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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第四章 魔族領へ
117/277

4.34.内容


 事も無げにそういった応錬さんは、首を傾げながらウチカゲお爺ちゃんを見る。

 驚いた様子でその羊皮紙を今一度改めるが、やはり読めなかった様で首を横に振った。


「私は、読めませぬ」

「ああ、そりゃそうか。俺たちは特別だしな。んじゃ読むぞー」


 応錬が羊皮紙をまっすぐに広げた。

 ここに書かれていることは技能を掛けて隠すほど重要なものだ。

 それを読むことができるというのは、まだ分かっていないことを理解する手掛かりになる。

 だからこそ、ウチカゲお爺ちゃんはこれを大切に持っていたのだろう。


 だけどどうして読むことができるんだろう?

 技能を解除したとか、そういうわけではなさそうだった。

 現にウチカゲお爺ちゃんは読むことが今もできないみたいだし、多分僕たちが見ても分からない。

 なので首を傾げながら、本人に聞いてみる。


「なんで読めるんですか?」

「ん? ああ、俺たちはこの世界の文字を基本的に読むことができなくてな。その代わり、何故か理解することができる」

「……え? どういうことですか?」

「んー、そうだな」


 すると、応錬が水を使って文字を宙に書き始めた。

 書かれた文字は『応錬』。

 だが僕とアマリアズは、その文字を読むことはできなかった。


「な、なんて書いてあるんですか?」

「これが俺の名前だ。こう書いて“おうれん”と読む。それでだ。俺が言いたいのは、自分が明らかに初めて見る文字だとしても、それをなぜか読むことができるという力を持っている」

「な、なるほど?」


 知らない文字を読むことができる能力。

 便利なことこの上ないが、非常に地味なもののように感じる。

 しかし今はとても頼りになった。

 こんなところで役に立つとは思わなかった、と応錬本人も笑いながら口にしている。


 だが……そこの羊皮紙には未だに技能が掛けられており、文字という文字には見えないはずだ。

 だというのに読めるというのは、なんだか変な話だった。

 僕はすぐにその疑問を口にする。


「でも技能が掛けられて普通は読めないんですよね……? なのになんで?」

「さぁ、なんでだろうな。まぁ“文字を読めなくしている”のであれば、そこにあるのは“文字”だから、どんな姿をしていても俺なら読めるってことじゃないか?」

「分かりません」

「俺も説明はできません……。さぁ読むぞ!」


 気を取り直して、書かれていることをそのまま口に出す。


「えーっとなになに……? 四天(してん)教会?」

「「「四天教会?」」」


 その場にいる全員、その名前に聞き覚えがなかったらしい。

 だがウチカゲお爺ちゃんは、そこで小さく嘆息した。


「教会か……」


 名前に聞き覚えはないが、何かを知っていたらしい。

 それは応錬も同じであり、なるほどな、という表情をしながら読み進める。


「極秘調査依頼。この時代に来ているはずの霊亀の息子……を、捜索……せよ?」

「えっ」


 そこで一気に視線が僕に集まった。

 一番驚いているのは僕なのだが、その前に天使がなぜそのことを知っているのか、という疑問が三人にはあった様だ。


 僕は、応錬さんによって四百年後に飛ばされた。

 それはお母さんの話からしても確実だろう。

 だがこれは公にされている話ではないはずだ。


 応錬は眉を顰め、また唸る。

 ウチカゲお爺ちゃんは腕を組み、何かを思い出すようにして人差し指を額に置いた。


「ウチカゲ、何か心当たりは?」

「ありませぬ。何故天使がそのことを知っているのかも、皆目見当が尽きませぬな……」

「いや、目的は分かるぞ」

「何か書いてあるのですか?」

「ああ。『もしくは技能持ちを回収せよ。それらを擬似技能開発に使用する』って書いてあるわ」

「擬似技能……」


 そこでアマリアズが苦い顔をした。

 技能の神様ということもあって、何か嫌な予感がしているのかもしれない。


 だが、技能持ちを使って擬似技能を開発するというのは、どういうことなのだろうか?

 なにかの研究に使われるということは明白であり、恐らく人体実験のようなことをされるのだろう。

 捕まれば、研究材料にされるということだ。


 碌なことにはならないだろうと予想はしていたが、まさかそんなことのために僕たちが狙われていたのには驚いた。

 だが天使の目的はこれでようやくはっきりした。

 失われた技能を取り戻すために、技能を所持している者を集めている。

 僕たちが狙われていた理由も、これでようやくわかった。

 

「応錬様、続きを」

「ああ。『この文書には技能が掛けられており、他の者には読むことができない。探知技能もかけているので、何かあっても燃やさないように。指定された魔力以外の者がこの文書を解読した時、その者を抹消するため殺戮天使が召喚される』……?」

「「えっ??」」

「……応錬様、今なんと?」

「やべぇやっちまったかもしれねぇ」


 突然、羊皮紙が急に重くなり、応錬の手から滑り落ちた。

 地面にぶつかるとズンッという音を立てて少し沈む。

 それが羊皮紙の今の重量を表しているようだった。


「やっちまったぜ」


 にこりと笑って親指を立てていた応錬の姿は、羊皮紙から放たれる強力な光で見えなくなった。


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― 新着の感想 ―
[一言] てへべろ
[一言] 「何かやっちゃいました?」を本当に(悪い方向で)やらかしたチート系なろう主人公初めて見た気がする(主人公ってか前作主人公だけど)(まぁでもこんな二重トラップ普通は気付かないよね……)
[一言] おうれーん!w にしても「やっちまったぜ」ってww ノリ軽いなwww
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