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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第七章 行動開始
184/277

7.1.直近の目標

霊亀の息子は硬度最高

最終話まで書ききりましたので、本日より毎日投稿します

次回作は今頑張って書いてますお楽しみに


「さーて……!」


 どかっと畳の上に胡坐をかいて嘆息する応錬。

 とりあえずようやく全員が揃ったのだ。

 それには安心していいかもしれない。


 だが、脅威は未だに去っていない。

 天使は一度撤退したようではあるが、またすぐに策を携えて戻ってくるだろう。

 それまでにこちらも準備をしておかなければならない。


 なにより、相手の拠点の一つは把握している。

 それを調べに行く部隊を編成しなければならないので、今は主要メンバーのみが集まって会議を開いたところだ。


 そこにいるのは応錬、鳳炎、そしてウチカゲだけである。


「なんだかこの構図も懐かしいな」

「この三人だけで会議をしたことはなかったと思うが」

「気分の問題だよ! 気分の! ったく相変わらず通じねぇな……」

「まぁまぁ、こうして居る間にも天使は策を練り、武器を研いでおります。こちらも、策を練りましょうぞ」

「ウチカゲの言う通りだな」


 三人は姿勢を正し、本題に入る。

 進行は毎度の如く鳳炎が担当してくれるようで、すぐに切り出した。


「まず分からない点が幾つかある。“擬似技能”、“天使”、“目的”」

「擬似技能を持つ天使と、技能を持つ天使の違い……」

「昔から存在している天使であれば、私たちに充分対抗できるはずだ。だが今回ではっきりした。弱すぎる」

「だよな」


 応錬はもっと前からそれに気付いていた。

 確かに擬似技能は強力だが、それを使う天使は未熟だ。

 戦闘経験がほぼほぼ皆無だということがそれだけで分かる。

 経験がない者に無理矢理技能を埋め込んでいるかのようであり、まともに扱いきれていないといのが二人の感想だ。

 それにはウチカゲも頷いた。


 だがそこで問題になってくるのは、擬似技能はどう作られ、埋め込まれるのか。

 そういう技能があるのであれば分からないことはないが、応錬が解読してしまった指示書には擬似技能を開発すると明記されてあった。

 恐らくだが、技能を生成する技能は存在していない。

 どちらかと言えばこれは……。


「抽出に近いかもしれないな」

「ふむ、なるほど。言えておるやもしれませぬな」

「……死体から技能を抽出して埋め込むみたいな感じか? そうじゃなきゃ無理じゃねぇか?」

「この辺は未だに分からんな。天使の拠点に探りを入れて見つけるべきだ」

「場所が把握できる俺は行くべきだな」

「空にあるんだろ? では飛べる私も同行しよう。あとは……」

「悪魔を一人呼びましょう。ダチアか、アブスあたりが宜しいかと」


 本拠地とはいえ、応錬と鳳炎がいれば大体のことは何とかなる。

 加えてダチアかアブスどちらかがいてくれればほとんどの事は対処できるだろう。

 拠点は空に浮いているので飛べる者が行くのが妥当。

 少数精鋭で向かうことが今決定した。


 拠点に行けば、擬似技能に対するすべての謎が解けるはずだ。

 助けたアシェラも実験に使われていたようだし、今もまだその痕跡は残っているだろう。

 まさか空を飛んでくるとは思うまい。


「……擬似技能を作り、戦力を増強し……。何をしたいのでしょうな」

「それが分かったら苦労しないかもしれんけどなぁ~」


 擬似技能は強力だ。

 この世界にいる種族相手であれば、充分相手をできるほどに。

 一人で千人ほどの戦力となるだろうし、天使は既に様々な場所で活動し人間を懐柔している。

 確実に懐柔できないのは鬼と悪魔の二勢力のみ。

 それらに対抗するために、何かしようとしていることは分かっている。


 だが、肝心の目的が分からない。

 擬似技能を作り、何をしたいのか。

 奴らの最終目標が分からない限り、擬似技能の仕組みを暴き出したとしてもこの事件は解決できないだろう。

 天使の目的。

 それを見つけ出し、根本から潰さなければならない。


 何はともあれ、天使の拠点に乗り込まなければ話は進まない。

 直近の目標を擬似技能の解明に設定し、ついでに天使の最終的な目的を見つけ出す。


「で、他には何かあるか?」

「私共も情報を集めるべきでしょう。悪魔は暫くこちらに来ぬでしょうしな」

「あいつら今何してるんだっけ……」

「天使の情報を探っております。四天教会の情報は彼らに任せておりますが……」

「早く持って帰って来いよぉ……! ちょっとでもいいから情報流せっての!」


 天使の動向は完全に分かっていない。

 だが相手はこちらが前鬼の里にいるのを知っているため、こちらが完全に後手に回ることになる。

 できればそれを何とかしたいが……悪魔からの情報がこない以上、望み薄だ。


 ここには前鬼の里の住民に加え、技能持ちの人間が多くいる。

 そう、技能を持っている人間が、いるのだ。


「……ウチカゲ」

「なんですかな鳳炎殿」

「さすがにはっきりさせておかなければならないことがある。それは恐らく、お前も同じように考えてくれているはずだ。見て見ぬふりはもうやめろ」

「……ふむ」


 急に真面目な声になった鳳炎に驚いた応錬は、バッとウチカゲの様子を伺った。

 だが四百年以上生きているだけあって、感情は表に出さない。

 しかし難しそうにうなった。


「……どういうことだ?」

「お前も気になってるはずだろ」

「……なにが」

「“アマリアズ”だよ」


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