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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第三章 発覚
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3.12.知らない悪魔


 前鬼の里に戻ってきた僕たちは、アマリアズにベドロックのことを任せて一目散にウチカゲお爺ちゃんの元へと走っていく。

 その道中はなかなか遠いので、お医者さんの所に持っていくのが先か、とも思ったがお医者さんのいるところは前鬼城の反対側だ。

 これだったら前鬼城に持って行って中にいるお医者さんに頼んだ方が早い。


 なんでこういう時に限ってそんな遠い所にいるのかなぁ!?

 町医者って他に居ないんだろうか……。

 いや僕が知らないだけかもしれないから、あの二人に聞いてみるか!


 あぜ道を抜けて城下町に入る手前には門がある。

 そこではあの二人が門番をしているはずだ。

 しばらくするとカドマとカンヌキの姿が見えてくる。

 彼らもこちらの様子を見てただ事ではないと察してくれたようで、すぐに駆け寄ってきてくれた。


「おうおう宥漸! どうしたそいつ!」

「山奥で倒れてたから連れて来た! お医者さん近くにいないかな!?」

「カドマ、ここを任せる。俺は宥漸君と一緒にシシラさんの所に連れていく」

「わ、わかった! ほら行け宥漸!」

「ありがとう! カンヌキ案内よろしく!」

「おう!」


 カンヌキの案内の下、僕は前鬼城の町医者の所へと駆けていった。

 やはりお医者さんはこの前鬼の里に複数人いるらしく、城下町に三人いるようだ。

 その内カンヌキが良く世話になっていた老人の所へと案内してくれるらしく、細い道を何度か曲がってようやく目的地へと辿り着いた。


 ずいぶんと隠れたところに家があるらしく、知っている人でなければ辿り着けなさそうだった。

 しかし看板には薬草が描かれておりその横には『薬屋』と書かれている。


 そういえば前鬼の里の鬼たちのお医者さんは、薬屋兼医者をやってるんだよね。

 どっちもしなきゃいけないってのは大変だろうけど、こなしているお医者さんはいっぱいいるから凄い。


 カンヌキがノックもせずにその中へと入ると、シシラと呼ばれた老齢の鬼が薬を煎じている最中だった。

 女性の鬼だったようで、今背負っている女の子と任せやすいと少し安心する。


「シシラの婆さん!」

「わたしゃまだ若いよ」

「んなこたいいですからこいつ見てください!」

「んん~?」


 ゆったりとした動作でこちらを見るシシラは、僕を見て一瞬固まった。

 そして背負っている少女に気付いたようで、素早い動きで立ち上がると指示を飛ばす。


「カンヌキは湯を沸かしな。宥漸、ここに寝かせておくれ。カンヌキ、あと布をいくつか持って来ておくれ。三番と六番の薬棚から一つまみ薬草をだして煎じな」

「俺だけ仕事量多いですね!?」

「宥漸には話を聞くからね」


 カンヌキはすぐに走って水を汲みに行き、僕はそっと少女を床へと寝かせる。

 シシラがすぐに体を触り、脈や瞳を確認しながら僕に質問をしてきた。


「見つけた場所は?」

「川の上流」

「周囲に何かあったかい?」

「いや、特に何もなかったと思う。でも僕はこの子に気付けなかった。アマリアズが見つけたんだ」

「身を隠すことに長けていそうだねぇ。さて、悪魔だけど鬼と同じ治療法で何とかなるかね……」


 丁寧に体を触った後、外傷がないかを確かめ始める。

 服を脱がせ始めたので僕はすぐに後ろを向いて診察が終わるのを待った。


 しばらくすると診察は終わったようで、シシラが小さくため息を吐く。

 それと同時にカンヌキが水を汲んできたようで、土間に行って火を起こしたようだ。


「ふむ、大丈夫そうだね。傷もないし衰弱している様子もない。……ただ気絶しているだけだね」

「そうなの?」

「ああ。ただ腹が減っているだけかもしれない。起きる前に何か拵えますかねぇ~。おーいカンヌキ。ちょいと手伝いなぁ」

「今も手伝っていますけどね? ていうか俺の体は一個しかないですよ?」

「腕二つありゃなんとでもなる。薬はいいからそこの山菜取ってくんな」

「ああ、はいはい……」

「米炊くから洗ってな」

「はいはい」


 なんか向こうは楽しそうだなぁ。

 ていうか少し早めの夕食になりそう。

 まぁ僕が食べるわけじゃないけどね。


 ていうか悪魔とか初めて見たなぁ。

 いるってのはウチカゲお爺ちゃんから聞いて知ってたけど、実物を見るのは初めてだ。

 角とか触ったら怒られるのかな?

 うん、止めておこう……。


 すると、玄関の扉が開いた。

 誰だろうと後ろを振り返ってみると、そこには何故かウチカゲお爺ちゃんが立っていた。


「え!? ウチカゲお爺ちゃんなんで!?」

「シズヌマから話を聞いてな。悪魔が倒れていたと聞いたが」

「うん、この子」


 悪魔の少女が僕で隠れていたので、その場を少し避けてウチカゲお爺ちゃんに見せる。

 靴を脱いで上がったあと、立ったまま悪魔の少女を見下ろした。

 そして、眉間に深い皺を寄せる。


「……誰だ、この者は」

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