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2.問題児ツイカ

「只今戻りました。陛下」

「何時もより遅かったな。何かあったか?」

「皆様は、何時も通りでしたが……。申し訳御座いません。私の妹が」


 私は、陛下に妹がしでかした事を報告しました。


「そうか。ツイカがそのような事を。どんな罰を与えるか……」


 陛下は少し考え込まれ、私に目を向けられました。


「ツイカが苦手な物は?」


 ツイカは治癒術が苦手ですが、陛下が尋ねているのはそう言うものでは無いでしょう。


「そうですね。……ナメクジでしょうか?」


 確か、以前ナメクジを見て悲鳴を上げていた筈です。


「そうか。では、後宮の無人の宮のナメクジを、箸で摘まんで集めて駆除して貰うか」




 その命令は、陛下の護衛の一人であるソウ様から伝えられました。

 代々護衛として皇帝一家に仕える(いぬい)家の者です。

 彼が、妹を見張ってやらせるそうです。


「姉さん。酷い! 妹の私より、あんな人達を信じるの?!」

「『あんな』とは何ですか? 貴女より身分が上の方達なのですよ」

「だから、何よ! 告げ口するなんて、最低!」


 其処で、ソウ様が口を開きました。


「お前は、何やら思い違いをしているようだが、この国で最も身分が上なのは何方(どなた)か判るか?」

「馬鹿にしないで! 一番偉いのは、陛下に決まっているじゃない!」


 ソウ様の方が自分より身分が上だと言う事は、解らないようです。

 ツイカの面倒を見てくださっていた母方のお祖母(ばあ)様に詳しく話を聞きたい所ですが、この間の冬に病死してしまったのですよね。


「では、何故、その妃を軽んじる? 陛下には、お前如きに軽んじられる程度の妃がお似合いだと言いたいのか?」

「そんな事思ってないわ!」

「では、どういう意図だ?」

「もっと、妃に相応しい人がいるって事よ!」

「そうか。陛下の目が節穴だと言いたいのか」

「違う!」


 私は、ツイカを窘めます。


「ソウ様に対して、その口の利き方はお止めなさい。無位の貴女は、ソウ様と対等でもなければ上でも無いのですよ」

「そんなの知らない!」

「そうですか。理解出来るようになるまでは、陛下の前には出せませんね」

「馬鹿にしてっ!」


 ツイカは、恐らく自分を過大評価しているのでしょう。

 理不尽に低い評価を下されていると感じているのではないでしょうか?

 困りましたね。

 一体、どう言えば、不当に低い評価ではないと解って貰えるのでしょう?


「お前は、(のぎ)家の娘だから、陛下の温情によりこの程度の軽い罰で済んだのだ。それが不満ならば、通常の罰を受けて貰おうか?」

「ナメクジを集めるのが、軽い罰?」


 怒りからか、ナメクジへの恐怖からか、ツイカの声は震えていました。


「当然だろう? 恐らく、流罪だろうな」

「流罪?! 当然の事を言っただけで?! 男が妃として後宮に入るだなんて、おかしいでしょう?!」

「貴女は、冬宮妃様方が、勝手に妃を名乗って後宮に入ったとでも思っているのですか?」

「陛下が妃にすると決められて、後宮に入れたのだぞ。お前の言葉は、陛下への非難だ」


 何を言っても陛下を非難しているだろうと決め付けられるからか、ツイカは涙目でソウ様を睨みました。


「正しい事を言って流罪は重過ぎると思うか? 身分が違うからだ。それが不満なら、身分制度の無い他国へ行けば良い。天国がお勧めだ」


 身分制度の無い国は、この世界に在るのでしょうか?


「で、どうするんだ? 大人しく陛下に与えられた罰を受けるか? それとも、本来の罰に替えて貰うか?」

「……やれば良いんでしょう!?」




 罰を通じて、ツイカは、益々ナメクジが苦手になったようです。

 そして、話を聞いた伯母様が、せめて治癒術士として使えるよう鍛え直すと言ってツイカを連れ去りました。

 とても厳しい方なので、心配です。

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