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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第四章 魔族領へ
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4.8.対峙!不定形の悪魔!


 投げた『空圧剣』が後方で破裂した。

 その余波で悪魔に少しだけダメージが入ったようで、風圧に押されて一歩足を進めて踏ん張った。

 次の瞬間、僕が拳を悪魔へと向ける。


「『爆拳』!」

「いやそれは駄目」


 ズォッと持ちあがった白い壁が悪魔を守った。

 勢いを殺しきれなかった僕はその壁に拳をめり込ませてしまい、中で爆発が発生する。

 しかし、完全に押さえ込まれてしまったらしい。

 ボフンッという籠ったような音が、白い壁の中で鳴って黒い煙だけが出てきた。


「うぇ!?」

「なんで攻撃するの! ちょっとまずお話させてもらいたいんだけど!?」

「知らん!」

「わっわっ」


 後方からアマリアズが『空圧剣』を投げ飛ばして破裂させる。

 だがそれも白い壁にめり込み、大したダメージは与えられなかった。


 っていうか何この壁!

 ちょっとこれ抜けないんだけど!?

 ふんぬぅうううう!!


 ググッと力を入れてみるものの、まったく抜ける気配がなかった。

 片手が完全に封じられてしまったらしい。

 それに気付いたのか、悪魔がひょいと指を振ると白い壁が大きく変形して僕を飲み込んだ。


「おわああ!!」

「宥漸君!!」

「ああ、大丈夫大丈夫……。ちょっとお話しできる状態にするだけだから……」

「はぁっ!!」

「だからお話聞いて!? 本当に!!」


 絶え間なく『空圧剣』を投げては破裂させるアマリアズだったが、そのすべてが白い壁に吸い込まれて無力化されてしまった。

 そこで、今の今まで圧縮していた『空気圧縮』を『空圧剣』に混ぜて放り込む。

 長い間急速に空気を圧縮し続けた物なので、威力は『空圧剣』の数十倍になるはずだ。


 アマリアズは咄嗟にその場から飛びのき、大木の後ろに隠れる。

 ここでもあの爆発に巻き込まれる可能性はあるが、離れすぎるのは良くない。

 悪魔はアマリアズが離れたことに違和感を覚えたようで、白い壁から顔を覗かせる。

 ほっと一息ついた瞬間、とんでもない衝撃が悪魔に直撃した。


 ッ──パガァアアンッ!!!!

 地面が抉れ、周囲の大木がほとんど吹きとばされた。

 大量の土砂が宙に舞い上がって土埃を立たせる。

 アマリアズのいた場所は辛うじてその攻撃を耐え忍んだようで、落ち着いたところですぐに飛び出して武器を構えた。


 すぐに『空間把握』を使用して悪魔の位置と宥漸の位置を把握したのだが……。

 二人は相変わらず同じ場所に居るということが分かった。


「うわぁ、すごいね……」

「なんっ!?」


 白い壁がどろりと溶けた。

 地面に大きく広がり、ほぼ一瞬で悪魔の足元へと吸い込まれていく。

 そして、そこいた悪魔は……溶けていた。


 上半身だけは悪魔の姿を保っているが、下半身は完全に溶けており、不定形の白い肉塊になって蠢いている。

 変幻自在の白い肉塊は、牢屋のような物を作ってその中に宥漸を閉じ込めていた。

 中では必死に脱出しようと拘束されてしまった腕に力を入れている宥漸の姿があったが、拘束はとても頑丈らしくほとんど意味がないようだ。


「んー、これは君も一回捕まえた方がいいかな……? ダチア様に怒られそう……ウチカゲにも……なんでこんなことに……」


 こちらに聞こえないような声でそう呟いた彼女は、少し顔を青ざめていた。

 それを見たアマリアズは、今使っている悪魔の魔法に制限があるものだと誤解したようで、攻勢の構えに出る。

 それに気付いた宥漸も技能で手助けをした。


「『空弾』!」

「! 『ツタ縄』!」


 空気の鋭い弾丸と、大量のツタが悪魔に向かって飛んできた。

 悪魔は白い肉塊の中に上半身を沈め、その攻撃を完全に無力化する。

 捕まえる者がなくなったツタは、とりあえずその肉塊に巻き付き始めたようだったが、それが動き出した瞬間、ぶちぶちと千切れてしまった。


 そして、白い肉塊が水の様に地面に広がり、とても速い速度でアマリアズへと直進する。

 気付きはしたが反応することができず、その白く伸ばされた肉塊を踏んでしまった。

 咄嗟に逃げようと足を踏ん張るが、その瞬間足が沈む。


「おっ!?」

「はい確保!」

「『衝壁』!」


 ズダンッ!!

 一瞬、半透明の壁が地面から勢いよく出現した。

 その攻撃は肉塊の下から生成されたようで、肉塊が一瞬空中に浮く。

 衝撃波による壁だ。


 攻撃にも防御にも使える発動速度の速い技能ではあったが、肥大化した肉塊にはあまり効果を発揮してくれなかったようだ。

 体勢を崩したアマリアズは白い肉塊に手を置いてしまう。

 すぐに手が沈み、引っ張っても抜けなくなってしまった。


 そこで、パンパンと手を叩く音が聞こえてくる。


「はいはい終わり終わり! もー、急に攻撃してくるとか貴方たちなんなの!? せーっかくダチア様とウチカゲに頼まれて助けに来たっていうのに!」

「「えっ?」」


 予想していなかった言葉が悪魔の口から飛び出たことにより、僕とアマリアズは思わず口をそろえてしまったのだった。


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