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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第五章 鳳凰・鳳炎、白虎・リゼ
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5.42.是が非でも


 アマリアズが随分前から作って置いておいた『空気圧縮』が天使の目の前で爆発する。

 その衝撃波は僕たちのいる場所にまで及び、張っておいた『空圧結界』が振動した。


「おわわわわっ! 前より強力になってない!?」

「ひぇー! あの子凄いね! 名前なんていうの?」

「リゼさんでしたっけ……。もう少しあの、緊張感を……」

「起きたばかりだから許して欲しいかなー。ていうか君、誰かに似てる気がするんだけど……。カルナさん、誰だかわかる?」

「ええ、それはもちろん」


 カルナはそう言ってにこりと笑っていたが、答えは口にしなかった。

 教えてくれないと分かるや否や、腕を組んでうんうんと悩み始めている。

 昔のことを思い出しているようだが、起きたばかりということもあってなかなか思い出せないようだ。


 あ、そっか。

 この人も僕のお父さんと会ったことがあるから、誰かに似てるって言ったのか。

 僕とお父さん、そんなに似てるのかな?


「ま、リゼさんのことよりも、今はこっちの方が重要です。あの天使、まだ生きてますよ」

「ほんとだ。あの爆発喰らったのに、結構しぶといなぁー。えーっと弱点はどこかな?」


 目を細め、リゼはじーっと天使を観察する。

 土煙の中から出て体勢を立て直しているところを注意深く発見すると、『おっ』と声を漏らした。


「翼が弱点みたいね!」

「翼ですか、なるほど」

「えっ、なんでわかるんですか?」

「ああ、それはね~」


 リゼは笑いながら、自分の目を指さした。


「特殊技能『狩りの本能』ってのを持ってて、敵の弱点を探ることができるの。すごいでしょ」

「ど、どんな相手でも?」

「どんな相手でも」

「すご!!」


 弱点が分かるってすごい強みじゃん!

 あの天使の弱点なんてパッと見だと分からないし、戦いながら使う技能を覚えて対処してを繰り返して追い詰めていくしかない。

 だけどその技能があれば、そんな駆け引き必要ないからね。

 へぇー、それいいなぁ!

 僕にもそういう系の技能が発現しないかな。


 褒められたことで気分を良くしたらしく、リゼは他にも自分の技能のことを教えてくれた。

 雷系の技能が多い事や、回避すると自動的に攻撃をしてくれる便利技能。

 他にも獣状態での攻撃力が上がるものや回復魔法、自動的に機動力を上げてくれる技能なんかも教えてくれた。


「他にも~」

「ちょっと宥漸、リゼさん。雑談は後で」

「あ、うん」

「……宥漸? ……え、宥漸!? 君零漸君の息子さん!? ああ、そうだよねカルナさんいるもんね!!?」


 あ、この人……うるさっ。


 パァアンッ!!

 また乾いた音が響き渡り、大地を抉る。

 二度目の『空気圧縮』が天使に向けられたが、またしても土煙の中から彼は出てきて体勢を立て直していた。


 その間に『水龍』と『炎龍』が出てきて牙を剝きながら襲い掛かる。

 だがそれは見えない何かにぶつかり、互いにぶつかり合って自滅してしまった。

 天使も天使で、何か攻撃を繰り出しているらしい。


「『土地精霊』」

「『空弾』」


 大地が隆起し、天使の背後に壁を作る。

 後退ができなくなり、咄嗟に横に飛ぶと一気に数十、数百の空気の弾丸が襲い掛かってきた。

 巧みに攻撃を回避して事なきを得たが、作られた土の壁は『空弾』によって破壊される。


(何という、破壊力)


 彼が知っている中では、『空弾』は殺傷能力が他の者と比べて極めて低い。

 その代わり連射が利くので注意を逸らしたり、陽動に使われることが多いが、アマリアズの使う『空弾』はすべて殺傷能力が極めて高く、一撃でも貰ってしまえば致命傷になりかねない。

 名前には“弾”とあるが、実際は“玉”が高速で飛んできているのだ。

 拳大のそれが、それなりの勢いで人体に直撃すれば、肉どころか骨にまで“打撃”が加わる。


 天使とて、それは例外ではない。


(生憎私は、防御系技能は、持っていないのだがね)


 『天割』が五回飛んでくる。

 機動力はこちらの方が上なので、それは危なげなく回避することができた。

 しかし羽が何枚か切られてしまう。

 更に追撃してくるかのように『空弾』が襲ってきたが、精度はあまり良くない。

 どうやらまだ、こちらの動きにはついて来れていないようだ。


 アマリアズと、目が合った。

 天使……フウリルは先ほど見た『空気圧縮』の濃度の濃さ、そして白っぽい外見をしていアマリアズに、何処か、懐かしみを覚えていた。

 それが何かは分からない。

 だが、自分たちが探している“何か”に限りなく近いものを持っているようだということは、分かっていた。


 それが何かを、今探る時間は無い。

 一番の脅威である応錬を何とかして、それからアマリアズを回収する算段を頭の中で調える。

 とんでもない敵と戦うことになってしまったな、と思いながらも、うっすらと見えてきた希望に口角を上げた。


「なんとか、なりそうだ。是が非でも、連れて帰るぞ」


 大鎌をくるりと手の中で回し、肩に担いだ。

 柄を両手で握り、今こちらに向かって飛んできている『天割』を真正面から迎え撃つ。


「『風剣』」


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