表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第三章 発覚
60/277

3.7.様子のおかしな魚


 それから二度ほど滝を越え、更に山奥へと来ることになってしまった。

 様子のおかしな魚はいくら探しても見当たらず、見つかったのは木の間を抜けて飛んでいく鳥くらいだ。

 川の中に落ちて流れていく葉っぱを見ながら、僕たちは少し休憩していた。

 さすがに歩き詰めだったので疲れてしまったのだ。

 この盥……邪魔だなぁ……。


「なかなかいないもんだね」

「だねー」

「まぁそう簡単に見つけられるとは思っていないけどさ。っていうかこの辺は山の奥だってのに何もいないみたいだ。私の『空間把握』でも何も見つけられないよ」

「僕も気配を感じ取ってはいるんだけど、危険そうなのは何もいないね。まぁいいんじゃない?」

「静かすぎるのは少し不気味なんだけどねぇ……」


 アマリアズがさらに上流の方へと目をやった。

 でもさっき鳥とか見たし、何もいないって訳じゃない。

 虫もいるみたいだったから森自体は死んでないと思うけど、確かに大きな動物はいないなぁ。


 食べるものが少ないから下の方に降りてるのかな?

 うん、それが可能性としては高そうだね。

 てことは里の方に獣が多いかもしれない。

 これもウチカゲお爺ちゃんに帰った時でいいから話しておこうっと。


 さ、休憩もそこそこにもう少し探してみようかな。

 ベドロック、いないと困るし……。

 まったくマレタナゴめ……なんて面倒くさい魚なんだ。

 畑仕事の敵だなぁ。


「よいしょっと。さ、行こうか」

「そうだねー。んじゃ私はさっきと同じように向こう側から探してみるね」

「了解~」


 アマリアズは『空圧剣』を作り出し、ふわりと浮いて対岸へとすぐに渡った。

 さすがに僕の技能はあそこまで小回りは利かないな……。

 まぁもっと技能が増えるかもしれないし、今後に期待ってことで。


 盥を頭に乗せて、川べりを歩いてベドロックの香で惑わされている魚をもう一度探していく。

 ここから先はしばらく滝がないらしく、ひたすら山を登りながらの捜索になりそうだ。

 とはいえ、ずいぶん上流に来てしまったからか、次第に川の幅が細くなり始めている。

 先ほどまでアマリアズに声をかけるときは大きな声をあげなければならなかったが、今は普通に声をかけるだけで会話をすることができる程に狭まっていた。


 こんな上流に本当に居るのかなぁ?

 とりあえず前鬼の里には二つの川が流れているから、最悪そっち方面も探してみないとね。


 パシャ。

 何かが跳ねるような音がしたため、僕とアマリアズはすぐにそちらへと注意を向けた。

 じっと観察してみると、再びパシャリと魚が跳ねる。


 あれは何の魚だろう?

 見たことのない色をしているけど……結構大きい。

 こんな上流にあそこまで大きな魚がいるもんなんだなぁ。


「……宥漸君。これ、当たりだ」

「え?」


 当たりってことは……これがベドロックの香に惑わされている魚って事!?

 本当に!?


 もっとよく見るため、僕は見やすい位置へ移動して観察する。

 すると先ほど跳ねた魚が二度、三度と同じ行動を繰り返し続けていた。

 よく見るとその魚は体中がボロボロで、跳ねると同時に石に体当たりをしている。

 どうしてそんなことをしているのかよく分からなかったが、いつの間にかとなりに来たアマリアズが理由を説明してくれた。


「あの魚はシールドデフレクタ。めちゃくちゃ硬い鱗を持ってる魚なんだけど、今はベドロックの香で惑わされていて、自分の鱗を剥がそうと石に体当たりし続けてる」

「ベドロックはそんな事もさせられるの?」

「うん。硬い鱗は噛み砕かない限り消化しにくいからね。ベドロックの食事方法は丸のみが基本だから、できるだけ鱗を剥がして食べようと思ってるんだと思う」

「な、なるほど……」


 確かに自分を守ってくれる鱗を剥がそうとしてるのはおかしいもんね。

 魚の種類を知っていたアマリアズだから気付けたのか。

 いやぁ、連れてきて正解だったね。


 でも川の中を見る限り、ベドロックらしき影は見えない。

 何処にいるんだろう?


「ここからそう遠くない場所にいるはずだよ。居るのは上流。香を嗅がせ続けないと惑わせる効果が切れるからね」

「だから上流に棲んでるんだね」

「そゆこと」


 なんにせよ、いるってことが分かった!

 あとは探すだけだけど……ここからが大変そうだなぁ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そういえばこの状況……父と同じ構図ですね(頼りになる相棒と一緒にVSベドロック)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ