14夜見の料理は命がけ?
今晩は〜?
猫風邪って大丈夫ですかね。
14
お爺様の怪我の手当てが終わり、私が食卓に立ち料理をしていると居間から男性の声が聞こえてきた。
「師匠、この匂いは何ですか?」
「分からない、猪肉を焼いているのはわかるが、この匂いは分からない」
無理やり付いてきたお爺様だったが、やはり傷が深く、やっとの思いで先程は付いてきたらしい。がやはり歳が原因なのだろうが、立つのがやっとらしい。
そんなお爺様を私が無理をさせる訳にもいかず、客間も兼ねている居間に居てもらっている。
そんな中、聞こえてきてしまった声に私は耳を貸してしまった。
なにぶん、居間と台所は壁一枚を隔てて隣り合わせとなっているからだ。
いくら小声で話そうと、電化製品の一つもない我が家では無音に等しい環境で些細な音でも耳に入りやすい。
さらに聞き耳を立てていると……。
「師匠、焦げ臭くないですか? なんか、布が燃えてるような?」
「た、確かに……」
「確認とかしなくても」
「いや、傷が痛くてな」
唸りながら男は腕を組み、襖を少し開け、私の事を覗く。
そのことに気が付いている私は、知らぬ存ぜぬで通す為、菜箸をてにフライパンを激しく上下させていた。
それを見た男はプルプルと顔を震わせ、額からはダラダラと汗を流す。
「し、師匠……俺たちは何を食べさせられるのでしょうか? 俺、あんなに黒い猪肉を見たことがありませんよ……どんな教え方したらドス黒い肉が焼けるんですか!! それに、スパイシーを通り越してこの目や鼻にくる刺激臭は何ですか!!」
「も、文句が多いぞ……ききき、きっと美味しいと思う? ぞ?」
お爺様は男から視線を外し、目に涙を浮かべ、肩を震わせていた。
(うん、きっと私が料理をしていることに感動しているだ。そうに違いない)
お爺様と、男の本音は違ったがそんな事を露知らず夜見はルンルン気分でダークマターを生成して行く。
きっと宇宙はこんな神様によって作られたんじゃないかと錯覚してしまうくらいに。
数分の後、運ばれて来た料理の全てが黒く紫色の霧が皿をかくす。さらにスープは赤黒く、ポコポコと吹き出る気体からは硫黄や塩素系の臭いがプンプンする。
(ゴクリッ……これ、食べ物じゃないよね。これ食べたら死ぬよね……あぁ、死ぬならせめて洗浄が良かった……)
お爺様か男かどちらがそう考えたかは定かではないが、食べたくない!! と思ったのは恐らく二人ともだろう。
料理を目の前にして、箸を持つ二人。
エプロン姿の夜見はとても可愛いと思うし、愛してるとまで言い切れる。
は! 昔何処かの料亭で聞いたことがある。愛情はどんな調味料にもまさると、なればこそ夜見が愛情いっぱいに作ってくれたこの料理不味いはずがないのではないか? あれ? おかしいな……頭ではそう思ってるのに箸が腕が動かない……。
〈体が嫌がってる〉
「うそ、だろ……」
不意に口にした言葉が夜見に届く。
「ん? お爺様どうなされたのですか? 何か嫌いなものでも入っていましたか?」
「い、いや……そ、そんな……事は……ない……ぞ?」
汗を掻きまくっているお爺様は遂に涙まで流してくださいました。
そんなに私が作った料理に感動していてくださるのですね!!
「お爺様! そんなに私が作った料理が美味しそうに見えるのですね。私とっても嬉しいです」
「良かったですね師匠。夜見ちゃんが喜んでいてくれますよ。これでいつ死んでも食いはなさそうですね」
「おい、悔いと食いは間違えるなよ」
ギロリと男の顔を覗くお爺様はどこか必死でした。
「あの〜食べないんですか? もしかして美味しくなさそうとか?」
「いや、そんな事はないぜ」
「夜見、お前が作ってくれた料理じゃ美味しくないわけがないだろう」
「でも、私が料理を運んで来てから十分程度経ちますが御二方一度も箸をつけていないじゃないですか」
私がチョッピリ威圧を込めて言うと、再び二人はゴクリと生唾を飲み、ゆっくりと箸を料理皿に伸ばす。
ジュウ
(おい、箸が溶けたぞ)
(はい、溶けました師匠)
(これ食べたら間違いなく死ぬぞこれ)
(はい、死にます)
「あれれ? お爺様箸が溶けてますよ? どうしたのですか」
「あ、あれじゃよ。今日が箸の命日だったんじゃろう。気にすることではない」
師匠言い訳が酷すぎますよと、顔で表している男はお腹をさすり自身は満腹だと言う事をジェスチャーで示そうとするが真顔で腕を掴まれた男は腕を掴んで来た師匠の顔を見た。
(げっ!)
(食え)
(これを、ですか」
(そうだ)
(はい)
◇◇◇◇◇◇
どんな戦場からも逃げはしなかったお爺様と、それに付き添って修行をした男は初めて戦略的撤退をしいられることになった。
◇◇◇◇◇◇
「最初から俺が作れば良かった……」
「もう、最初から言ってくださいよ。美味しくなさそうだって。その方が効率が良かったのに」
「…………」
「…………」
押し黙る二人は、コクリと頷き席に着いた。
「全ての生きとし生けるものに感謝を込めて頂きます」
「いただきます」
「頂きます」
黙々と食べ進める夜見は昨日自身で作ったご飯のことを少しばかり考えていた。
そう言えば、私の舌がおかしいのって半分はお爺様の所為だよね?
夜見は他人に罪をなすりつけるのが一段階上手くなった。
中庭に面している居間からは池が見え、時折鯉が餌を求めて上に上がって来たりして暇をかかない。
「なんか、とても優雅ですね師匠」
「そうじゃな」
お茶を啜り、目を細めて先ほどまでの喧騒を忘れようと心を落ち着かせる。
時折、鯉がポチャリと飛び跳ね、空にいる虫を捕らえては食べていた。
「そう言えば、何か忘れている気がするのは俺だけでしょうか?」
「どう言うことじゃ」
「いえね、何かとても大切なことをやっていないって言うか、そう、結界とか」
その言葉を聞き、お爺様は大量の冷や汗を流す。
「お爺様?」
「しまった! わしはなんという事を」
その時、遠方から何かが飛んで来た。
止めも早く、肉眼で捉えるのもやっとなほどに。
しかも、それが見えているのは私だけ。
「お爺様は危ない!!」
一足、遅かった…………。
そこにいたのは心臓を一突きされたお爺様の姿が。
「お、お爺様……」
「…………」
「いや、死んじゃダメ」
「…………」
また、殺された。
また、殺された。
また、殺された。
また、殺された。
また、殺された。
また、殺された。
また、殺された。
…………許さない。
…………決して。
許さない。
私の中で、何かブチ切れる音がした。
それは、切れてはならないもの。
私は久し振りに激昂した。
はい、超急展開きました。
まぁ、分かる人には分かるとは思いますけどね。
振りは多少ありましたし。
まだ、夜見ちゃんは雑魚ですのでご注意をなんてね




