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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第五章 鳳凰・鳳炎、白虎・リゼ
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5.34.洞窟の奥へ


「おお、やるじゃねぇかアマリアズ」

「まーねー」


 適当にそう流すと、周囲に展開していた『空圧剣』をかき消した。

 爆弾を設置していた人間は天使がやられた姿を見て、騒ぎながら逃げ出していく。

 あれが邪神だ、邪神だ、と喚いているが、襲ってくる様子はないので無視を決め込む。


 最後には誰もいなくなり、ただぽっかりと空いているポトデラダンジョンだけが目の前にあった。

 毒のダンジョンだとは聞いていたが、そこまで禍々しくはない。

 この奥に、リゼという人が封印されている……とのことだが、そこまで危険性は無いように思えた。

 もちろん、見た目だけの話ではあるが。


「えーっと、魔道具、魔道具……」


 イルーザから貰ったマスクを装着する。

 息がしずらくなるということは無く、普通に呼吸ができるので、息切れは心配する必要はないだろう。

 軽く動いてみたが、ずれる様子はない。

 いい具合に顔にフィットしているので、多少動き回っても問題はないと思う。


 これだけで毒を防ぐことができるんだからすごいよね。

 なかなかいい買い物をした気分。

 応錬さんがイルーザさんと知り合いで良かった。


 アマリアズはマスクをすぐに着けて、早く行こう、と手招きをしている。

 他の二人はどうかな、と思って振り返ったが、どちらもマスクは付けていなかった。

 応錬は必要ないかもしれないが、そもそもこちらに来る気配がない。


「って、あれ? 来ないんですか?」

「ああ、すまないがリゼはお前たちに任せる」

「増援が来るかもしれないからね。私と応錬さんはここで防衛にあたるわ」

「あ、なるほど……」


 確かに天使はすべて倒すことができたが、まだ援軍が来る可能性は十分にある。

 毒のダンジョンに人間はそうそう来ないとは思うが、念には念を入れてそちらも警戒してくれているらしい。

 この防衛は非常に重要だ。

 侵入を防いでくれるのであれば、自分たちは心置きなく奥へ進むことができる。


 じゃあ、僕たちは進もう。

 僕じゃないと封印は解けないし、魔力だって持っている。

 今であれば確実にリゼさんの封印を解くとができる筈。


 ポトデラダンジョンの方に向き直って、僕はそちらへと足を運ぶ。

 アマリアズと一緒にその中へ入り、緩やかな坂を下りながらカンテラの光を頼りに足早に洞窟を歩いていった。


 話に聞いていた通り、毒を使う魔物が多い。

 だがそういうのに限って体が小さく、見えにくく擬態している個体も多かった。

 しかし僕たちの索敵は完璧だ。


 アマリアズの『空間把握』がほとんどの魔物を発見し、毒を使われる前に針の様に伸ばした『空圧剣』で制圧し、また歩いていく。

 とはいえ洞窟に生息している魔物は隠れる術に長けていた。

 アマリアズの技能でも発見できなかったものは、僕が指摘してアマリアズに倒させる。


 こんな調子で歩いていると、次第に妙な気配を感じ始めた。

 静電気がパチリと起り、その音に驚く。

 別に何ともないが、暗い空間でそういう音が鳴ると驚くのは必然だった。


「び、びっくり……」

「ただの静電気だよ?」

「いや、なんでこんなところで静電気が起こるのさ」

「……あ、そうか。リゼっていう人がいるんだった」


 しばらく集中して洞窟を歩いていたので、これがアマリアズとの洞窟内での最初の会話になった。

 ふと、アマリアズが立ち止まる。

 眉間にしわを寄せて、今も尚何かを考えている様だ。


「……何か分かったんだよね」

「うん。あの天使は確かに弱かった。それに技能に対する知識もない。私の使う『空圧剣』を天使が知らないはずがない。でも、知らなかった」

「知ってたら対処できただろうしね。それを確かめるために、あの時わざとゆっくり飛ばしたんだよね」

「そう」


 僕の目から見ても、あの『空圧剣』の飛翔速度は遅かった。

 何回もあの技能を見ているから分かるけど、本気で飛ばせば飛翔はもっと速くなる。

 天使が目の前にいるのに本気を出さないってことは、アマリアズが何かを試しているってのはすぐに分かった。

 それが、相手の知識を試すものだとはさすがに分からなかったけど。


「で、分かったことは?」


 僕が指を差すと、アマリアズが『空圧剣』で蟹型の魔物を一突きした。

 きゅう、という声を出しながら沈黙し、こちらに目線を戻す。


「まずアシェラから聞いた話からするに、既に天使は数百人、数千人、もしくはそれ以上の単位で擬似技能を人間に付与する実験を行っている」


 その可能性は、十分にある。

 少なくとも百年前から続けてきた実験であり、それが実っているというのが実情であり、危惧する内容でもあった。

 非常に厄介なことだ。

 普通の人間でも警戒しなければならないので、これからの旅はもっと慎重になる必要がある。


 だがそれ以上に、アマリアズが危惧していたことがあった。

 それは、アシェラに行われていた、薬物投与という実験。


「擬似技能は薬物摂取によって取得可能になっている」


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