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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第七章 行動開始
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7.6.ガロット王国の内情


 ガロット王国と言えば……。

 あのキュリィがそこに僕の存在を教えて、それを信じた人たちが敵意を向けてる所だよね……?

 あとから聞いた話だけど、僕がいなくなってから調査に入ってきたりしたみたいだし、雰囲気は悪かったって……。


 そこの手助けってどういうことなんだろう?


「ウチカゲお爺ちゃん。どういうこと?」

「一度ガロット王国の人間がここに入って調査を行って以降、私はガロットの国王であるスレイズと何度か話をして天使を調査させていた」

「ほう、なるほどな?」


 鳳炎が感心した様子で頷く。

 あれだけこちらを敵対視していた国民を跳ねのけてその調査に乗り出したスレイズは称賛されなければならない。

 だが……。


「反対意見も多かっただろうな。信頼できる者、そして天使を信じない者を探し出すのには苦労していたはずだ」

「鳳炎殿の言う通りにございます。天使の存在に異を唱える者は今ガロット王国ではほとんどと言っていいほどおりませぬ。調査はひどく難航しているようですが……極々僅かではありますが、天使側から離反する者もいるようで」

「離反?」


 その言葉に全員が首を傾げた。

 天使は見た目も神々しく、凡人である人間に魅力を与えるには十分すぎる力を持っているため、こんなに短い期間で離反するようなことが起きるとは思えなかったのだが……。

 その者たちには、とある共通点があるらしい。


「子供がいたそうな」

「……それで?」

「どうにも、天使は子供を集めている様でしてな。天使に子供を預けるという形を取っているらしいのですが、それ以降顔も見ることができぬとされているようで、それに不満を持った親族が内通者としてスレイズ側の者たちに協力しているようなのです」


 子供を集めてる……。

 ううん、アシェラさんの時は子供と一緒に連れていかれたみたいな感じだったけど……。

 英才教育をさせるために親元から離れさせたり、天使側に完全に属する人間にする為に洗脳じみた事でもするのかな?

 擬似技能の実験に使われてもおかしくはない話だけど……。


 ていうかウチカゲお爺ちゃんの話が本当なら、子供以前に天使がガロット王国を自由に歩き回ってるってことになる。

 まだ少数の天使を疑っているガロット王国の人々は動きにくいだろうな……。


「天使を疑う者がいる。奴らが行っていることを大々的に広めることができれば……信頼は失墜する、と。ここに残る者は、それを手伝うのだな?」

「然り。されど、宥漸とアマリアズはここに残します」

「妥当な判断だ」

「まぁそうなるよね~」


 うん、それは仕方ないと思う。

 敵地に狙われている人間が赴いて言い訳がないからね……。

 鴨にされちゃう。


 まぁ僕なら絶対に大丈夫だとは思うけど、一応ね……?


「じゃあ誰が行くの?」

「カルナ、零漸殿だな」

「二人だけで大丈夫? ていうか……」


 リゼさんがなぜか僕の方を見た。

 最初はその意味がよく分からなかったが、すぐに気付いた納得する。

 リゼさんは優しいな。

 再会したばかりの僕とお父さんを離れ離れにしていいのかって言いたいんだと思う。

 まぁ今までずっと知らなかったし、大丈夫ではあるけどね……。


「僕は大丈夫ですよリゼさん。ありがとうございます」

「むぅ、ならいいけどぉ」

「カルナと零漸殿は隠密に長けている。これ以上の適任はおりませぬでしょう」


 え、そうなんだ……。

 知らなかった……。


 すると、応錬さんが手を叩いて立ち上がる。


「そんじゃ、そろそろ動きますか! やることは決まってんだ。さっさとやっつけてのんびりしようぜ?」

「それができれば苦労しないのだ……。お前の楽観的な性格は見習いたいところだが」

「褒めてんのか?」

「呆れているのだ」

「おい」


 そう言いながら、鳳炎は縁側から庭に飛び出して飛んでいく。

 応錬もそれに続くようにして『多連水槍』を作り出してから逸れに飛び乗り、操作して飛んでいった。


「応錬って龍なのにあれじゃないと飛べないの?」

「人間の姿だと飛べぬようですな」

「不便ね?」

「では、私はカルナと零漸殿に話を付けてきます。宥漸も来るか?」

「あ、うん! 行きたい!」

「よし、では行こう」


 ウチカゲお爺ちゃんは部屋から移動しながら、悪魔に連絡を取っているようだった。

 アブスさんを向かわせる旨を話すと、ダチアさんと思われる相手が面倒くさそうに渋っている。

 悪魔の皆も調査中だろうからなぁ……。


『ああ……分かった。何とか派遣する』

「すまぬな」

『本当にそう思ってんならこっちを手伝ってもいいんだぞ』

「苦戦しているのか?」


 その言葉を聞いて、ダチアの気配が変わる。

 さっきより少し不機嫌になったが、それはすぐに霧散してため息に変わった。


「……まぁ、そんなところだな」


 ダチアは通信水晶を片手にしながら、仕留めた天使に突き刺した長剣を抜き取った。


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