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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第三章 発覚
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3.28.姫様助けて!


 とにかく急いで前鬼城へと走っていく。

 道中、騒ぎを聞きつけた前鬼の里の鬼たちが避難をしていたり、武器を持った鬼たちが現場へと向かっている姿を何度か目撃した。

 あの様子であれば破壊された家屋に閉じ込められていたり怪我をしている鬼たちは何とかなるだろう。


 そちらは彼らに任せ、僕は姫様を呼びに行く。

 まだ真夜中ではないが……呼んだら出てきてくれるかもしれない。

 というか出てきてくれないと本当に困る。


 前鬼城付近にようやくたどり着いた僕は、『爆拳』を足元に撃って爆風に乗って跳躍。

 大きな壁を飛び越え、最短距離で前鬼城の二の丸御殿へど向かった。


 最短距離で向かったのですぐに到着し、玄関から入っていつも姫様が出てくる部屋に入る。

 襖を思いっきり開けると、そこには意外なことにケンラが座っていた。

 細目を少し開き、右脇には合口拵えの日本刀が置かれている。


「!? ケンラさん!?」

「宥漸君ですか。少々お待ちください、今姫様をお呼びいたしておりますので」

「え!? 呼べるんですか!?」

「はは、自分の魔法です」


 ケンラさんそんなことできたのか……!

 でもなんで姫様を呼ぶ必要があるんだろう?

 でもまぁ助かることに変わりはない!


 すると、ケンラが黙想を始めた。

 目を堅く瞑り、眉間にしわを寄せて集中している。

 しばらくそうしていると、周囲が何だか冷たくなり始めた。

 それに気付いた瞬間一気に冷え込み、畳から青い煙が出始める。


「……『魂呼(たまよび)』……!」


 パンッ、と手を叩く。

 次の瞬間、眠たそうな顔をしている姫様が天井からぬるりと現れた。


『むぅ~……なぁにさぁ……』

「姫様!! 助けて!!」

『へっ!? なに!? なになに!?』


 急に助けを求められたことにより、目が覚めたようだ。

 周囲をすぐに見渡し、その場にいる人物を見渡す。


『あれ、宥漸君? ケンラはいいとして……なんでここに? ていうか何の用?』

「姫様、緊急事態です。何者かが前鬼の里の北方面で暴れたらしく、被害が出ております。出陣されているウチカゲ様に変わってこの場をお任せしたいのですが」

『ああ、そういうね……。いいわよ。で、宥漸君は?』

「敵の情報を持ってるタタレバが大怪我して『死印』っていう呪い技能に侵されてる! 姫様は何か解呪技能もってない!?」

『うわぁそれは何とかしないとね……。ここまで持ってこれそうかしら?』

「む、無理だと思う……。敵と戦ったみたいで……」

『重症なのね』


 姫様の言葉にコクリと頷く。

 話し方からして、多分解呪系の技能を持っているんだと思う。

 予想が当たって良かったと安心する反面、姫様がここから動くことができるかどうか心配になってきた。


 だがそんな心配はしなくてもよさそうだ。

 姫様はすぐに頷き、ケンラさんに指示を飛ばす。


『ケンラ、貴方が一時的にこの場を取り仕切りなさい。やることはいつもとそんなに変わらないわ。ただ治療できる者を片っ端から集めなさい。瓦礫は誰でも何とかできるから』

「承知いたしました!」

『宥漸君、案内をお願い。何とか行ってみるわ』

「ありがとう! こっち!」


 僕は縁側から外に飛び出し、姫様を案内する。

 ケンラさんはそれを見届けた後、刀を拾って廊下の方へと走っていった。


 とりあえずこれでタタレバは何とかなりそう!

 良かった……。

 あとは姫様が辿り着くまで何とか持ちこたえてくれれば……大丈夫!


 姫様は僕の後ろを浮かびながら追従してきているようで、移動速度を合わせてくれているらしい。

 するとふよふよと浮かびながら、話しかけてきた。


『宥漸君、敵は誰か分かる?』

「……僕が山頂で連れて来た悪魔……の姿をしてた天使だったらしい……」

『天使!!? ぬぬぬぬ、まさかこんなところで……』

「何か知ってるの!?」

『ちょっとね。数百年よく息を潜めていたものね……。宥漸君、その話後でウチカゲに絶対しておきなさい』

「分かった。そういえばウチカゲお爺ちゃんは? 現場に向かったって聞いたけど」

『さっき目を覚ましたばかりだから分からないわ』

「あ、そっか」


 少しでもケンラさんに話を聞いておけばよかったな……。

 ウチカゲお爺ちゃん、キュリィの技能にやられていた可能性があるし。

 あ、でもお母さんが話をしに行ったから大丈夫か。


 うん、そっちは任せよう。

 今はこっちだ!


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[一言] 何て頼れる姫様なんだ(感動)
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