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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第二章 友達と修行
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2.29.翌朝


 布団がとても暖かい。

 いつまでもこの中でごろごろとしたいところではあったが、僕は昨日のことを思い出して布団を蹴飛ばした。

 上体を起こして周囲を見渡してみると、そこはいつも僕が寝泊まりしている和室だ。


 そういえば、ここで姫様にウチカゲお爺ちゃんの所に飛ばされたんだった。

 あの魔法って何だったんだろう……?

 あ、でも姫様の場合は技能になるのかな?


 布団をたたみ、襖を開けて廊下に出てみると濃い気配が二つあった。

 ウチカゲお爺ちゃんとアマリアズだ。


 あそこはウチカゲお爺ちゃんの仕事部屋かな?

 そこで何か話しているみたい。

 多分行った方がいいよね……。

 アマリアズがこれからどうするのかも気になるし、行ってみよう。


 とてとてと足音を鳴らして廊下を進み、気配のある場所へと赴いた。

 襖を開けて中に入ってみると、そこには正座をしているアマリアズと胡坐をかいて、いつもの定位置に座っているウチカゲお爺ちゃんがいた。

 来ることは分かっていたみたいだけど、アマリアズは襖が開いたと同時にこちらを向いて手を振ってくれる。


「おはよう宥漸君」

「おはようアマリアズ。えっと、なにしてるの?」

「見て分からない? お話をしようとしてたんだ」

「僕も聞いていい?」

「宥漸君を待ってたんだよ。ささ、おいでおいで」


 アマリアズは手招きをする。

 僕を待っていたってことは……な、なんかまた嫌な予感がするなぁ……。

 でも今回はウチカゲお爺ちゃんが長い説明をしているわけじゃないから、気のせいだと思っておこう。


 手招きに誘われてアマリアズの隣りに僕は座った。

 っていうかアマリアズ、和服になって……る……?


 そこで僕はアマリアズを凝視する。

 背はとても低く、五歳らしい可愛らしさを有していた。

 触り心地の良さそうな灰色の髪の毛はショートヘアに整えられている。

 特徴的なのは瞳であり、色が白い。

 だが良く見てみると瞳の色は白に近い灰色のようだ。

 少しだけ不気味だったが、それは顔の良さで誤魔化されている。


「ああっ!!?」

「うわびっくり!! なに!?」

「わぁ! アマリアズってそんな顔してたんだ!」

「今!!?」


 だってあの時は一生懸命で顔なんてまじまじ見ていられなかったんだもん!!

 暗かったし!

 ていうか……なんか目隠しがないの逆に違和感……。


 アマリアズは驚愕の表情を露にした後、盛大に笑いだした。

 何か可笑しなことを言っただろうか……とは思ったけど、まぁ……もっと早い段階で気付くべきだったよね。

 でも気付かなかったんだもん……むぅ。


「ははははは~っはっは、はぁー。私も宥漸君の素顔は昨日初めて見たんだ。はははは、私も君と同じくあんまり顔を見ていなかったみたい」

「同じじゃん!」

「同じだね!」


 すると、ウチカゲお爺ちゃんが咳払いをした。

 話が進みそうになかったので自分の存在を今一度示したようだ。


 僕たちはそうだった、という風に姿勢を正し、ウチカゲお爺ちゃんに向きなおる。

 話を聞く態勢になった後、まずはウチカゲお爺ちゃんが話はじめた。


「……色々聞きたいことがあるが、良いな? 二人とも」

「「うん」」


 その返事に満足そうに頷いた後、まずはアマリアズを見た。


「アマリアズ。お前個人のことは後で聞くことにする。まずは、昨夜のことを少し聞きたい。なぜお前が狙われているか、心当たりはあるか?」

「心当たりはないよ。でも、あいつらは技能を持っている私を連れ去ろうとした。あいつが言うには『我が神の元へ』……だったかな」

「ほぉ」


 その話は初耳だ、とウチカゲお爺ちゃんは少しだけ目を細めた。

 少し考える素振りをしていたが、すぐにアマリアズへと視線を戻す。


「それで?」

「神っていうのが何を指しているか分からない。でもそれは神じゃないということは言える」

「根拠は?」

「神はこの世界に顕現しない。だからあいつの言った『神』ってのは神を装う違う存在だと思う」

「……その存在については、さすがに知らないか」

「うん。私も昨日あいつらの存在を知ったからね」


 面倒な話になってきた。

 アマリアズは説明した時にそう思い、ウチカゲは話を聞いてそう思った。

 今分かっているのは“技能を狙う輩”がいるということ。

 その目的はあまり分かっていないが、奴らの言う神と何かしら関係がありそうだ。

 技能を所持している者をどうするのか……その先に何があり、何を成そうとしていいるのかは不明であり考えても答えは出ないだろう。


 ただ、残された羊皮紙と装備を調べれば何かしら分かるかもしれない。

 とはいえ、羊皮紙の解読はほぼ不可能だろう。

 あれに魔力回路を組んだ形跡はもちろんのこと、というより……そもそもあの羊皮紙は魔道具ではなかった。

 あれは、少し分厚いだけの普通の羊皮紙だ。


 ではあの文字は?

 筆が魔道具だった?

 否、筆が魔道具であってもインクを出し続けるのが関の山だろう。

 では文字に魔法をかけた?

 そんな魔法があるのであれば是非とも見てみたいものだ。

 もしそういう魔法があったとしても、二種類の見え方は再現できないだろう。

 できたとしても虫のように文字を蠢かすか、水面の様に揺蕩わせるだけである。


 となればあれはなんだ?

 一番納得がいく答えは、一つだけある。


「……技能」

「しかないよねぇ~。ちなみに私は読めなかった。文字にはなってたけど、読解できなかったんだ」

「指定された者にのみ読むことができる文字……を書く技能とでも言おうか」


 ん~~~~?

 なーに話してるのこの二人。

 隣で聞いてたけどさっぱり意味が分からないんだけど……。

 できれば分かるように話して欲しいな。


 ああぁ、でもこの二人今僕の話聞いてくれなさそう。

 もう違う話しはじめちゃった……。


「装備についてウチカゲお爺さんは何か知ってる?」

「あれはテキルという人物が残した物だ。魔道具作りの達人であったな」

「あの装備、一人で……?」

「うむ。私もテキルには及ばないが魔道具の作り方を知っている。だがあれを作った時、すぐに廃棄したはずなのだがな」

「え、どうして?」

「兄を守るための最強の装備を作った瞬間、それが怖くなったらしい。私は素晴らしい成果だと褒めたのだが、彼は……開発者というのはよく分からなくてな。何故か怒られた」

「怖くなった、かぁ……。なんとなくわかる気がするなぁ」


 ……あのー……。

 え、これ僕……ここにいる意味あるの……かな?

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