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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第七章 行動開始
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7.9.天使の技能


 一度大きく距離を取り、再び武器を構え直す。

 イウボラは砕かれてしまった爪を見ながら、苦々しい表情をする。


「これ……俺の中では最高硬度を誇る『変形』なんですけど」

「普通に武器でやりあった方がいいかもな。お前なんか武器持ってたっけ」

「体全てが武器なので、固形物となる邪魔な鉄は所持していません」

「そうか。だが、なんとかなるだろ?」

「久しく見ない歯ごたえのある相手です。できずともやってみましょう」


 そういい、イウボラは腕を振るって大きな刃を作る。

 体全体を武器に変形させることができる彼の能力は、純粋な接近戦では右に出るものがいない。


 軽く動かして調子を確かめている間に、ダチアは服のポケットから二つのダイスを取り出した。

 それを適当に投げ、海へと落とす。

 ぽちゃんっという小さな音が聞こえたと同時に、三人は一気に動き出した。


 純粋な火力勝負を楽しみたいのか、それとも天使も接近攻撃系の技能しか所持していないのかは定かではないが、バカ正直に突っ込んでくる。

 だがそういう時に限って、裏に何かあるはずだ。

 無論、ダチアとイウボラも次の手を考えている。


 だが今回先手を取ったのは天使だった。

 鋭い光りの針が急激にリーチを伸ばし、二人に襲いかかる。

 間一髪で反応が間に合い、二人は紙一重でその攻撃を回避した。

 それと同時に体をひねり、ぐんっと遠心力を乗せた攻撃を繰り出す。

 凄まじい大振りになってはいるが、二人が同じ攻撃をすれば相手は受け止めるのが困難となる。


 ギヂンッ!!

 しかしその攻撃は天使によって簡単に受け止められた。

 両手に握っている光の針。

 細く柄もない小さな針だというのに、ダチアの長剣とイウボラの剣に変形させた腕の攻撃を軽々と止めてしまったのだ。


「明らかに普通の技能じゃねぇな」

「同感です」


 しばらく鍔迫り合いが続いたが、天使がグンッと押し込むと二人の体勢が崩れてしまう。

 しかし翼を広げて即座に復帰し、逆に切り上げるようにして攻撃を繰り出す。


「──攻めますか」

「無論だ」


 コロン……と、海に沈んだダイスが海底に到着した。

 二つの十面ダイスが『01』と『8』を示して静止する。


「いい出目だ」

「!!」


 咄嗟に両手に持った光の針で攻撃を防ぐが、ダチアの斬撃はその姿勢をいとも簡単に砕くほどに強力なものだった。

 光の針が砕かれ、斬撃が天使の喉元に接近する。

 辛うじて防御技能を使ったようで光の首輪が生成されたが、それすらも砕き天使を大きく吹き飛ばした。


 海の方へと吹き飛んでいった天使は水切りをしながら跳ねていき、途中でようやく体勢を立て直して海の上を滑るようにしながら勢いを殺していく。

 ボロボロと零れていく光の首輪の破片が海の中に沈むと同時に、数ミリ入った首の傷から流れ出る血液が海と同化した。


「まだ終わっていませんよ」

「──知ってます」


 イウボラが即座に接近し、剣の姿に変形させた腕を振り下ろす。

 鋭い斬撃ではあったが、それは紙一重で回避されてしまう。

 その瞬間、天使はイウボラの服を掴んだ。


「!」

「『万物硬化』」


 天使はそのままイウボラを一瞬持ち上げ、勢いよく海に叩きつける。

 普通であれば海の中に沈むだけの筈だったが、不思議なことに、文字通り海面に叩きつけられてしまった。


「ぐっ!?」


 海の中に沈まなかったのだ。

 コンクリートのように硬くなった海面に叩きつけられたことにより、イウボラは苦い顔をする。


「『万物硬化』」

「!!? っ!! ……──」


 すると、イウボラが海の中にそのまま沈んでいった。

 体を一切動かすことができなくなったようで、泳ぐことも暴れることもしなかったようだ。


「野郎……」

「──」


 見たところ、あの技能はルリムコオスに近い能力を持っているということが分かった。

 近いといっても効果を及ぼす範囲と内容は違うが、根本は同じである。

 すべてを硬質化させてしまう技能……。

 これが今ダチアが敵対している天使の持つ技能なのだろう。


 先ほど戦っている時は使わなかったことから、使用するには条件が必要の様だ。

 今思いつく限りでは、触れていなければならない、と行ったところだろうか。

 だが海面は触れずに硬質化させた。

 生命……生物だけは遠隔で技能を使用することができないのかもしれない。


 触れられてしまえば負けが込む。

 あれだけ強力な技能だ。

 効果時間もあるだろうし、維持し続けるための魔力消費量も尋常ではないはず。


「あとは、同時に二つ硬質化させられない、といったところか?」

「──……」

「ま、いいけどな」

「!?」


 ダチアは一瞬で天使の背後に回った。

 彼の持つ力はダイスの目で身体能力が変わったり、攻撃、防御系技能の能力値が上昇するという博打な技能だ。

 先ほどは火力に振ったが、今回は素早さに振った。

 しかし、ダイスは一度しか振っていない。


 ではどうして能力値が変動したのかというと……。

 海底に転がったダイスが、流れによってコロンッと転がったからである。


 出た出目は……『00』と『03』だった。


「速けりゃ威力も増すってもんだ」


 ゴビョッ。

 長剣の腹が、天使の横っ面にめり込んだ。


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