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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第二章 友達と修行
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2.11.拘束攻撃


 ベチヌは相変わらずこちらをじっと見つめている。

 目がないのでこの表現は正しくないかもしれないが、顔はこちらを向いていた。

 耳がピコピコと動き、周囲の状況を把握している。


 どこに僕たちがいるのかは把握しているみたい。

 僕も今は目が見えていないけど、ベチヌがどこにいるかは分かる。

 でも肝心の地形が分からないので、そこはアマリアズに教えてもらってなんとなく理解しておく。


「近くに木々はないよ。でも大きめの石が二つ転がってる。一つは宥漸君の右。もう一つは私の後ろ。距離はどっちも大股五歩くらい」

「分かった」


 頭の中でマップを作り、周囲の地形を想像する。

 僕は自分から攻めに行くことはできないので、相手からの攻撃待ちだ。

 なので今はアマリアズが動くのを待たないといけない。


 だけどアマリアズはベチヌという魔物のことをよく知っているみたいだった。

 あれだけ攻撃方法を知っていたんだもんね。

 だからベチヌの行動もなんとなく理解しているはず。


 宥漸が予想した通り、アマリアズは相手の動きを見て警戒をしていた。

 こちらが先に攻撃をしても良いのだが、そうしてしまうとベチヌに自分の血を使った魔法を使用される可能性がある。

 今は二人のことを危険だと思わせてはいけない。

 あえて油断させ、カウンター狙いで仕留めるのが一番良い作戦の筈だ。


 なにせ、今ベチヌを倒すことができるのは宥漸しかいない。

 ベチヌは魔法攻撃に耐性がある。

 なので物理攻撃でなければ仕留められないのだ。

 これがアマリアズがベチヌを倒せない理由である。


 宥漸の使う『爆拳』は物理攻撃に入るはずだ。

 あれが直撃すれば、細い体つきのベチヌは一撃で倒すことができるだろう。


(だけど……今は宥漸君の目が見えない……! どうやって間合いに持ち込ませようか……)


 これが今回の戦いで一番重要な点だ。

 なんとか宥漸が爆拳を使用できる位置にまでベチヌを追い込むことができれば、確実に勝つことができる。

 アマリアズがどれだけ頑張って魔法を使っても、相手にはこれっぽっちもダメージが入らない。

 援護はできるが、大して役には立たないだろう。


(空圧剣は物理攻撃に入るけど、こんな小さな体で振っても有効打にならないよなぁ……)


 そんなことを考えていると、ベチヌの方針が決まったらしい。

 姿勢を低くして、地面を蹴って一気に接近してくる。

 どうやら自分の血を使わずに仕留めることにしたらしい。

 魔法を使うまでもないと思わせることができたので、今のところは順調である。


「宥漸君! 来たよ!」

「分かってる!」


 僕はバッと手を突き出し、ベチヌに向ける。

 そして一つの技能を叫んだ。


「『ツタ縄』!」


 周囲は開けているということだったが、近くに樹木は沢山ある。

 風が吹いてこの葉が掠れる音がたくさん聞こえたので、この辺にもツタはあると踏んだのだ。


 ツタたちは絡まっていた樹木から離れ、こちらに飛んでくる。

 そしてベチヌの足を拘束し、宙吊りにする様に持ち上げた。

 だが一本では逃げられるかもしれない。

 だからどんどんツタを集めて、絶対に逃げられないようにぐるぐる巻きにしてやる。


「キュアアアッ!?」

「よ、よし!!」

「いいね!」


 下半身を完全にツタで拘束し、宙づりにすることができた。

 ここまで上手くいくとは思っていなかったけど、何となかったよかった!

 これだったらすぐに倒すことができそうだ!


 ベチヌは暴れているが、大量に巻き付けたツタが解けることはない。

 とはいえここで諦めるような魔物はどこにもいなかった。

 まだ自由の利く上半身をなんとか二人の方へと向け、口から赤い液体を飛ばす。


「わっ」

「おっと……」


 どうやらあれがベチヌの血液のようだ。

 射出速度はそんなに速くなかったので危なげなく避けることに成功し、血液はアマリアズの後ろにあった石にべちゃりと付着した。

 ずいぶん多くの血を使用したらしい。

 石が真っ赤に塗りたくられた。


 それを見たアマリアズは顔を青くして走り出す。


「やばいっ!!」

「え?」

「キュアアアアアア!!!!」


 パァアアンッ!!

 血液が破裂し、血で塗りたくられた岩が弾け飛ぶ。

 砕かれた岩の欠片は鋭く、様々な方向へと飛んで木や地面に傷をつけた。

 大量の血を使ったので、威力も高かかったようだ。


 ピッ。

 腕に違和感を感じたアマリアズが、バッと腕を見る。

 そこには、石の欠片が掠ってできてしまった傷があった。

 柔らかい肌に一線の赤い線が伸びており、そこから真っ赤な血がたらりと垂れる。


「……やばい」


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