならば何故私はここで倒れこみ、死を待つ弱者にならなければならないのだ?

 それは、弱者のする事だ。

 私は、強者でありたい…………。


 殺す………………。



「ふぅ……」

 息を吐いた…………。



 不思議と震えが止まる。


 鬼もそのように喜んだようで、剣を地に突き刺してはケラケラと笑った。


「なぁ、鬼。お前はどんな風に死にたい?」


 その一言を返す間も無く鬼は死んだ。


 首と胴体をおさらばした鬼は、うめき声も鳴き声も出さず死んだ。

 他の鬼達も、ぞろぞろと死んだ鬼もの元へ足を運ぶ。まさか、鬼にも心が?

 それは、杞憂に終わった。


 鬼達はニヤリと下卑た笑みを浮かべ、仲間の死など取るに足らないらしい。まず、鬼達に思いやりと言う言葉はないようだ。

 私は大きく後ろに下がり、剣を構え直した。


 それを追うように鬼達は私の元へ走る。それ程早くはないものの、常人よりは少しだけ早い……まさに人間を超えた存在と言ったところだろう。

「厄介極まりない」


 ……ん! 後ろから気配!!


 パッと後ろを振り返る。

 そこにいたのは剣を振りかざす青鬼の姿……!私は咄嗟に刀で防ぐ。だが力の差だろうが軽々と吹き飛ばされ頭を強打した。肺から空気が抜け息が苦しい……全身を襲う激しい痛みは、今までに経験したことのない痛みだ…………。

 やられる……。

 助けて…………。


 激痛が走る瞼を開き周囲を見渡すが人っ子ひとりいない。あるのは絶望と言う名の殺気を帯びた鬼達だけ。今さっき現れた鬼も合わせればここにいる鬼達は全部で六体……か。


 助けは来ない……私を救えるのは私だけ……?

 やるしかない……やってやるしかないのだ。


 ノタノタと鬼達はゆっくり歩く、先ほどの一撃であの赤鬼達は私を見失ってしまったかのようにうろうろとさまよっている。青鬼はと言うと、足が痛いのかわからないが左足を引きずり剣を支えにしてゆっくりとではあるが私の元へと歩く。


 赤鬼達が私を見つけるのと、青鬼が私の元へきてトドメを刺すのも時間の問題か……。


 私はと言うと、刀を支えにして起き上がっている。

 先程受けた衝撃が未だに体を痛めつける。

 苦しげな声を出し、歯を食いしばる。


 やっとの思いで立ち上がる。痺れるような痛みがまだ腕に残る。だが、刀を構えていないと自身が消えていましそうになる。それだけは嫌だ! 私は刀を構えた。

 青鬼は首をポキポキと鳴らす。手に持つ剣を肩に担ぎ先程よりも少しだけ早く歩く。その間も足は引きずっていた。


 彼奴は足が悪いのか?

 青鬼の足元を見ると、膝のところに細めの鉄パイプが刺さっていた。どうやら関節に挟んでいるらしく歩くたびに黒い血がチョロチョロ垂れていた。


「鬼でも痛みはあるのか?」

 元が生きていた人間ならば多少はあるのかもしれない。となると、相当な人を喰らってきたのだろう。

 師匠が言っていた。餓鬼は人を喰らい成長して行く。ある程度の制限はあるものの人ではまず敵わないらしい。その成長しきった限度が青鬼だと言う。

 多分今私が敵対しているのは元々人だった餓鬼が成長し青鬼のとなった姿なのだろう。

 厄介極まりない相手だと言うことは赤子でもわかるだろう。


「…………」

 青鬼は私に剣を振るった。

 くっ!

 私は青鬼の振るった剣を受け流すように刀を斜めにする。

 感性に任せた一撃が刀を滑るように流れそして、地面に深く突き刺さる。岩や砂埃が舞う。


 鬼の身長程ありそうな剣は地面に深く突き刺さる。私が、この隙を見逃すはずがない!!!

 首を頂く。


 だが、私の刀は動かなかった……。

 あまりの斬撃により手の神経が一時的に麻痺してしまう。

「い、クソ!!」

 仕方なく私は距離を取る。

 足がもつれ、足首をひねってしまう……。


 青鬼は剣を抜いた。

 獰猛な笑みを浮かべ、重い片足を引きずりながらも私へと飛んだ。

 鬼の姿は太陽と被り、視界を奪った。


 私はただ防ぐことしかできない。

 上段から降り抜かれた剣を受け止める。


 火花を散らしす。刀は大きくしなり私の腰にダメージを負わせる。

 足は地面に埋まり、先程捻ってしまった足首が踏ん張りを効かせない。


 剣に押され徐々に体制を低くせざるおえない……!

 ジリジリと押される恐怖に押しつぶされそうになる。青鬼の顔はますます歪み人を食いたそうに口を開ける。よだれを垂れ流した歯の隙間には人の髪の毛や血だまり、目玉が見える。

 思わず身を引くが、青鬼がそれを許さない。


 足を引くとジリジリと鬼も距離を詰める。

 じり貧と成りつつあるこの戦況で取れる行動は限られる。逃げることも押し返すことも出来ない状況で今、私が出来ることは……。


 ふぅ、三、二、一……私は片手を刀から外し、刀を斜めにして剣をずらす。青鬼は咄嗟のことで反応出来ず、体制を崩した。

 私はその隙に鬼の目に地面に沢山ある砂を投げつけた。


 痺れていた手もだいぶ治り、全開ではないが動けない事はない。

 目を潰された鬼は目を擦り付ける。ゴツゴツとした手は鬼の皮を抉り、赤黒い血を吹き出さす。

 その血によって地面は赤黒く染まる。


 私は剣を再度両手で握りしめ、鬼の首もとに剣を添わせ力いっぱいに振り切った。

 首を切られた鬼は、手で何かを探るように動かすが、剣を落とし武器もない。

 こんな雑魚に私はやられない。


 私は青鬼だったその物の心臓の上に刀を置いた。そして、ゆっくりと苦しめるように捻りを加えつつ差し込んだ。


 際奥まで刀を差し込まれた鬼は、動かしていた手すらも動かなくなり紐が切れたかのように地面に倒れてしまった。



「たお、した……」

 だが、安心するのはまだ早かった。


 辺りを見渡せば赤鬼達が跋扈ばっこするこの地帯……多少頭のネジが飛んでいないと正気を保って居られない。でも、私はまだ、正気でいてはならない。何故ならばあいつらを憎しみを持って殺さなければならないから。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ