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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第三章 発覚
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3.18.山散策


 僕たちは毎日来ている森なので、この辺のことは誰よりもよく知っている自信がある。

 迷子は絶対にならないし、なったとしてもアマリアズの技能か僕の気配感知で帰り道は完全に把握することができるので、心配は一切要らない。


 僕が先頭を歩き、次にウチカゲお爺ちゃんとキュリィが一緒に歩いていて、最後尾にアマリアズがいる。

 ずっと警戒しているけど……そんなんだと、もし何かするつもりでも尻尾は出さないよ。

 ま、今はウチカゲお爺ちゃんもいるし大丈夫でしょ。


 今歩いているところは、僕とウチカゲお爺ちゃんが昔、宝魚を釣りに行った川原だ。

 細かい石が多いが、大きな岩もその辺に転がっている。

 昔僕が初めて『爆拳』を発動させてしまったところが生々しく残ってる……なんで。


 川に近づくにつれ風が強くなっていく。

 ここは風の通り道になっているようで、夏はとっても涼しいんだよね。


 ちらりとキュリィを見てみると、周囲をキョロキョロと見渡していた。

 こういう場所が珍しい、ということはないのだろうけど……記憶を失っている彼女にとってはいい刺激になっているようだ。

 記憶を取り戻した素振りは今のところないけどね。


「……わぁ……」

「川や山、などといったものは覚えているか?」

「うん」

「では、今日はこの辺りを見てみるか」


 そう言いながら、ウチカゲお爺ちゃんはゆっくりとした足取りで川の方へと近づいていった。

 それにキュリィもついて行く。

 僕はそんな二人を見送ってアマリアズの方を見る。

 すると、先ほどとまったくおなじで、怪訝な顔をしていた。


 僕の視線に気づくと顔を上げ、こちらに近づいてくる。

 真隣に来て座り込んだ後、懸念点を一つ上げた。


「記憶、取り戻させていいの?」

「それで善悪がはっきりするならいいんじゃない?」

「む……。返しにくい回答をするなよ……」


 もしキュリィの記憶が戻ったら、色々分ることがあるはずだ。

 なにより手っ取り早い。


 だが、アマリアズの言う通り記憶を取り戻したら何をするか分からないのも事実。

 もし悪魔の皮を被った何かだったとしたら、それこそ何が起こるか分からないのだ。

 ……とはいえ、それであれば完全悪として倒すことができる。


 良い奴ならこのままでいいし、悪い奴だったら追い出すだけだ。

 技能を持っているので悪い奴だった場合どうなるか分からないけど、こっちにはウチカゲお爺ちゃんもいるし、アマリアズもいる。

 どんなに強い相手だって倒すことができるはずだ。


 ま、僕はキュリィのことをそんな変な奴だとは思ってないけどね。

 アマリアズが考えすぎなだけなんだよ。


 明らかに無害そうだし、気配を消して逃げて来たっていう可能性もある。

 なんにせよ記憶が取り戻されない限りは、何も分からない。

 ウチカゲお爺ちゃんの友達の悪魔が来るまでは、このままでもいいんじゃないかな。


「それに、ウチカゲお爺ちゃんも記憶を取り戻させようとしてるんだよ?」

「私はウチカゲお爺さんがどういう意図を持って記憶を取り戻させようとしているかは分からないけどね~。もっと深い理由があるかもしれないし、私たちの考えよりも浅いかもしれない」

「ウチカゲお爺ちゃんに限って僕たちより浅い考えは持っていないと思うけどね……」

「そりゃそうだ」


 アマリアズは立ち上がり、二人の後を追った。

 僕もその後ろをついて行く。


 ウチカゲお爺ちゃんがキュリィの記憶を取り戻させようとしているのは、お友達の悪魔から何かを聞いたからかな?

 まぁ聞いていなかったとしてもこうするだろうけど……。

 会話の内容は教えてくれなかったんだよねぇ。

 ま、深く考えても今は分からないし、経過観察だけでいいんじゃないかな。


 そんなことを考えながら二人の方へと向かってみると、キュリィが森の中にポツンと咲いている青い花を面白げに眺めていた。

 ツンツンと触ったり、花びらを撫でたりしているようだ。


「魔力草だ。マナポーションの材料になる」

「マナ?」

「魔法を発動させるのに必要とするものだ」

「へぇー……」


 知識を得て、更に興味深そうに魔力草を眺めている。

 うんうん、やっぱりこうしてみる限りだと普通の女の子と変わらないね。

 いや、でも鬼の女の子はもう少し豪快だけど……。


 悪魔の女の子って結構おしとやかなのかな?

 キュリィ以外の悪魔にあったことがないから分かんないけどさ。


「どう? 何か思い出せそう?」

「ん、んんー……」


 そう聞いてみたが、キュリィはしばらく考え込んだ後首を横に振った。

 やはりこれだけでは何も思い出せないらしい。

 分かってはいたことだけど、記憶を取り戻すなんて方法は確立されていないし、この辺はキュリィ次第になる。

 もう少し見守っていく必要性がありそうだ。


 それからしばらく山を散策していたが、結局キュリィが何かを思い出すということはなかった。

 日も昇って昼食の時間が近づいてきたので、僕たちは一度前鬼の里に戻ることにした。

 なにか美味しい物を食べれば記憶を取り戻すきっかけになるだろうか?


 ……そういえば悪魔って何食べるの?


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[一言] 悪魔...食べ物...あっ(察し)
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