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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第六章 霊亀・零漸
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6.15.む……くり


 僅かに見えていた『封殺封印』の結界が、消えていく。

 それと同時に地鳴りが大きくなったような気がした。

 すぐにその場から退散し、アマリアズと合流して大穴の上から様子を伺い続けた。


 『決壊』は成功したはず……。

 その証拠に、魔法袋の中にはまだ壊れていない魔力石がたくさん入っているからね。

 必要な魔力は少なくてもよかったみたい。


「……えーっと?」

「動きがないけど、大丈夫、かな?」

「いやアマリアズも大丈夫? 『ヒール』掛けようか?」

「あ、お願い」


 さすがにこの怪我を放っておくのは良くないだろう。

 僕はすぐにアマリアズに『ヒール』をかけ、そうしながら穴へと目線を向け続けた。


 ゴッ……。

 一瞬、鈍い音が聞こえたような気がした。

 なんだろう、とその音の正体を探る間もなく、それは突如として持ち上がる。


「「え」」


 目の前の穴に罅が入り、それは森の奥の方まで走った。

 地が裂け、巨大な大地が持ち上がる。

 ゆっくりとした動きではあったが、その巨大さは見た者を呆けさせてしまうだろう。

 なにせ、一つの山が動き出したかのようだったからだ。


 彼としては、ただ立ち上がっただけ。

 だというのに広大な宝魚の原の半分ほどを崩壊させてしまう。

 巨大にも程があるクレーターが足元に作られ、森そのものを背に乗せたまま、首を伸ばして顔を出す。

 非常に眠そうな目は未だに現状を理解できていないようで、のろまな動きで左右を見渡した。


 ここまで巨大なのだから、さすがに応錬も、リゼもそれに気付く。

 遊びながら技能を試していた応錬は攻撃の手を止め、その大きさに乾いた笑いを零す。


「は、はははは……。でかすぎんだろ……。予想はしてたけど……」


 その予想を軽く超えたのだから、こちらとしてはもう笑うことしかできない。

 自分の体の大きさも大概だとは思っていたが、さすがにここまでではない。

 本当に巨大な山が動いているかのようだ。


 ウチカゲとカルナの方でも、それはもちろん目視できた。

 ウチカゲは昔に一度、その姿を遠目で見たことがあったので懐かしみを込めた目で彼を見ていたが、カルナは驚きに混じって喜びの表情が浮かび上がっている。

 そんな彼女を見て小さく笑ったあと、目の前に迫ってきた天使を横殴りにして吹きとばす。

 手についた汚れを軽く振って払った後、大きく頷く。


「これで、揃ったな」

「そうね……! そうね!」


 大きな音を鳴らしながら、霊亀はのそーっと動きはじめる。

 まだ寝ぼけているのは誰の目からも明白だった。

 だからこそ、今しかないと天使は攻撃を仕掛けていく。


 様々な技能が飛び交い、残った天使のみで仕留めようと試みるが、それはあっけなく霧散する。

 確実に当たってはいるが、山のように大きな巨体に小さな小石が当たったところで何も変わりはしないのだ。

 半場ヤケクソのようになった天使を、霊亀がようやく視界の中に入れた。


『……?』


 初めて見る姿ではあるが、よく知っている天使の姿を見て、彼は目を見開いた。


『天使だああああああああああ!!!?』

「「ぐっ!?」」


 体を突き抜けるような咆哮をもろに喰らった二体の天使。

 あまりの衝撃に体勢を崩して落下していくが、何とか翼を広げて大地への衝突は真逃れる。

 だが次の瞬間、逆に大空へと吹き飛ばされる。


『『爆拳』!!』


 巨大な足を軽く上げ、ズンッと踏みしめる。

 次の瞬間その場が爆心地となり、巨大な爆発が襲い掛かった。

 霊亀の足元は赤く染まり、大空へ向かって大小様々な土塊が吹き飛んでいく。

 土煙が上がっている中、霊亀は首を動かして周囲の状況を確認した。


『まずは、戻るっすかね』


 大きな体だということは自分も認識している。

 なのですぐに人の姿に戻り、情報を集めるべきだ。

 白い煙をぼん、と上げながら、人の姿に戻った。


 だがその場所は、空中だった。


「ええ……」


 そのままひゅ~っと落下していき、直立したまま着地する。

 地面に足が突き刺さってしまうが、すぐに足を上げて普通に大地に立った。

 するといつもの感覚が戻ってくる。


「ん?」


 そこで二人の気配を感じた。

 そちらの方へを振り向いてみれば、酷く驚いた様子でこちらを見ている。

 先ほど降ってくる所を見られたのだろう。


 だが二人は子供だ。

 どうして天使が飛び回っている所にいるのか疑問が浮かんだが、まずは安全な場所へと逃がしてあげなければならないだろう。


「君たち、大丈夫っすか?」


 ……返事がない。

 怖がられているのかもしれないので、なんとか優しい好青年を演じたいところだったが、そんな演技力は無い。

 さて困った、と悩んでいた所で、一人の男の子が視線を違う方向へと向ける。


「!! あっち!」

「ん?」


 見てみれば、天使が急速接近を試みている最中だった。

 しばらく姿を見ていなかったが、どうやら戻ってきたらしい。

 鳳炎がどうなったのか気になるところではあるが、まずは身を守らなければならない。


「これは好感度を上げるチャンスっすね!」

「は?」


 ぎゅう、と握り拳を作り、狙いを定める。

 鋭い槍をこちらに向けながら突っ込んできている天使は、捨て身の覚悟で突撃してきている様だ。

 であればこちらも、真正面からぶつかり合う。


「あ、耳塞いでおくっすよ」


 そう言い聞かせた後、真剣な顔つきになって拳を突き出した。


「『真空爆拳』」

「しんくうばっけん!!!? 宥漸君耳塞いでまじで!!」

「えっ!?」


 二人が耳を塞いだ瞬間、周囲の音が、消え去った。


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