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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第七章 行動開始
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7.14.いってらっしゃい


 ウチカゲお爺ちゃんと一緒に暫く歩いていると、ピタッと立ち止まった。

 どうしたのだろう、と顔をみやれば一点を指差す。

 そちらの方角を見てみれば、お父さんが一つの木に寄りかかって眠っていた。


「……? よ、用事って昼寝……?」

「そうともいえぬよ。零漸殿はな、大地から今この世で起きていることを知ることができる。曰く、教えてもらうのだと言っていたな」

「へぇー……」

「私たちのことも、恐らく既に気付いておるだろう」


 そういってウチカゲお爺ちゃんは歩いていく。

 僕もすぐに続いた。


 大地から教えてもらう、かぁ~。

 どういう技能を持っていたらそんなことができるようになるんだろう?

 僕は今のところ出来そうにないかもなぁ……。


「零漸殿」

「…………」

「……? 零漸殿?」

「んー……?」

「ウチカゲお爺ちゃん。寝てるよこれ」

「そのようだな……」


 期待が外れと言わんばかりに、ガクッと肩と頭を落として落胆する。

 ここまでマイペースな人だっただろうか……?


「零漸殿。起きてくだされ」

「起きてる起きてる……。なんの用っすかウチカゲ……って宥漸も!?」

「ちょっと気になってたから来ちゃった」

「そ、そうかぁ~……。いやはや、変なところ見せたっすね」


 パンッと膝を叩いて立ち上がり、姿勢をただして咳払いをする。


「して、ここで何を聞いておられたのですかな?」

「『大地の加護』でとりあえず昨今の状況をちょこっとっすね。久しぶりに使うもんだから精霊たちに驚かれて対応に苦労したっす……」

「精霊?」

「ん? 宥漸も俺と同じ技能使えるんだよね? じゃあ簡単。ほら、ここに座って」


 僕はお父さんに言われるがまま、先ほどお父さんが背中を預けていた木の音に腰かけ、背を預ける。

 お父さんも隣に座り、胡坐を組むようにと指示された。

 どうやら地面に触れている箇所が多い方がいいみたい。

 でも寝転ぶと精霊たちに怒られるのだとか。


「ど、どうして?」

「さぁ、なんでだろうね? まぁそんなことは措いといて……。背中を預けている木に心の中で話しかけてごらん。目を瞑ってからね」


 そう言うと、お手本を見せるかのようにしてお父さんは目を閉じてしまった。

 本当にこれで何か分かるのかな?

 ウチカゲお爺ちゃんを見てみたけど、我関せずって感じだった。

 ううん、まぁやってみるか。


 目を閉じて、木に話しかける……だっけ。

 こんにちは~……。

 これいいのかな?


『それでいいよ』

「わっ!?」


 急に男の子の声が耳元で聞こえて、思わず声を上げてしまった。

 目を開けてみれば、そこは先ほどいた場所であり、周りを見ても男の子の姿は見えない。


「あらら、驚かないようにしてねって言うの忘れてたな。精霊ちょっと逃げちゃった」

「え、ええ~……」

「でも聞こえたみたいだね。感心感心!」

「……零漸殿は、目上の者以外には若者口調を外すのですな。知りませんでしたぞ」

「わ、若者口調って……。まぁそうかもしれないっすけども、これが癖になってるっすから仕方ないっすよ」

「それもそうですな」


 なんかまた思い出話してる?

 ウチカゲお爺ちゃん、あの四人に再会してからこういうの多くなったよなぁ~。

 まぁそれも仕方ないんだろうけど。


 ていうか、僕たちがここに来た理由ってお父さんから技能について教わる為じゃないんだよなぁ……。

 ウチカゲお爺ちゃん忘れてない?

 まぁ僕としてはめっちゃ勉強になったけども!


「で、ウチカゲ。俺に何か用っすか?」

「む、失念しておりました。ガロット王国へカルナと共に向かい、天使の動向をくまなく調べて欲しいのです。それとガロット王国現国王、スレイズ・コースレットに渡して欲しい」

「ほー、諜報活動っすか。久しぶりっすねぇ~」

「えっ。本当にお父さんって、そういうことできる人なの?」

「凄いだろう?」


 胸を反らして自慢げに鼻を鳴らした。

 ウチカゲお爺ちゃんがこうして直々に頼みに来るくらいだし、やっぱり技量はあるのだと思う……。

 う、ううんできればもっと何か教えて欲しいな……!

 そんな時間は残念ながらなさそうだけど。


 ていうか、お父さんって元々何してた人なんだろう?


「お父さん封印される前は何してたの?」

「俺か? ううん、さっきみたいに『大地の加護』で精霊たちに話を聞いたり、実際に敵本陣に行って調べ物したりとか?」

「すご」

「敵本陣に行っていいとは誰も言っていなかったはずなのですがなぁ……」

「あはははは! まぁまぁ! 若気の至りだと思ってくれっす! でも良い情報は持って帰ったっすよね?」

「成果があるからこそ下手に叱れなかったですな。あの時は」

「すごー」

「まぁそれは措いておいて……。零漸殿、頼めますかな?」

「カルナと一緒なんすよね? なら問題ないっすよっと」


 スクッと立ち上がり、服についた汚れをパッパッと払う。

 軽く準備運動をした後、僕の方に向き直って片手を上げた。


「そんじゃ行ってくるっす!」

「お気をつけて」

「行ってらっしゃい」

「おう!」


 軽い足取りでお母さんを呼びに行くお父さん。

 その背中を眺めていると、なんだか少し寂しい気がした。


 もう少しお話したかったなぁ。

 急を要する案件だということは分かってるけども……技能についてもっと教えてもらいたい。

 多分適任だもんね。

 お父さんと同じ技能が発現してるみたいだし、教えてもらうことができればもっと強くなれるはず……。


「宥漸」

「え、なに?」

「焦らんでもいい。標的は逃げはせぬよ」

「……うん」


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