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やっべ遅れた。
新展開まではもう少しかかる予定。
続編にきたいー
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「そこに腰掛けてろ」
指差された先にある赤いソファーに私は座った。
この家に似合わない赤い色、その他にも緑や青などの原色に近い色がずらりと並ぶこの家は色にあふれていた。
奥から出て来た女性は手にはコーヒーを持ちもう片方には砂糖菓子を持つ。
「あら、御客さんなんて珍しいね。あなた」
「うるさい、それよりもありがとう」
「当たり前よ」
何気ない会話をし、お互いの好意を認め合う。
「あ、あの……」
「すまない、この人は俺の妻でカレンという、そしてこの子が夜見だ。ほら、俺の師匠の孫らしい」
「あの、魔王のお孫さんですか。へぇ〜可愛らしい子ですね」
カレンと呼ばれた女性は師匠曰くドイツ人らしい。
訛りのない話し方はまるで日本人そのもののようだ。
「日本語が上手い、ですね」
「あら、ありがとう夜見。ここはあなたの家と思ってもらって構わないわ。なんでも好きにおっしゃい」
「その、そこまでしてもらわなくても」
口元に手を当て、ふぅ、と息を漏らす。
それからやれやれと肩を振り私の元へ歩いて来た。
「え、えっと」
「貴方はね、これまで辛い人生を歩んで来ました。常人なら既に廃人になっている筈なのよ。人を鬼を殺した貴方は普通の人ではないの。だから歩がここに連れて来の、分かる?」
コーヒーを一口含み、砂糖菓子を口にする。
砂糖菓子の甘みが口いっぱいに広がり悶えるカレン。
その様子をコーヒーを飲みながら見る歩と呼ばれた師匠はなんとも言えない死んだ目をしていた。
相変わらず赤いソファーに座っている私はと言うとホットミルクを口にする。
「熱い……」
猫舌の私は舌を火傷してしまい、ヒリヒリする舌を巻いて熱を逃がしていた。
「それで、歩。これからどうするの? 修行させるのは良いとして何処でやるの? それにどんなことをやろうと思うの、まさかあれをやる気なの?」
師匠は言葉を詰まらせ、苦笑いを浮かべる。「そうだ」と一言口にしまたコーヒーを飲むのであった。
「はぁ、あれをやるにはまだ若いわ。もう少し待ってあげても良いんじゃないの?」
「いや、この子にはあれが必要だ。それに、夜見なら耐えられる。寧ろ耐えてもらわなければやる意味がない」
「でも……」
カレンは服を握り、バツが悪そうに顔を伏せる。
「その辺は俺が考えてある。それに大丈夫だとも思うし」
「貴方がそう言うなら、良いのだけれど」
カレンは溜め息を一つだけこぼし飲み干してしまったコーヒーのコップを持ちキッチンへと行ってしまった。
「さて、夜見。俺たちが話して修行に関しての話だ」
「はい」
空になったコーヒーカップを皿に置き、腕を組んだ。師匠は私を見据え
「さて、と。これから夜見お前にはある場所に行き、鬼を倒してもらう」
「はぁ、それはどこですか?」
「ん? この街に降りれば分かるさ。さて、この腕輪を腕につけなさい」
師匠渡されたこの腕輪、幅は約三センチ、中央には緑色に光り輝く宝石が埋め込まれる。
黒光りするフォルムは磨かれている為光が反射する。
「あの? これは?」
「暴魔封じの腕輪だ」
私は腕輪をつけた。特に何も起こる事なく、すっぽりと腕にフィトした。元から私のものだったように……。
「これは、お前の中に封じられている鬼の力を一時的に封じるものだ。これによってあの時のような暴走を防ぐ役割を持つ」
私は剣を抜いた。
何も起こらない。剣も口をパクパクさせず大人しい。
「…………」
「なんだ? 体でも痛いのか?」
「いぇ、特には。でも、あの時の嫌な感じが全く感じません」
ふむふむと首を小さく縦に振り納得した。
「それはお前の爺さんの使っていたものを少し改良してお前様に作らせたものだ。といっても十年も前のことだがな」
私は納得した。あのお爺様も使っていたのならば安心だ、お爺様もこの腕輪を使っていたということはあの霧を気にしていたということ。成る程……やはりあの霧は良くないものなんだ。
確か師匠も苦しそうだったから。
「夜見、今日は良く休め。修行は明日からだ」
「はい、分かりました」
◇
私はお風呂に入っている。
木造で作られたお風呂、杉の木の香りがする。風呂にはハーブが浮かべられていた。
私はお風呂に入ったことがない。と言っても体を綺麗にしていないと言うわけではない。しっかりと水浴びはしていたし、布で体も拭いていた。
「ふぅ」
体を石鹸で洗い、シャワーを浴びる。
髪の毛もボサボサだと奥さんに言われ洗って貰った。
背中には鬼に受けた傷がいくつも目立つ奥さんは優しい目をしている。
その傷は? と聞くと首を横に振り「なんでもないわ」と言い優しく流してくれた。
きっと幼い時に受けたのだろう……傷はもう治りかけている。けれど、完全には修復することが出来ない傷となるとここまでしても治らないものなのだ。
私は、私の成すことに自信をなくしてしまう。私はこれから多くの鬼を殺すのだろう。そして、幾人もの人々を救い崇められる?
いや、違う。恐れられるのかオチだろう。
なんせ、この剣と力を持つものだ。
そうして、私は湯船に浸かる。
長旅は疲れた……休もう。純白の肌に一枚のハーブが浮かぶ。手ではねのけてもまた別の葉が乗る。
私にもこんな存在がいつか……。
私はそう思い、頭までお湯に浸かるのだった。
◇
夜が明けて、次の日。
森は静かでゆらゆらと木々は揺れた。朝日に照らされた家はどこか日向ごっこをしている様にも見える。
師匠は銃をホルダーにしまい、弾数を数えている。奥さんはパンを焼き、コーヒーを入れている。
私は既に準備を整え、パンとサラダをむさぼるように食べていた。
「準備できました」
「よろしい、俺も飯を食べたら行く。少しだけ待ってくれ」
師匠は手を止めテーブルに用意されている食事に手をつけた。
今日の朝ご飯は食パンを焼きバターを塗ったもの。サラダはレタス、トマト、きゅうり、パプリカ、それとトウモロコシを和えたものだ。ドレッシングは私はマヨネーズ。師匠はゴマドレッシングだ。
好みはあるが、このマヨネーズなるものは美味だ。持ち歩こうかな?
ご飯を食べ終えた私と師匠は車に乗りこむ。
油と血とタバコ臭い車内は、所々にゴミが散らかり掃除が行き届いていないのがすぐにわかった。
師匠は昨日乗り回した車には乗らず、家に元々置いてあったスポーツカーに乗る。
何故なら早いからだそうだ。なんとも、考えが幼稚だ、早ければいいというものではないのにと私は思うのだが、師匠はなぜかご満悦らしい。
乗り気でハンドルを操作し、エンジンをふかしていた。
うるさいと奥さんに怒られると舌を出しテヘペロと口に出すと、奥さんはやれやれと手を振り、私たちを送り出してくれた。




