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Sorcerer★Story~異世界魔法物語~  作者: 男爵
地獄よりも燃える男
20/23

08

「あー、気持ちよくね? つーか、満足じゃん」


 首輪を付けられ冷たい石に倒れている私――女王である私がこんな目に合うなんて許せない。

 私は主導権を握られるのだ大嫌いなのに。

 こいつ――知ってて技とやってやがる。


「シブキ……」


 こんな目に合わせた相手を思い切り睨みつける。『魔法』が使えればこんな奴に好き勝手されないのに。


「あ、そんな睨むなって。その首輪――外してやるからよ」

 

 パチンと首の方から音が聞こえ、首輪が地面に落ちた。外れた瞬間に体に力が戻っる。

 これなら思う存分に戦える。


「ほら、立てよ。女王様――こっからが本番だろ」

「なめた真似してくれちゃって♡――『限定魔法』」


 愛嵐舞ラブ・ランブ

 あの『異世界の魔法使い』にはやぶられたけど、普通の魔法使いになら負けはしないのよ。

 私の『魔法』は生まれた時から誰にも止められない。

 私が負けたのは相手が『異世界の魔法使い』だったから――あれは例外だし。


 「はは、これすごくね?」


 首輪がなければこんな牢獄など簡単に壊せる。

 牢獄もろとも私は吹き飛ばす。


「はは、これで終わりなの♡ まだまだやり足りねーぞ! お前が私を支配しようなんて、その罪はでけーんだよ」


 牢屋と共に吹き飛んだであろうシブキを探す。私を怒らせたんだから――この程度で済ます訳ないじゃない。

 ふー。と、私は空中へと浮かびあたりを見回す。


「かはは」


 笑い声と共に牢獄の瓦礫の中から這い出てきたシブキ。

 ダメージは全然ないみたい。

 普通の『魔法使い』よりもいいじゃない。

 まあ、そうじゃないと――この恨みは晴らせない。死と言う死を見せつけてやる。


「流石に王じゃね? つーか、レベル違うわ」

「今の私は――切れてるからさ。お前がしたみたいに嬲りに嬲ってやるよ♥」

「それ――楽しみじゃね?」


 シブキは立ち上がり『魔法』を使う。

 『騎士団』の特攻大量であるシブキ、この男の『魔法』は確か、

 

「『限定魔法』――百器夜鋼ひゃっきやこう


 シブキの周りに無数の刃か浮かぶ。自在に見たことのある武器を精製する『限定魔法』かな?

 いきなり使ってくるなんて本気じゃない――じゃなきゃあ首輪外さないよね。

 


「へー、『限定魔法』見せてくれるんだ」


 属性『鋼』。

 『騎士団』の武器庫にして特攻隊長。

 シブキの名前は聞いてはいたけど――『限定魔法』が使えたんだ。

 これならちょっとは楽しめそうじゃない。


「王の『限定魔法』に出し惜しみは――つーか。無理じゃん」

「いい判断♥」

「それじゃあいっちょ行きますか」


 シブキは浮かんでいた刃を掴んで私の元へ駆けてくる。中々動きも早い見合いだけど、私の『限定魔法』は攻守一体の魔法。

 動きがどんなに速くても関係ないよね。

 だけど――まさか、あんな方法で破りに来るとは思わなかったわね。

 シキちゃん、実行したのは『異世界の魔法使い』だけど多分あれはシキちゃんの作戦ね。


「近づいても無駄だけど――まあ、近づけないか♡」


 私の纏うこの風は『魔法』すらも近づけない。火だろうが水だろうがすべて吹き飛ばす。そんな私の『限定魔法』へと、自ら突っ込んできて勝手に空ぶってるシブキ……笑える♡


「あー、受ける♥ そう、もっと笑える姿をさらしなさい。あんたはもうそれしか生きる価値がないのよ。私に挑んだ時点でね」

「かはははは。つーか、きついな」


 笑いながらも、きついと言いながらも次々に武器を変えて突っ込んでくる。

 ナイフ、槍、ハンマーに鉄爪。

 だけど、問題なのは武器じゃない。それくらいシブキも分かってるはずなんだけど……。


「あんたのその『魔法』――私と相性悪いみたいね」

「つーか、それは違うじゃん」


 空中で新たに武器を生産し、シブキはそれを投げつける。しかし、そんなやけくそな攻撃が私の風を通るはずも無い。

 

「だから無駄だって言ってるでしょ」


 私は両腕を前に突き出し巨大な風の球を作り上げる。あの『異世界の魔法使い』に負けて考えた――想像した私の新技。


「良い実験台がいるから――試しちゃお♡」


 竜巻を反らしたあの奥義――回転木熊。

 あれが薙ぎ払う事で風を反らしたのならば――反らす事の出来ない威力を作ればいい。

 一直線に走る一点集中の風。横向きに起こる竜巻この技は絶対に防げない。


「盾盾盾盾盾盾盾盾盾盾盾盾盾盾盾!」


 盾を何重にも突き出しその風を防ごうとする。しかし、私の竜巻が生成されたそばから吹き飛ばす。


「かはははは、がはっ」


 完全に防ぐことが出来ずにシブキは竜巻を受けて吹き飛ぶ。あー、すっきりする。

 ここでうっぷんを晴らしてまたシキちゃんの所にでも行こうかな? 


「うーん、首輪外してくれてありがと♡」


 そのお礼に殺さないであげるわ。私を傷物にしたのは許せないけど、意気って挑んできて無様に倒れるそのボケに免じて許してあげる。


「お礼はまだ早くね? つーか……そうじゃね」


 立ち上がるのも辛いのか、シブキは鉄の棒――持ち手が細く頭が太くなっている奇妙な棒を支えに立ち上がる。

 あんな使い辛そうな棒で何をするのかしらねぇ。


「はは、やっぱこれが一番に手に馴染むみたいだわ」


 シブキの前に先端のとがった弾。

 シキちゃんが使っている道具――回転シキ拳銃だっけ?

  その弾と同じ形状の鋼を作り上げる。それよりももっと大きいわね。


「あの道具がどうなってるか分からねえから――打つのは自分自身だ」


 一本足で体をひねる。

 その仕草は――少し『異世界の魔法使い』の奥義を思い出させる。

 私は背筋が冷たくなり咄嗟に新しい技――横に起こす竜巻を放つ。


「行けえええええええええええええええ!」


 鉄棒を振りぬき弾丸を打ったシブキは気合の入った声で叫ぶ。

 その弾は一直線に私の元へと飛んで来る。


「てい♡」


 弾丸と風がぶつかる。

 竜巻を押し進めてくる弾丸。

 私の想像以上の威力ではあるが止められない程ではない。序盤は突き進んできたが、進めば進むほどにその勢いは弱くなる。


「はは、残念♥」


 打った弾丸は私の纏う小さな竜巻に飛ばされてしまう。私の元までたどり着いた威力は認めるけど――あと一歩届かなかったね。

 『異世界の魔法使い』と戦って居なければ危なかったかもしれなかったけど。


「ああ。つーか、残念じゃん」

「惜しかったわよ。王の私にここまでさせるなんて……」

「ちげーよ。ばーか。残念なのはフウキ――つーか、お前じゃね?」


 シブキは仰向けに倒れる。

 倒れたままに――私の頭上を指差した。

 その先に見えたのは小さく丸い影。

 その影はどんどん大きくなって私の元へと落ちてくる。


「本丸はそっちじゃね? つーか、砲丸だけに」


 その大きさは私の何倍もある――咄嗟に風を集中させても止める事は出来なかった。


「キャッ!」


 私は地面に叩きつけられ潰される。


「俺の勝ちじゃね?」


 倒れたままに満足そうにシブキは笑っていた。女王である私の命は散る――蟻の様に踏みつぶされ醜く死んでいったのだった。


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