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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第二章 友達と修行
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2.19.Side-アマリアズ-逃げの戦闘


 『木化け』で気配を消しているのにも拘らず、相手は的確に短剣を隠れている木にぶっ刺してくる。

 これは相手に何かしらの感知系魔法があると踏んだ方がよさそうだ。

 となればこんな所で隠れていても意味はない!

 さっさと走って距離をって言ってもこの体じゃあ無理だよねくそぉ!!


 カカカカッ!

 四本の比較的小さめの短剣が先ほどいた場所に突き刺さる。

 完全に位置を把握されているらしい。


 相手の位置は私の『空間把握』で分かる。

 移動速度はそこまで速くないがこっちは子供だ。

 さっきまで全力で逃げて距離を稼ごうとしていたのだけど……まぁ追いつかれるよね。


 でっかいローブを着ているので体の線も顔も分からない。

 姿は何度か見たが普通の人間っぽかった。

 あれがベチヌをここに連れて来た人物だとは到底思えないのだが、あいつは私の『空間把握』に反応した。

 感覚に優れているのか、それとも実力があるのか……。

 できれば前者であってほしいところだ。


「やられてばっかでいられるか。『空圧剣』」


 この『空圧剣』は知っている刃物であれば何でも作り出すことができる。

 作った剣が大きいほど破裂時の威力は増すのだが、この中に『空気圧縮』を仕込んでおくことでどんなに小さい刃物でもそれなりの破壊力を持った武器が完成する。

 技能の神様を舐めちゃいけませんよ!

 こちとらそればっか作ってきたんだからなぁ!


 場所を把握し、相手が動いて来るであろう場所に『空圧剣』を投擲した。

 サクッと地面に突き刺さったのを確認した後、作り出した大量の『空圧剣』を投げまくる。


 罠技能じゃないけど、これで相手も迂闊には手を出してこないでしょ!

 ま、それを知るのは破裂してからだろうけどね。

 はいそこ!!


 パァアンッ!!

 『空圧剣』と『空気圧縮』を混ぜた武器が盛大に破裂し、地面を抉って木々に大きな傷をつけた。

 その近くにいた人物は大きく吹き飛んでしまい、少し離れた木に激突する。


 どうやら『空圧剣』の存在は知らなかったみたいだね。

 こっちが使うのは失われた技能だ。

 お前みたいな奴に負けはしないよっと!!


 再び『空圧剣』を作り出して投擲する。

 しかしそこまで遠くに投げることはできなかった。

 体がまだ小さく、筋力が少ないのだ。

 とはいえ自分の周囲に罠を張ることさえできれば、相手からの攻撃を減らすことはできる。


 どうにも接近戦を得意としている風な動き方だったし、こうして距離を取っておいた方がいい。

 ナイフを何回か投げてきたけど、あれは有限の筈だ。

 だが私の『空圧剣』は無限にあるからいくらでも投げられる。

 物量の有利、そして技としての有利もこちらにありそうだ。


 だが私はまだまだ非力だ。

 足も速くないから逃走は不可能。

 接近されてしまったら負けが濃くなるかな。


「……チッ」

「その舌打ちは打つ手なしと捉えてもいいかなー? その方がありがたいんだけどー!」

「妙なガキだな……。どこまでその余裕が持つか見物だ」


 むむ、どうやら会話はしてくれるらしいな。

 だったら目的とかを聞いてみるか。


「っていうか何で私を狙うんだよ! まだ五歳だぞ!」

「それにしてはいい“技能”を持っているではないか」

「!? な、なんで分かった!」

「ほぅ、隠す気はないのか。では聞かせて欲しい。どこで、それを、手に入れた?」

「教えないよ!」


 即座に『空圧剣』を投げて攻撃する。

 相手は回避しようとしたが、この破裂範囲から逃げられるはずがない。

 即座に破裂させ、ローブの人物を吹き飛ばす。


 何回か吹きとばしているはずだが、どうにも変だ。

 痛がる素振りも見せないし、なんなら服にも一切傷がついていない。

 私の『空圧剣』の破裂を耐え凌ぐとは思えないのだけど……なにを仕組んでいるんだ?


 まぁそこはいい。

 戦っている内に活路は見つかるだろうからね。

 問題はあいつが私の技能を見てそれを理解したことだ。

 もうこの世界で技能を使用できるのは四百年以上生きている存在しかいないはず。

 あ、宥漸君は除きます。


 そうなってくると、あいつは失われた技能を取り戻すために何かしら暗躍している人物か?

 無駄な努力ではあるが……。

 いや、そうだとしても私の技能をどうして見破ったのかが分からない。

 これは一回とっちめて尋問した方がよさそうだ。


「それなら少し手加減しないとね」


 バッと手を相手に向け、周囲に投げまくっていた『空圧剣』を一斉に破裂させる。

 爆竹を数倍に大きくしたような音が鳴り響き、周囲を破壊する。

 破裂音に驚いた動物たちがその場から逃げていき、木々が折れて地面に倒れる音が何回も聞こえた。

 舞い上がった土埃や倒れた木々などで視界は最悪だったが、それでも私は相手の位置を正確につかんでいる。

 混乱して逃げ道を確保している人物に対し、確実に攻撃が刺さるように投げる位置を調整した。

 そして『空圧剣』を投げ飛ばし、しっかりと相手の腹部へと刺さったのを確認する。。


 ……と思ったのだが、その『空圧剣』はローブの人物をすり抜ける。


「!? げ、幻覚か!!」


 それだったら服に傷ができないのも理解できる!

 相手が微妙に弱いのも納得だ!

 やばい……!

 あいつはどこだ!!?


「ここだガキ」

「ぐっ!!」


 気付いた時には既にローブの人物は私の真後ろについていた。

 強烈な一撃が背中から突き抜け、その勢いに乗って体が飛んでいく。

 地面を滑って勢いは失われたが、背中が酷く痛み息ができない。

 何度か咳き込もうとしたり、息を吸おうとするがまったく上手くできなかった。


「ぅ……はっ、げっ、すぁっ……!」

「『影武者』という魔法だ。影武者を発動している時は本体の気配を薄くすることができる。動かなければ完全に気配を断てるがな」


 魔法の説明をしながら、ローブの人物が歩いて来る。

 こちらが動けないのをいいことに油断しまくっているが、今の私ではどうすることもできない。

 こんな状態では魔法なんて使えない……!


「では来てもらおうか。我が神の元へ」

「……ッ、な、に……ッ?」

「させん」

「ぬぉ!!?」


 キィイインッ!!

 甲高い音が森の中へと響いていく。

 何度か木霊しようやく静かになったと思えば、ギチギチと鍔迫り合いをしている二人の姿が目に入った。


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