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7.ツイカ、後宮へ行く

 私をいびる伯母さんの家から金品を慰謝料として貰って、私はお祖母(ばあ)様の家に戻って来た。

 本当は実家に帰りたかったけど、伯母さんがお父様に会いに行っているから行けなかった。


「お嬢様。禾家当主から、お嬢様を素行不良により(のぎ)家から追放するとの書状が届きました」

「何ですって?! 伯母さんがデタラメを吹き込んだのね! 娘の私より、伯母さんを信じるなんて、酷い!」


 私がこんなに傷付いているのに、使用人は突っ立ったままだ。

 気が利かない。


「お祖母様は禾家の人間じゃないから、この家から出て行かなくても良いのよね?」

「はい。大奥様の遺言で、この家はお嬢様のものになっておりますので」

「良かった。それなら、良いわ」


 私の味方は、お祖母様だけ。



 暫くして、姉さんが後宮に入ったと噂で聞いた。


「私を陥れたのは、姉さんだったのね! 私の後宮入りを横取りする為に! 許さない!」


 私は、使用人に言った。


「私も後宮に入るわ!」

「無理です。お嬢様には、後ろ盾が居りませんので」

「居ないって、お祖母様の息子である伯父様は?!」

「旦那様は、禾家がお嬢様を追放しましたので、此方も念の為に追放すると仰いました」


 そんな! じゃあ、後宮に入れない?!


「ですので、我々はお暇させて頂きます」

「は?! 辞めるって、私を見捨てるの?!」


 使用人の分際で、主を見捨てるなんて!


「見捨てるも何も、私共の主は旦那様です。大奥様が、我々を旦那様から借りていらっしゃたのですよ。借りている間は、大奥様がお給金を支払うと。お嬢様は、お給金をくださいませんでしたし、旦那様から追放されましたから、私共は旦那様の元に戻ります」

「そんな事、私を見捨てて良い理由にはならないわ!」


 私が叱ると、使用人の分際で見下すように見て、後は無視して出て行った。

 私が皇后になったら、あいつ等も伯母様達も伯父様達も、皆、死刑にしてやるんだから!




 私が皇后になる為には、先ず、陛下に会わないと。

 その為には、宮中に何とかして入らないといけない。


 正面から外廷に入ろうとしたけれど、不審人物として捕まりそうになった。

 あの門番達も、私が皇后になったらただじゃ置かない!


(もう)し。お嬢さん。後宮に入りたいのですか?」


 何処かから入れないかと探し回っていると、フード付きのマントで身を包んだ女が話しかけて来た。


「そうだけど?」

「禾家のツイカ様ですね? 我が主が、貴女に協力したいと仰せです。私が何とかしましょう」

「本当?! 貴方達良い人ね!」


 そうよ! これこそが、世間の正しい在り方なのよ!



 深夜まで待って、漸く宮廷に入れて貰えた。

 宮廷の敷地を移動し、後宮へ向かう。

 後宮の端の方、今は使われていない辺りの管理が疎かになっていると聞いた。

 其処へ行くと壁に穴が開いていて、中に入る事が出来た。


「あの宮に、貴女の姉君がいらっしゃいますよ」


 暗いので、一回しか後宮に足を踏み入れた事の無い私には何処がどの宮だか判らないが、彼女には判るらしい。


「姉君に成りすまして陛下のお手付きになれば、お妃様になれるでしょう」

「そんな事しなくても、私を見れば、一目で気に入ってくださるわ!」


 姉さんの振りをするなんて、冗談じゃない!

 大体、胸の大きさが明らかに違うんだから、無理に決まっている。


「そうですね。ああ。そうだ。首尾よく貴女が皇后になれたら、此処までの協力のお礼を頂けますか?」

「お礼? 出世させて欲しいの?」

「いいえ。我が主の願いは、春宮妃・夏宮妃・秋宮妃・冬宮妃の処刑です」

「良いわよ。それ位」


 私は快諾した。

 男の身で陛下を誘惑したんだから、罰が必要よね。


「それでは、私はこれで。成功をお祈りしております」


 案内してくれた女が立ち去ると、私は姉さんに復讐する為に持って来た短剣を抜いた。

 姉さんが私の後宮入りを横取りしなければ、こんな苦労はせずに済んだのに!

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