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片刃と両刃ってなんなの? 世界の常識はなろうの非常識か

 今回は、どこかで見かけたエッセイにあった『勘違いあるある』をネタにお話しようと思います。


 大した話ではないので、ここでは『アイネ』さんとその旦那のダーリン三男坊のトークという形で始めたいと思います。ん? だって本当に常識がないんだもん。アイネにビシッ!! と言って貰わないと。(やれやれポーズ)




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 王都の屋敷で久しぶりに三男坊に再会したアイネ。落ち着きがない彼女は、ネデルや帝国、法国へと漫遊の旅を繰り返していたからである。(詳しくは、『アイネさん漫遊記……おねえちゃんが見た!』にて!!)


「やあ、元気そうで何よりだねハニー」

「ダーリンはちょっと疲れ気味みたいね。何がどうしたのか、お姉さんに話してみなさい」


 三男坊は、とある新入団員見習に武具の説明をしていて、とても難儀したという話を始めた。


「ハニーは、『ナイフ』と『ダガー』の違いってわかるかい?」


 アイネはそんな事かと「勿論」と自信満々に答える。


「この『天使の商人』と呼ばれるアイネさんに愚問だよダーリン。直角三角形のような断面の『片刃』の物がナイフ、菱形もしくは正三角形のように左右に均等な断面が『両刃』の物がダガーだよ」


 そう、この片刃と両刃が曲者なのである。


「でも、ハニー、剣にも片刃と両刃があるよね? これは何がどう違うのかな」


 どうやら、見習野郎はいわゆる『半可通』という奴だ。わかりやすくすれば知ったかぶりということである。


「うん、まず最初に、ダガーとナイフは同じ程度の短い刃物だね。そして、切れ味や刃の耐久性を求めると、身の厚い両刃の『ダガー』になるね。でも、扱いやすさ、コントロールのしやすさ、砥ぎやすさは片刃のナイフの方が便利じゃない? 道具としては『ナイフ』を、武器や荒っぽい使い方……例えば鉈やスコップ代わりに地面を掘り返すのなら『ダガー』を選択するってところかな」


 そのほか、ガード(つば)の有無等も目安になるだろうか。ダガーであれば、しっかりとした物が付くし、ナイフなら無いものが多い。


「正解。そもそも、直角三角形の刃の断面の剣や槍を作る理由が意味不明だ。それは大前提として、ハニーの説明した『道具としての片刃の刃物』をナイフと呼ぶと決めているからだね」


 つまり、ナイフは片刃なのであり、わざわざ説明する必要はない。片刃の短い刃物をナイフと呼ぶのだ。


「で、そのキッズは何が言いたいの?」

「ああ、片刃と両刃にはその両方の意味があるわけだよね。剣の片刃と両刃と言えば、刃の断面は言わずもがなの『両刃』に決まっているんだ。そして、『剣身(ブレード』の両側に刃がある物を『両刃』、切っ先の部分だけ『両刃』の物を『疑似両刃』、片側だけの物を『片刃』と呼ぶんだね。それを、ナイフとそれ以外の両刃の刃物を説明する言葉と混同するんだよ」


 アイネはイラっとした顔を一瞬すると、良い笑顔で言葉を返した。


「うん、その馬鹿はダーリンの部下に相応しくないからクビだね。馬鹿の相手をするのは時間の無駄でしょ?」


 三男坊は「そうもいかない」と反論する。どうやら、それなりに名のある貴族の子息らしく扱いが面倒だというのだ。


「めんどうなことは妹ちゃんに全振りだよね☆」

「……またリリアル男爵に嫌な顔されるのでは?」

「平気平気、後腐れ無く叩きのめす事ができるんなら、妹ちゃんは喜んで協力するよ多分」


 ということで、三男坊はリリアルを表敬訪問するという計画を立て、その供廻にくだんの見習を連れて行く事にした。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 事前に『聖エゼル海軍』の提督として、今後の装備についての意見交換を行いたいという申し入れをしておいた三男坊。リリアルは専門の工房を持ち、一般的な『騎士』とは異なる考え方で装備を整えているので、意見を聞きたいという申し入れはおかしなことだとは思われなかった。


「……姉さんは何故同行しているのかしら?」

「それは、ダーリンの行く先にアイネさん在りだよ妹ちゃん。一緒に王都にいる時間が短いからということと、聖エゼルならサボアの騎士団の理事も務めている私にも参加する権利ぐらいあるんだよ☆」


 あちらこちらで暗躍している姉は、顔を広げて知らぬ間に関係者を増やしているのである。


 工房の一角にあるダイニング兼会議室。会議をする事はないのだが、食事をしながら職人同士が情報交換をするので『会議室』となっている。


 既に、話は老土夫と癖毛に伝えられており、リリアルの個人装備の剣や銃などが架台に並べられている。


「素晴らしい装備ですね。すべて『魔銀製』でしょうか?」

「ん、魔銀鍍金の物が大半だな。コストと、魔力を切らした際にも得物として生かせる故、魔力の少ない学院生用にそっちがメインだ」


 総魔銀で揃えるのは魔術師とはいえ、魔力の量に難のあるリリアル生には扱いが難しい。剣として魔力が無くとも扱えるようにしてあるのだ。それは、槍などにおいても同様である。


 供の見習君は、感心したように見ており、時折手に取ろうとするが「許可なく触れてはならん」と三男坊に窘められている。不服そうな顔を隠そうともしないところを見ると、今まで命令することに慣れていてまともな教育を受けていないのかもしれない。


 こんなガキ、王国の騎士には不要だわと彼女が内心思っているとはつゆ知らず、見た目だけは『妖精騎士』であるリリアル男爵に見惚れたり、時折話しかけようとして周りから注意されているのにちっともめげない見習である。


「リリアルでは片刃の剣が多いようだね男爵」

「はい。冒険者として活動すること、その際、斬り込む事も多いのです。その場合、魔力を纏って一気に斬り抜くことになりますので、切れ味のよい反りのある片手剣を主に使います」


 両刃の剣は打ち合い、斬り合いの際は刃の有無を気にせず済むというメリットがあるものの、気配隠蔽からの急襲・強襲を得意とするリリアルの戦い方には片刃の曲剣が合っているのだ。


「両刃は騎士として見栄えはよいですし、護身の剣としてはバランスも良く使いやすいと思います」

「ちょ、ちょっと待ってください!!」


 見習が口を差し挟む。


「……何かしら。提督と私の意見交換を断りもなく妨げるほどの問題なのでしょうね?」


 冷ややかな笑顔の彼女、そして、良い笑顔の三男坊。超真面目な顔でうんうん頷く彼女の姉を横目で睨みながら彼女は見習に問いかける。


「お名前は……」

「ぺ、ペイジです」

「……そう。ではペイジさん、何用でしょうか」


 見習ペイジは、意気揚々と捲し立てる。片刃という言葉には二種類の意味がある。刃の断面の形状と、剣身の片側にのみ刃があるという意味だ。この場合、どちらの意味かはっきりさせるべきだと。


 期待に膨らむような顔をするアイネ。ドヤ顔のペイジ。やれやれとワザとらしいポーズを取る三男坊。彼女が口を開こうとしたのだが……


「やれ、見習未満は黙っておれ」


 低い声で老土夫が有無を言わさず話を遮る。


「な、ぶ、無礼な」

「良く知りもしない見習未満風情が、大人の会話にくちばしを挟むでない。よいか、片刃のナイフは存在する。両刃のナイフも……存在しないでもない。だがな、ダガーや剣に刃の断面が片刃の物が普通に出回っているという話は聞いたことがない。なぜ、そんな切れ味が悪くなるような工夫をする必要があるのだ?」


 単純に、道具としての使い勝手を考えて片刃にしているだけであり、切断力や刺突力をあげる武器をわざわざ片刃にする必要はない。


「意味のない事だから省略しておるのだ」

「……そ、そんな事は誰も……」

「言わなくても考えればわかることだから、敢えて説明しないのよ。それは、説明された事しかわからない人は武具なんて考えるべきではないからでしょうね」


 見習ペイジは石のように固まり、そのまま学院を出るまで一言も話しをすることはなかった。





「姉さん」

「何かな妹ちゃん」

「わかってるでしょう。面倒な人間をリリアルに連れてきて私に処理させるのは止めてちょうだい」

「いやほら、家族は助け合うものじゃない?」


 そう言われるとちょっと嬉しくなるちょろい彼女であった。






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本作の元になっている長編。
『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

新作投稿しております!!
マッチ売りに聖女  シスター・クリスは人魚姫を助けるために巡礼街道の旅に出る。

このお話は、『妖精騎士の物語』の三百年後の世界ですがリリアルとは関わりありません。
魔術や精霊の存在が廃れ、忘れ去られつつ科学が生活に広がってきた時代となります。

Web音声合成サービス『CoeFont STUDIO』にて、プロローグの読み上げを作ってみました。Voiced by https://coefont.studio

☆レイピア考【音読】☆
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