6.8.穴掘り
「よぉぉぉぉおし……!! はぁっ!!!!」
ズドォオオオン!!!!
河原で大爆発が起き、地面が大きく抉れた。
渾身の『爆拳』で穴掘りを開始してみたが、意外と早く掘れる。
爆発音がするため天使がこちらへ向かってこないかひやひやしているが、穴を掘る道具など持っていないし、持っていたとしても時間がかかりすぎるのでこちらの方がいい。
土煙が消えてきたところで、僕はもう一度『貫き手』で地面に穴をあける。
そしてその穴を目がけて今度は『爆拳』を繰り出し、どんどん掘り下げていくという寸法だ。
まだ二度しか『爆拳』を使ってはいないが、それでも穴は二メートル程掘ることができていた。
この調子で行けば、地中で眠っている零漸の下へ、行くことができる筈だ。
地面に耳を付けて呼吸する音が聞こえたから、そんなに深くには埋まってないはず!
僕のお父さんだから硬いんだよね?
だったらこの『爆拳』でもなんともないはず……と信じたい!
「『爆拳』!!」
再び大きな爆発が起き、地面が抉れ、大地が揺れる。
アマリアズは少し離れた場所でそれを眺めながら、周囲への警戒を行っていた。
とはいえ、さすがに天使もこの爆発には気づいたようで、こちらに二体向かってきている。
それを何とかするのが自分の仕事だな、と決めていたので、接近に気付いた瞬間から罠を張り巡らせていた。
その辺の木の陰や木の枝、岩の後ろ、そして草むらの中にこれでもかという程『空圧剣』を設置している。
最悪動かすこともできるので、奇襲にも十分応用が可能だ。
駄目押しに『空気圧縮』で作った爆弾を幾つか作り置きしておき、接近された際に対処する武器とする。
パパパァンッ!!
どうやら天使が罠にかかったようで、乾いた破裂音が響いた。
「おわ、アマリアズ大丈夫ー!?」
「こっちはだいじょーぶ! 早く穴掘ってー!」
「りょーかーい!!」
そして後ろから大爆発。
それと同時に『空圧剣』を操って残った天使へと攻撃を仕掛けていく。
こちらに来た天使も弱い個体だったようで、すぐに墜落して倒れてしまった。
なんと張り合いのない、とため息をついたが、この調子で行けばもうそろそろ『封殺封印』の結界が見えてくるはずだ。
それが見えれば、こちらの勝ち。
あとはのんびりしているだけで大丈夫だろうと、空を見上げた。
「……うげっ!!?」
咄嗟にその場から飛びのく。
次の瞬間、巨大な剣が先ほど座っていた場所に深々と刺さった。
発光している両刃剣。
明らかに天使の持つ『技能』によって作られた武器が、今目の前にある。
そしてアマリアズは、この技能を使う個体を知っていた。
であれば、接近に気付けなかったことにも頷ける。
「ここでお前かよ!」
発光した両刃剣が、不思議な力でゆっくりと持ち上がる。
だが実際には、透明になった天使が剣を抜いているだけに過ぎなかった。
姿を消されてしまうと、アマリアズの『空間把握』をかいくぐれてしまう。
向こうはそれを知らなかっただろうが、あの状態がデフォルトなのだ。
厄介なことこの上ない。
すぐに作り置きしておいた『空気圧縮』を放り投げる。
両刃剣が動き、それを弾き消そうと振るう瞬間、爆発させた。
ッパアァンッ!!!!
相当な威力であったはずだが、両刃剣はその場に留まっていた。
一歩も後退していない。
その結果に苦笑いを浮かべるしかないが、そういえばあの剣はそういう力を持っていたということを思い出す。
『ホーリーソード』。
聖なる剣である発光する両刃剣は、防御に特化した技能だ。
術者にかかる負担のほとんどをあの剣が肩代わりしてくれる。
だがもちろん弱点はある。
両刃剣で防がなければ肩代わりはしてくれないので、天使に直接攻撃すればダメージは通るはずだ。
まだ作り置きしておいた『空気圧縮』は幾つもある。
本物の天使がこっちに来たのは予想外だったが、宥漸が『封殺封印』を見つける間までの時間稼ぎくらいはできるだろう。
「っし……。かかって来いよワルフ」
「……!?」
一瞬の動揺が、両刃剣の動きに現れた。
その瞬間、前後左右から『空気圧縮』をぶつけ、爆発させた。




