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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第1章 痛みを知らない子供
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1.13.強度確認


 ぐーっと伸びをする。

 体をひねって準備運動をしながら、心地よい風と温かい太陽の光を浴びていた。


 ここは前鬼城の一の丸。

 天守閣という大きな建物がある所の広間に僕とウチカゲお爺ちゃんは立っていた。

 十分な広さがあるので、鬼が少し暴れるくらいならどこも破損したりはしないだろう。


 ウチカゲお爺ちゃんが指示してくれた通りに体を動かしているのだが、それをじっと見られている。

 どうやらどこまで体が動くのか見ているようだ。

 体を動かすたびに満足げに頷いた後、一度手を叩いた。


「よし、では一つ確認をさせてもらおう」

「確認?」

「宥漸がどれだけ硬いか、だな」


 そう言ってウチカゲお爺ちゃんは手を差しだしてくる。

 首を傾げながら手を取ると、きゅっと握られた。


「どうだ?」

「? どうって?」

「……では……。これでどうだ?」

「なにが?」


 僕の手はウチカゲお爺ちゃんの大きな手に包まれてしまっているが、その感覚は一切ない。

 手にウチカゲお爺ちゃんの温度が伝わってくるだけだ。

 なにをしているのか、僕はまったく分からなかった。


 次第にウチカゲお爺ちゃんが手に入れる力を増していく。

 力を入れる度に「どうだ?」と確認してくるが、僕はなんともなかった。

 本当に何をしているのか分からない。


「本当に何もないのか?」

「うん」


 その回答に、眉を顰める。

 それと同時に驚きの表情も混じっているようではあったが、すぐに好奇の目へと変わった。

 どれだけ耐えられるか、試したい。


 今度はゆっくり力を入れ続けていく。

 どれだけ力を入れても大丈夫なのか、それを見極める必要があった。

 これが分かれば、また教えられることが増える。


 だがどれだけ力を入れても、宥漸の表情は一切変わらなかった。

 ……ウチカゲは今、全力で宥漸の手を握っていた。

 腕に血管が浮き出しており、若干震えている。


(私の全力に耐えるか……!)


 これには流石に驚いてしまった。

 鬼であり、鬼の本質を知っているウチカゲの力でも、宥漸の硬さに勝てなかったのだ。

 何度も本気で握り直してみるが、宥漸は平気な顔をして首を傾げている。

 とんでもない子だ、とウチカゲは本心から宥漸を褒めた。


 ぱっと手を離す。

 ウチカゲお爺ちゃんは小さく笑って、腕を組んだ。


「本当に何も感じなかったのか?」

「うん。ウチカゲお爺ちゃんの手があったかかっただけ」

「では次だな」


 ぽんっと僕の肩を叩いた。

 すると、足が地面に沈む。


「わっ?」

「大丈夫そうか?」

「うん」


 そう言いながら、地面から足を抜く。

 くっきり足跡が付いてしまったけど、これでいいのだろうか?

 ウチカゲお爺ちゃんは特に気にしていないみたいだけど。


「…………凄まじいな……」

「どういうこと?」

「少し見ていろ」


 そう言って、ウチカゲお爺ちゃんは近くにあった手ごろな石を手に持ち、それを見せてくる。

 そのあとギュッと握り、ゴリュリュッという音を立てて石を握り潰した。

 指の隙間からさらさらと流れていく砂が風に乗って消えていく。


 手を払って砂を完全に払い、ウチカゲお爺ちゃんは手を見せる。


「今のは先ほど宥漸の手を握っていた半分以下の力で握り潰した」

「…………ええ!?」

「宥漸、お前は自分が思っている以上に……防御力が高い。もう既に技能が発現しているかもしれないな」


 思い当たる節はいくつかあるが、四百年前の話だ。

 さすがにウチカゲと言えどそこまで覚えてはいなかった。


 そこで一つ、思いつく。


「ステータスを見れるか?」

「んん?」

「無理か」


 この反応を見れば大体分かる。

 ステータスはすでに消えてしまったものだが、宥漸であれば見ることができるかもしれない、と踏んだのだ。

 が、さすがにそこまで甘くはなかったらしい。

 なにが今発現しているか分かればよかったのだが……ここは地道に探していくしかなさそうだ。


 そろそろ本題に移ることにする。

 今回は宥漸の爆拳を何とか制御できるようにしなければならない。

 初めのステップが制御なので少し難易度は高いが、技能を所持している宥漸であれば問題なくこなすことができるだろう。


「では宥漸。爆拳だが、どうして不意に発生したか分かるか?」

「え? んー」


 当時の状況を思い出す。

 あの時は確か、大量の川の水が押し寄せてきて咄嗟に腕を振るっただけだったはず。

 そこで……。


 あ、そういえばちょっとだけど水飛沫が手に当たったんだった。


「ちょっとだけど、水が手に当たった」

「なるほど。他には何かあるか?」

「んー、特にないかなぁ」

「では、それを思い出せ」


 ウチカゲお爺ちゃんが足を広げ、軽く構えを取る。

 つま先はまっすぐ前を向いており、左拳を腰につけ、右手を広げて肘を軽く曲げて伸ばしていた。


「鬼人舞踊無手の構え。真似して覚えよ」

「こう?」

「そうだ。腰を落とし、左拳を突く。爆拳をイメージしろ」

「せーのっ」


 軽くひょっと拳を振るうと、目の前が真っ白になった。


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