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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第六章 霊亀・零漸
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6.14.標的変更


 ぐっと力を入れ、石突を地面から抜き放つ。

 穂先ではなく石突の方で鳳炎へと振り抜いたが、やはり距離があり届きはしない。

 しかし鳳炎は何かがこちらに飛んできているということを、認識はしていた。


「ぐ!?」


 即座に移動したのにも拘らず、腹部に強い衝撃が走る。

 あまりの威力に体が軋み、そのまま吹き飛ばされて森の中へと落ちていった。


 今し方天使が使った技能、『地神槍』。

 斬撃と攻撃力特化の『天神槍』とは違い、これは打撃と攻撃範囲特化の技能である。

 遠くに飛ばせば飛ばすほど攻撃範囲は大きくなり、回避することは困難となる。

 更に攻撃力もなかなかで、『天神槍』には及ばないものの、人を簡単に吹き飛ばす程度の威力は備えていた。


 遠くからガザガザッという音が聞こえてきた。

 どうやら鳳炎が落下していったらしい。

 しばらく脅威は去ったが、また襲ってくるということは分かっている。

 だが彼は不死身だ。

 あれを相手取るよりは、確実に頭数を減らす方がいいだろう。


 ドオンッ!!

 再び、後方で爆発音がした。

 今までずっと気になっていたが、あの爆発は一体誰が起こしているのだろうか。

 なんにせよここで何かが行われていることは間違いない。


 天使はすぐにその音の方角へと向かって移動し、大きな穴を発見する。

 眉を顰めながらその穴を覗いてみると、一人の男が握る拳を作り、それを大地へ向けて繰り出した瞬間大爆発が起きた。

 大穴は既に十メートルは掘り下げられているようで、今も必死になって技能を使って穴を掘っている。


(爆発になんで耐えてるの……?)


 ふとそんな疑問が脳裏をよぎったが、やることは変わらない。

 あれを何とかしなければならないということはなんとなくわかる。

 すぐに穂先を向け、『天神槍』を繰り出す。


 カーンッ。


「うげっ。……なに?」

「はっ?」

「おわああああああ天使だああああああ!?」


 宥漸は握り拳を作った瞬間、天使へ向けて『爆拳』を繰り出した。

 それも、自身が持てる最高の威力で。


 カッと光ったのも束の間、すぐに爆発して掘っていた穴の壁が吹き飛んだ。

 天使は避けることができずにそれに巻き込まれ、大小様々な土塊に攻撃されながらも何とか体勢を立て直して上空で滞空した。

 凄まじい威力。

 危うく槍を手放してしまうところだったが、すぐに構えてもう一度『天神槍』を繰り出す。


 宥漸は避けることなくそれを真正面から受けてしまったが、再びカーンッという良い音が響くだけでなんともなさそうだった。

 もう一度放った『天神槍』は宥漸を掠め、彼の足元に突き刺さる。


 カンッ。


「……? カン?」


 あ、今の音って……。

 ちょっとまって?

 もしかしてすぐ近くにあるんじゃないの『封殺封印』!!


 天使を無視して、宥漸は足元に爆拳を繰り出す。

 大量の土煙が発生して天使の視界を遮ることに成功しつつ、自分はようやくお目にかかれた『封殺封印』の半透明の赤い結界を、目視した。


「よ、よっし!!」


 すぐに懐に手を入れ、イルーザから貰った魔力蓄積装置を取り出した。

 それを使って封印を解こうとしたが……。

 なにやら様子がおかしかった。


「あ、あれ?」


 光っていない。

 少し振ってみると、中でカチャカチャという明らかに部品が破損していると思われる音が聞こえてきた。

 魔力が漏れていたのかと思ったが、そこでイルーザが言っていたことを思い出す。


 ─一定以上の衝撃を加えると、壊れてしまう。


「やっちゃったあああああああ!!?」


 すっかり忘れてたぁああ!!

 いやそうだよね!?

 こんな爆撃の中で生き残れる繊細な道具って逆になんだよって話だよ!

 どどどっどうどうしよう!?

 折角ここまで来たのに封印を解くことができないってことあるぅ!?

 いや忘れてた僕のせいだけどさぁ!


 ガンッ!!

 肩に強い衝撃が走った。

 もちろんなんともないが、どうやら天使が未だに攻撃を続けているらしい。

 あれを何とかしておかなければ、いずれ『封殺封印』が見つかってしまう。

 増援を呼ばれてしまったら目も当てられない状況になる。


「ええい! 戦うしかないか!」

「なんで利かない……! 『天神槍』!」


 見にくい斬撃を手で弾き、握り拳を作って天使へと狙いを定める。

 攻撃する構えを見た瞬間、天使は拙いと呟いて即座に空へを飛んでいった。

 あれでは、攻撃は届かないだろう。


「くっそー! 遠距離攻撃ほぼないんだよなー!」


 そ、それにしてもどうしよう……!

 魔力石もない、魔力が入った魔道具もない……。

 封印を解くための魔力が今手元にない!

 あと一歩だってのにぃー!


 ……あれ、あの天使どこ行った?

 逃げたって訳ではなさそうだけど……。

 ていうか気配辿りにくいなあれ!

 空飛んでるからかな?


 すると、見覚えのある顔がひょっこりと出てきた。


「宥漸君……!」

「アマリアズ……って肩どうしたの!? 真っ赤じゃん!!」

「結界は!?」

「見つけた! でも魔力蓄積装置が壊れてて……」

「じゃあこれが、役に立つな……!」


 アマリアズがぽーんと魔法袋を僕に投げてくれた。

 それをキャッチし、首を傾げる。


「え、これは?」

「鳳炎さんから貰った……! 魔力石!」

「おおおお!!」


 どれくらい入ってるかは分からないけど、あの時集めた物の一部ではあるはず!

 ありがとう鳳炎さん、アトラックさん!


「よおおっし!!」


 タンッと結界に手を置いた。

 そして、技能を、発動させる。


「『決壊』!!」


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