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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第五章 鳳凰・鳳炎、白虎・リゼ
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5.44.三人目


 フウリルが大鎌を振り抜く。

 見えない斬撃が飛んできたが、応錬はそれをすべて撃ち落とす。

 だがリゼにはそれが見えなかったらしい。

 驚いて応錬の後ろに隠れた。


「びっくりした!」

「気ぃ付けろよ。斬撃が飛んでくるからな」

「うわぁ面倒くさいなぁ」


 隠れながら、リゼはフウリルに指を向ける。

 狙いを定めると、バヂリと音を立てて指先に雷が集まった。


「『サンダーピストル』」


 黄色い小さな電撃が指先から放たれる。

 輝いているので目視はできるが、速度は速く、あっという間にフウリルに接近した。

 しかしそれは躱されてしまう。


「む」


 『サンダーピストル』を回避した瞬間、回避方向に強い殺気を感じ取った。

 目視してみてみれば、大量の『空圧剣』がこちらを向いている。

 先ほどまでじっとしていたアマリアズだったが、これを作る為に長い時間準備をしていたようだ。


 何とかしようとフウリルは『風拳』で対処するが、数が多すぎた。

 咄嗟のことで十分に技能を扱えなかったことで、幾つかの『空圧剣』が至近距離で破裂する。

 それに呼応するように『空圧剣』がすべて破裂し、耳をつんざくような乾いた音が響き渡った。

 そのどれもが凄まじい威力であり、何とか翼で衝撃をやわらげたフウリルではあったが体の節々が痛んだ。


 すぐに『再生』を使用し、身体を癒す。

 だがやはりというべきか、すぐに追撃がやってきた。


「『天割』」

「『風剣』」


 両者の技能がぶつかり合い、突風が吹き荒れる。

 その風の中を抗って突っ込んできた気配に気づき、大地を踏んだ。


「『風拳』!」

「『アイスクロー』!」


 リゼが氷の巨大な爪を携えて、突っ込んできた。

 彼女の速度は非常に速く、目では捉えられない。

 ほぼ反射的に動き、見えない壁を作り出してそれを何とか防ぐ。

 あと少し反応が遅れていたら、切り刻まれていた事だろう。


 リゼの『アイスクロー』を止めた『風拳』が凍り付く。

 ほぼ一瞬で凍り付いたそれは脆くなり、二秒程度で破壊されてしまった。

 追撃を狙おうとしたリゼは、また新しい技能を繰り出す。


「『氷塊弾』」

「!」


 宙を撫でると、そこから氷の弾丸が出現する。

 数は六発と少ないが、この技能を使えるということは、もう一つ厄介な技能を使えるはずだ、とフウリルは知っていた。

 翼を広げて一度距離を置き、今から繰り出される技能に対処するため『風剣』を使い、防御に回す。


 その瞬間『氷塊弾』が射出された。

 速度は遅いが、追尾性能があるので撃ち落とさなければならない。

 『風剣』で四つを叩き落したが、リゼが狙いを定めてくっと指を振った瞬間、氷の弾丸が花開き巨大な氷が出現した。


「『氷操作』」


 さすがに追尾性能は失ったが、急激に肥大化する氷は脅威だ。

 接近してきた二つの『氷塊弾』は『氷操作』によって脅威度を増したが、何とかそれをかいくぐる。


 それに続いて、応錬がこちらに接近してきているということが分かった。

 飛ぶ回りながらずいぶん移動したが、そろそろだな、と心の中で呟き、目線を逸らす。


 応錬とリゼ。

 さすが邪神というだけあって、技能も豊富で自分の手には余る。

 だが、こちらに注意を向けさせることは容易だし、これだけ“アマリアズと離れれば”彼だけを奪うことは容易。


「『瞬翼』」


 翼を広げ、一度の羽ばたきで急加速した。

 それはリゼの速度も凌ぐ。

 あっという間に横を通り過ぎ、応錬の反応も若干遅れた。


「あっ! あの野郎!」

「うわっ!?」


 フウリルが瞬きの間にアマリアズに接近する。

 事態を即座に飲み込んだアマリアズは抵抗しようと技能を使うが、どうにも間に合いそうにない。

 フウリルの手が、アマリアズの喉元に触れる。

 そのまま持ち上げ、この場から逃走する手順は既にできていたので、もう一度『瞬翼』を使って離脱すればいい。


 しかし、それはできなかった。


「!?」

「うべっ!」


 翼が動かなくなり、フウリルはそのまま地面に叩きつけられた転がっていった。

 アマリアズの首元を掴んでいたので、彼も巻き添えだ。

 しかし『身代わり』が発動しているので、アマリアズ自身にダメージは無い。


 転がっていく勢いに耐えきれず、手を放してしまい、フウリルだけが痛い思いをする羽目になった。

 何度か地面をバウンドした後ようやく体勢を立て直し始め、着地して地面を滑って停止する。

 自分の翼を見てみれば、根元を少し残して失われていた。

 後ろを見てみれば、鉄製の槍が深々と地面に刺さり、その近くに自分の翼らしきものが落ちている。


「……三人目は、聞いていないんだが」


 見上げてみると、真っ赤に燃え盛る炎の翼を背中に携えた、一人の男がそこにいた。

 赤い槍を持ち、こちらを見下ろしている。


「天使一人に、何を手間取っているんだ」

「おおー! 鳳炎じゃーん!! おーーい!」

「聞こえている! 遊んでないでさっさと始末するのだ!」


 若干ご立腹ではあったが、鳳炎は少し笑っていた。

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